第84話

何事もなく数日が経ち、アリアとユーリもアレンの横で体を確かめるように素振りしている。

ユーリが時折、アリアにアドバイスしているのが印象的だ。

先輩達が何かしてくるかもと思ったがクスの脅迫が効いているのか恐ろしいぐらいに静かだ。

アレンは自分の修練に集中する為に深呼吸する。

今、集中的に取り組んでいるのは道主が教えてくれた歩法の牛雷だ。

ゆったりした動きから一気に加速する。

やはり、足への負担は相当なものだ。

だが、剣舞のおかげか以前より違和感なく静から動への動きが出来るようになった気がする。




太陽が真上に来た頃、クスが様子を見にやってきた。

「お疲れ様」

クスはそう言ってお茶を配ってくれる。

「これって・・・」

以前、先輩が疲れが取れるお茶だと言って振舞ってくれたものだった。

「アレンは飲んだことあったんだ」

「以前、先輩がくれて」

「このお茶を作ってるの私だからね」

「変わった味だね」

「何が入ってるのかしら?」

「それは企業秘密よ」

何が入ってるのかは教えてくれるつもりはないようだった。

「このお茶、凄いわね。疲れが吹き飛んだわ」

「気に入ったのなら少し分けてあげる」

「ありがとう。助かるわ」




クスは簡単にアリアとユーリの体を調べた後、戻っていった。

「さて、時間もあまりないしアレン君。相手をしてあげるよ」

今の自分がどれぐらい戦えるのか知りたかったところだ。

この申し出は凄く嬉しい。

「よろしくお願いします」

木刀を構えユーリと対面する。

アレンとユーリは激しく木刀をぶつけ合う。

隙を見てアレンは攻め込むが全て防がれている。

いつの間にか攻守が逆転して防御にまわることが多くなり胴に一撃を貰ってしまった。

「はぁはぁ。ありがとうございました」

「いい攻めだったけど、やはり実戦経験が足りていないね」

「どうすればいいんでしょうか?」

「多くの人と戦って経験を積むしかないよ」

「2人だけずるい。私もアレンと戦ってみたいわ」

「やばそうなら止めるから戦ってみるといい」

ユーリはそう言ってアリアと入れ替わる。




アリアとの模擬戦は一方的な展開となった。

アリアは同性代の子と比べて弱いわけではない。

だが、アレンには手も足もでなかった。

「はぁ・・・。こんなに差ができてたなんて」

「あの状況じゃ仕方ないわよ」

ユーリはアリアにそう言って慰める。

「絶対、いつか追い抜いてやるんだから」

アリアはそう宣言してやる気を出していた。

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