第85話

今日はユーリが発つとのことで街外れまで見送りに来ていた。

「わざわざすまないね」

「いえ、お世話になりました」

「3人共元気でね」

そう言ってユーリは馬に乗り旅立っていった。




クスは用事があるとかで街で別れ道場まで戻ってきたアリアとアレンは修練を開始した。

黙々と素振りをする2人を避けるように先輩が通り過ぎる。

アリアがされたことを思えば怒りが沸いてくるが表面に出されないように気を付ける。

だが、剣は正直なもので乱れているのがはっきりとわかった。



しばらくしてクスが戻ってきた。

「今日も頑張ってるね。少し休憩しない?」

そう言って手に持ってる袋をアピールしてくる。

中に入っていたのは焼き菓子だった。

「ありがとう」

アリアは嬉しそうにクスの隣に向かう。

アレンもそれに続いた。

「クスは街で何をしてたの?」

「情報収集だよ」

「情報収集?」

「あの馬鹿達がちゃんと仕事してるのかの確認」

「雇ってくれるようなところがあったの?」

「悪評が酷いからね。まともなところでは働かせてもらえないみたいね」

「じゃぁ、どうしてるの?」

「蛇の道は蛇っていうでしょ。まともじゃないところでなら働けてるみたいよ」

先輩達はスラム街の頭目とも繋がっていたようだしそちら関係の仕事をしているのかもしれない。

「それって大丈夫なの?」

「今、問題を起こせば今度こそお終いでしょうね」

先輩達は人生崖っぷちに立っているようだ。

「気を使ってくれてありがとうね」

「私の蒔いた種みたいなものだから気にしないで」




アレンとアリアは十分休憩をした後修練に戻ろうとした時クスがこんなことを言いだした。

「私も剣術を習ってみようかしら」

「どうしてまた剣術を?」

「護身用にね」

確かにクスは先輩達から恨みを買っている。

自衛は出来ているようだが守りを固める必要があるかもしれない。

「アレン。予備の木刀を持ってきて」

アリアはそんなことを言いだす。

「わかったよ」

アレンは木刀を取りに道場の中に入る。

木刀持って戻ればアリアが初歩的な説明をしているところだった。

アリアも自分も他人に教えられるような腕ではまだないがクスは真剣な表情で聞いている。

「クス。これ」

「アレン。ありがとう」

クスが木刀を構える。

「結構重いのね」

アリアが手本を示すように木刀を振りクスが真似して木刀を振るう。

アレンはその様子を見守っていた。

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