第66話

「アリア。虫刺され・・・?」

「えっ・・・?やだ、本当だ」

「痒くない?」

「痒くはないけど・・・。あっ。そういうことか・・・」

アリアには何か心当たりがあるようだ。

「薬塗っとく?」

ほっといて痕になっては大変だと思いそう提案する。

「数日もすれば収まると思うから大丈夫」

「そうならいいんだけど・・・」

「アレン。私、先に戻るね」

「うん・・・」

アリアは何か焦ったように母屋に戻ってしまった。




2人で朝食を食べ道場の前に向かう。

先輩達とユーリはまだ来ていないようだ。

準備運動をしていると先輩達がやってくる。

「おはようさん」

「おはようございます。ユーリさんは・・・?」

「疲れてるみたいでまだ寝てたぜ」

昨日、相手をしてもらったからだろうか。

「そうですか・・・」

「そんなことより自分のことを優先しろよ」

「そうそう。アレンはまだまだ弱いからな」

先輩達は次々にそんなことを言ってくる。

確かに自分はまだまだだ。

言い返すこともできない。

「私、ユーリさんの様子見てくるね」

そう言ってアリアは先輩達の溜まり場に向かっていった。




しばらくしてユーリとアリアが戻ってきた。

アリアは先輩達のところに行くと何か言っている。

表情を見るに怒っているようだ。

だが、先輩達は笑っている。

アリアがさらに何か言おうとしたところでユーリが止めに入っていた。

アリアは納得はしていないようだが先輩達から距離をとり素振りをはじめた。

アリアが怒るなんて理由が気になったがアレンも自分の修練に集中する。

1時間のジャンプを終えたアレンは続いて剣舞に移る。

目標とするユーリの動きを頭に思い浮かべながら剣を振るう。

昨日のユーリとの打ち合いが効果を発揮しているのかスムーズに舞うことが出来た。



アレンが剣舞の最後に残身をしているとユーリが話しかけてくる。

「真面目に修練しているだけあって中々様になってきたわね」

「ご指導のおかげです」

そこに先輩の1人がやってきて文句を言う。

「俺らには厳しい癖にアレンには随分甘いじゃねぇか」

「あたりまえでしょう。褒めてほしいならもっと頑張ってほしいわね」

「っち。後で覚えてろよ」

先輩はそんな捨てセリフを吐きながら修練に戻っていった。

「よかったんですか?」

「気にしなくていいわよ。どうせ大したことはできないんだから」

そう言いながらユーリも離れていった。

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