11. 寺本の顔面が正直すぎて、かえって風馬は話しやすかった
高校から近くてコスパ最強のファミレスには4組男子の一団がいるかもしれないし、暑いし、風馬の好物なので、東西線早稲田駅の側にあるアイスクリームチェーン店に入ってみた。
時々美愛と入るそこは二階にイートインスペースがあり、運がよければ空席がある。
三人座れるベンチソファが、ちょうど入れ違いで空いた。
強運の人がいるようだ。自分ではないと風馬は思う。
そんなこんなで着席後。
「―――だから、寺本さんはいやだろうけど、たまにでいいから触らせてもらえたらおれはありがたくて、それで」
残り少ないワッフルコーンを齧り取りながら、狭い店内にできるだけ広がらないボリュームで風馬は話し終えた。
思ったよりずいぶん早く終わった。
早く終えたくて極力省略したからだが、寺本が怪人に遭遇した表情をするばかりで質問を挟まなかった効果もあるだろう。
彼の顔面が正直すぎて、かえって風馬は話しやすかった。
「ふーん。何個か聞いていいすか?」
そしてコーンも食べきった寺本が、開いた口から声を出した。
ゆっくりとスプーンを動かす美愛のカップには溶けかけのアイスクリームが残っている。
風馬はまた静かに疼きだす心臓を押し込めて返事をした。
「うん」
「別に許可とらなくても勝手に触れると思うんだけど、あえて引かれる話してきたのなんで?」
「…だって、勝手に触られたらいやだろうし、どう触ってもキモいのは一緒だし」
「は?俺キモいの?いや知ってるけど草」
「え?」
「寺本キモいから自分もキモい話してイーブンにしよう的なバランス感覚なの?」
「ぇえ?違うよそんなわけなくて、寺本さんじゃなくておれだけがキモい人」
「へーマジすか。きみキモいんだ」
ヘッと笑う寺本の表情は一周回って風馬には意味不明だった。
「あくまでも引かれたいスタンスは伝わったけど交渉する気ある?ここはシンプルに俺がキモいことにして上から頼んだ方が押し切れたと思うよ?」
何のつもりなのか、いきなり交渉術にダメ出しする寺本を風馬は見つめるしかない。
「一回この流れで押し切れるか試してみる?」
「……どうすればいいの?」
「きみまだはっきり頼んでねぇじゃん。触らせてって」
「………触らせて?」
「やだ」
デャハハ!と寺本は両膝を跳ね上げて笑い、風馬はじわぁとイラついた。
だいたいこんな感じの人物だと遠目に観察しながら把握したつもりだったのに、まさかこんなにウザいなんて。
「いーよ触りなよ俺ら異能種同士じゃん、てか俺の“
おれの16年分の怨念を込めてこいつを殴ろうと思い始めた2秒後、風馬は耳を疑った。
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