第57話
夕食も食べ終わりアリアが修練に行く時間になっていた。
アリアを見送りアレンも自分の修練に取り掛かる。
アリアからは今日は休んだ方がいいと言われたが恋人が頑張っているのに寝ている場合ではない。
木刀を構え集中して無の境地に入る。
少しずつではあるが無の境地でいられる時間が増えている実感を得た。
だが、それは突然やってきた。
自然と呼吸が荒くなる。
体に力が入らない。
全身には嫌な汗がどぱどぱと出ている。
どうにかしなければと思うのにどうすることもできない。
体が自分を守る為なのか意識を手放そうとしてくる。
だが、アレンには何となくわかっていた。
ここで意識を失えば二度と目覚められないということを・・・。
どれぐらいの時間が経ったのかわからなくなった頃、アリアの声がした。
「アレン。アレン・・・」
必死に呼びかけるその声で意識を繋ぐ。
「アリア・・・」
体を優しく抱きしめられる。
その感覚で今まで感じていた苦痛が和らぐのを感じた。
アレンはその感覚に安心して意識を手放した。
アレンは全身に気怠さを感じつつも目を覚ます。
心配そうな顔をしているアリアが目に飛び込んでくる。
「アレン・・・。辛いところはない?」
「全身が怠いけど大丈夫だよ」
「よかった。目を覚まして」
周囲を見れば先輩達もいる。
「ヒヤヒヤさせやがって」
「天才って奴はどいつも無茶ばかりしやがる」
先輩達が言うにはユーリさんも同じことをしでかしたことがあるそうだ。
その時は道主が付きっきりで面倒をみてたそうだ。
「とにかく今は休め」
先輩達にそう言われ軽く食事をしてから眠りについた。
アレンは夜に目を覚ました。
アリアはいなかった。
きっと今頃は先輩達と修練をしているのだろう。
喉が渇いていてのろのろとした動きで母屋を出て井戸に向かう。
水を何とか汲み上げ喉を潤す。
喉が潤い全身が汗でべたべたしていることに気が付いた。
服を脱いで水を浴びる。
足音がしてそちらを向けば先輩の1人が歩いてい来るところだった。
「気分はどうだ?」
「だいぶましになりました」
「余りものだけど飯持ってきたぞ」
そう言って先輩は袋を見せてくる。
アレンは物凄くお腹が空いていることに気が付いた。
「わざわざすみません」
「気にすんな」
アレンは服を着て先輩から袋を受け取る。
「アリアは頑張っていますか?」
「嬢ちゃんなら頑張ってるぜ」
先輩はそれだけ言って戻ってしまった。
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