第58話
先輩が持ってきた袋の中には麦粥が入っていた。
どうやらドライフルーツも入っているようで食べていてとても美味しかった。
麦粥を食べ終わると眠気が襲ってくる。
布団に戻りそのまま意識を手放した。
朝日で目が覚める。
隣を見ればアリアがすやすやと寝ている。
起こさないように布団を抜け出し井戸へと向かう。
顔を洗い母屋へと戻るとアリアはまだ眠っていた。
アリアの寝ている姿をじっと眺める。
しばらく眺めているとアリアが「んっ~」と言って目覚めた。
「アリア。おはよう」
「おはよう。体調は大丈夫?」
「うん。心配かけてごめんね」
アリアが顔を洗いに行っている間に食事の準備をする。
2人で朝食を食べるのもずいぶん久しぶりな気がする。
アリアは何か嬉しいことがあったのかずっと笑顔だ。
「何かいいことでもあった?」
「一緒に食事が出来て幸せだなって」
何気ない一瞬一瞬が大切なのだと実感させてくれる言葉だった。
「僕も幸せだよ」
食事も終え、2人で先輩達の溜まり場を訪れる。
今日からアレンも修練を再開させる予定だ。
アレンは先輩達に謝罪する。
「ご迷惑をおかけしました」
先輩達は懐が大きいのか笑って許してくれる。
「あんま根をつめるなよ」
アレンは先輩達の溜まり場に入っていくアリアと別れて道場の前に向かった。
準備運動をして体の調子を確かめる。
数日寝込んでいたこともあり本調子ではなかった。
準備運動も終わり素振りを開始する。
修練を1日サボれば元に戻すには数日かかる。
それを実感していた。
アレンは夕暮れまで素振りをしてアリアを迎えに先輩達の溜まり場に向かう。
先輩達の溜まり場について扉をノックする。
先輩の1人がすぐに出てきた。
「何の用だ?」
「アリアを迎えに来たんですけど」
先輩は1度中を見て告げてくる。
「嬢ちゃんならもう少しかかるから先に戻ってろよ」
「わかりました」
アレンは1人むなしく母屋へと戻った。
1時間ほどしてアリアが戻ってくる。
「アレン。迎えにきてくれたのにごめんね」
「ううん。僕こそ修練の邪魔しちゃってごめん」
「邪魔だなんて・・・」
アリアはアレンが倒れたことで修練が中断されていたはずだ。
迷惑ばかりかけて申し訳なさしかない。
「すぐにご飯の準備するね」
「私も手伝うね」
2人で仲良く食事の準備をする。
アレンが寝ている間に買い物に行ってくれたのだろう。
品数が増えていた。
それを2人で仲良く食べるのだった。
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