第56話
カンと木刀の音が響く。
アレンは防いだがあまりの威力に体が流れるのを感じていた。
今日、相手をしてくれている先輩はとにかく剣に重さがあった。
一撃一撃が重く、何度も吹き飛ばされる。
アレンは諦めずに先輩と対峙する。
先輩は遊んでいるのかずっとにやにや笑っている。
こちらは真剣だというのにその余裕を崩すことができない。
「お前に1つ言っといてやるよ。弱さは罪だ。それが嫌なら強くなれ」
そう言って構えなおしたところに次の一撃が飛んでくる。
アレンは大きく吹き飛ばされ植えてある木にぶつかる。
アレンは衝撃で「カハッ」と息を吐きだした。
アレンは悔しくて涙が出る。
どうして自分はここまで弱いのか。
「なんだ?もう終わりか?」
アレンは震える体で立ち上がる。
「まだまだ・・・」
アレンは木刀を構えて継戦の意思を示した。
「はぁ・・・。あの時も思ったけどお前しつこいな」
「それしか出来ないですから」
今のアレンでは何度立ち向かっても一撃入れるのは難しいだろう。
だが、諦めてしまったらそこで終了だ。
アレンは必死に先輩に立ち向かう。
先輩は心底めんどくさそうな顔をしているがアレンには関係がない。
少しでも強くならなければ。
アレンは自然と無の境地に入っていた。
先輩の動きが遅くなる。
重い一撃ではあるが速さはそこまででもない気がする。
アレンはギリギリを見極めて避けていく。
先輩が大振りをしたことで出来た隙を見逃さず一撃を放つ。
そこでアレンの集中力が切れた。
先輩はいつ木刀を戻したのかアレンの一撃を防いでいた。
アレンの意識はそこで途切れた。
アレンが目を覚ますと時刻は夕方になっていた。
頭には柔らかい感触が広がっている。
目を開ければアリアの顔がすぐ近くにあった。
「アレン・・・。よかった。起きたのね」
「僕は・・・?」
「修練中に倒れたって。心配したんだからね」
「ごめん・・・」
記憶を探れば先輩との打ち込み稽古で無の境地に入ったところまでを思い出した。
先輩の1人が声をかけてくる。
「お前、無の境地を使いすぎるなよ」
「えっ?」
「道主が言うには無の境地を使いすぎて戻ってこれなかった奴もいるって話だ」
「戻ってこれなく?」
「ずっと眠ったままになるってことだよ。嬢ちゃんの泣く姿は見たくねぇからな」
先輩はそれだけ言うと溜まり場の中に戻っていった。
「アレン。動ける?」
「うん・・・」
アリアと2人で母屋への道を歩いて行った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます