4月7日 13:45
陽人は全員を伴ってグラウンドへと出た。
「見ての通り、ここには四面のグラウンドがあって、ラグビー部と共有している。せっかく沢山あるのだし二つ使いたいのも山々だけど、当面は一面で済ませるつもりだ」
「今の人数だと紅白戦もできないし、な」
須貝康太が苦笑する。
「その通り。で、即時奪取と言っても正直中々イメージはしづらい。ボールキープとかそういうことを考えると尚更ね。だから、三つの段階を踏まえたいと思う。まずは実際にトップチームがやっていることの確認……ビデオ研究だ。俺の妹が映像研究会の部長でサッカー好きだから、色々まとめてくれるらしい。で、ボール抜きで実際にトップチームがどういう動きをしているか確認もしていく」
「なるほど。細かい戦術用語とか確認するより、実際にトップチームがどういう動きをしているのか真似てしまうわけだな」
「そういうこと。次にボールを回しながらやるとどうしても遅くなるから、ハンドボールのルールで追い込み方、ボール展開を実践してみる。手で投げる方がタイムロスは少ないだろうから、速さへの意識が高くなると思うので」
瑞江達樹がボールを手にとり、バスケットのドリブルを始める。
「速い圧力のイメージをつけてから、最終的にミニゲーム式にやるということね」
「そのつもりだ。ただ、並行してロンドや技術練習を個々ではやっていくけどね。今のところ12人だから6対6になるかな。奇数になったら攻撃側を一人増やすつもりだけど、どうしてだか分かる?」
「ゴールキーパーも攻撃に参加するということか」
「そういうこと」
現代サッカーでは、ゴールキーパーが攻撃の局面に参加することはほぼ当然のようになっている。
ボール保持側のゴールキーパーが参加することができれば、相手の守備網よりも一人多いというメリットを享受することができる。
守備側のゴールキーパーがプレッシングなどに参加することは無理だから、だ。
現在、ゴールキーパーとしては高踏中からの同僚である
正ゴールキーパーが予想される須貝康太は、身長が179センチ。
もちろん平均と比較すれば高い方ではあるが、近年大型化が進むゴールキーパーの中では小柄な部類に入る。しかし、俊敏性が高く、ハイボールに弱いわけでもない。足下のテクニックも標準以上のものがある。
推薦が来るほどの特別なクラスの選手ではないが、そうした特別な選手を除いたら最も優秀なゴールキーパーと言っていいだろう。
「中学時代はそういう意識はなかったけど、高校では康太は高めに上がってもらいたいと思っている」
「りょーかい」
須貝は親指を立てた。
「それじゃ、早速やってみようか……おっと、お客さんだ」
グラウンドから見える道路側のミラーに、山を登ってくる学生の姿が見えた。ラグビー部もあるので、二者択一ではあるが、サッカーボールを持っているのでサッカー部に入るつもりだろう。
「とりあえず練習しておいてくれ」
陽人は、メンバーを残してクラブハウスの方へと戻った。ちょうどそのタイミングで入部希望らしき者がグラウンドを唖然とした様子で眺めている。
「やぁ、入部希望?」
と近づいた陽人は、相手の大きさにびっくりする。
190センチを超えている。195センチ近くありそうだ。
「ここが高踏高校のサッカー部ですよね?」
陽人を上級生と思ったのだろう。敬語で問いかけてきた。
「そうだよ」
「自分、
「ゴールキーパーと、フォワード……?」
陽人は思わず目を丸くした。
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