第86話
アレンとアリアは月明りの中素振りをしていた。
クスは慣れない素振りで疲れたのかすやすやと眠っている。
こうやって何も考えずに2人で素振りをするのも悪くないなと思う。
だが、そんな幸せは長くは続かなかった。
先輩達の溜まり場の方から木刀を持った先輩達がやってくる。
これはただ事ではなさそうだ。
先輩達の目は血走っており冷静ではないようだ。
アレンはアリアを守るように前に出る。
「アレン。お前に用はない。そこをどけ」
「嫌です」
「なら、しょうがねぇな」
そう言って先輩の1人が木刀を振るってくる。
アレンはそれを受け止め防御に徹する。
「邪魔をするならまたボコボコにしてやるよ」
そう言って次々に斬撃を放ってくる。
アレンはそれを冷静に捌き反撃にでた。
実戦経験はまだまだだが真面目に修練してきたのだ。
今度こそ大切な人であるアリアを守りきる。
アレンは隙を見て反撃をする。
先輩はその反撃を受け止めそこねて悶絶する。
「畜生。お前らも見てないでやっちまえ」
1人が相手ならまだしも複数人を相手にするのは厳しいだろう。
だが、援軍は意外なところからやってきた。
先輩達の溜まり場から血相を変えた別の先輩達がやってきたのだ。
「お前ら、何考えてやがる」
そう言って仲間同士で揉めだしたのだ。
襲い掛かってきていた先輩達はあっさりと倒された。
「大丈夫だったか?」
「えぇ。けど仲間だったんじゃないんですか?」
「こんな奴らの為に連座で罰なんて受けたくないからな」
先輩達には先輩達の事情というものがありそうだった。
「とにかくこいつらは責任をもって処理するから穏便に頼むな」
そう言って先輩達は去って行った。
修練をする気分にもなれずアレンとアリアは水を浴びて母屋へと引き上げた。
アレンはまだ何か起きるのではないかと心配で中々寝付けなかった。
いつの間にか寝たのか鳥のさえずりで目が覚める。
正直、寝た気はしないが井戸に向かい顔を洗う。
顔を洗ったことですっきりしたアレンは朝食を準備する為に母屋へと戻った。
調理場ではクスが既に朝食の準備をはじめていた。
「おはよう。クス」
「おはよう。アレン。酷い顔してるわよ?ちゃんと眠れてる」
「昨日ちょっとあってね」
食事の準備をしつつアレンは昨日起きたことをクスに話す。
「なるほどねぇ。後で様子をみてくるわ」
「一緒に行こうか?」
クス、1人を行かせて何かあってはいけないと思い提案する。
「大丈夫。あいつらの扱いなら慣れてるから」
クスはそう言って笑っていた。
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