第22話 ミラの素顔
その後、ミラとユーマは半日、時間をかけて150階から200階辺りまで探索を進めた。ここまで来る途中に「オーロラサーモン」や「ゴールド舞茸」、「レインボーとうもろこし」など多数の食材を手に入れていた。また、ポーションを168本、ハイポーションを73本、万能薬を21本、エリクサーを2本見つけていた。そのほかにも、豪華な装飾が施された武器や防具なども多数入手していた。
今二人は、モンスターが生息しない階層である201階にあるオアシスにテントやテーブルや椅子を設置して一休みしていた。
自分の目の前に設置してある焚き火台の中で、パチパチという心地いい音を響かせながら燃えている焚き火を見ながらユーマは考え事をしていた。
オーロラサーモンが数十匹、ゴールド舞茸が50キロ、レインボーとうもろこしが200本、白銀ディアの肉が800キロか。500人分くらいにはなりそうだ。とりあえず今回は食料はこれくらいで良いか。問題は万能薬だよな。21本じゃ全然足りない。今すぐにでも直してあげないと危険な人が80人はいるからな。仕方ない。もう少し下まで潜るか。
ユーマはこの後の行動予定を頭の中で立てた後、ふと焚き火の向こうに座っているミラを見た。さすがに動きっぱなしだったこともありいつもより疲れた顔をしている。
なんか暗い闇の中で焚き火の明かりに照らされてるとより美しく見えるな。全国民から羨望の的にされているミラとこうしているのなんか不思議な気分だな。
そんなことを考えてるとミラが話しかけてきた。
「ユーマ。この後はどうするんだ。もうそろそろ10時になるが。」
ミラは左腕に着けている茶色の時計を確認するとそう口にした。
「ミラを地上に送り届けたら俺はもう少し先へ行こうと思う。万能薬がまだ足りないんだ」
「そうか。それなら私も行くよ」
「いや。もう十分助かったよ。疲れたと思うし今日は帰りなよ」
「良いんだ。お前が頑張るなら私も付き合う。言っただろお前が背負ってるものは一緒に背負うって」
「良いのか?」
「ああ。こう見えて体は強いんだ。まだまだ元気さ。それに私がいた方が食材を見つけたときに便利だろう」
「ありがとな。ほんと……。ミラがいてくれて良かったよ。そしたらもう少しだけ頼めるか?」
「ああ任せておけ」
二人は拠点の撤去を素早く済ますとさらに深層へ進んでいった。
ユーマたちはその後、3時間かけてさらなる物資を手に入れた。二人は地下251階層まで進んでいた。
この場所は水辺のオアシスで二人がいる場所のそばには巨大な湖があった。
万能薬は追加で見つかった分も合わせて46本になった。まだまだ足りなかったが今日のところはここまでにすることにした。
「ミラ、ありがとう。ここまで付き合ってくれて。送っていくよ。」
「ユーマはどうするんだ?」
「俺はここに一晩寝て、また明日朝から頑張るよ」
「ユーマも帰ればいいじゃないか。家の方がよく寝れるだろう」
「今から帰るとシリカを起こしちゃうからさ。ここで寝てくよ」
「そうか。なら私もここで寝ていく」
「えっ?」
「ユーマが帰らないなら私も残るよ」
「いや、ミラ。テントは狭くて寝にくいぞ? 布団だって一つしかないんだし隣で寝ることになるぞ?」
「別に私は構わない」
「いや、だめじゃないけど」
「私はもう少しお前といたいんだ……」
「えっ?」
「いや、へ、変な意味じゃないぞ。もう少しお前といて、一緒に活動して、それでだな。みんなのために貢献したいっていう意味だ」
何かミラにしてはすごい焦っている。顔が赤いな。
そんなにまで国民のことを思っているのか。やっぱりミラは良い奴だな。いや、それとも、ダンジョン探索が結構楽しかったのかな。昔狩りをしていたっていっていたし……。まあでもなんにせよ良かったな。
女性の気持ちが一切つかめていないユーマであった。
「わかった、ミラが良いならここで泊まっていきな。」
じゃあ、即席のシャワーがあるからそれを使ってくれ。
「わかった」
ユーマは収縮袋から簡易シャワーを取り出した。
四角い箱のような形をしている。箱の上部に水が入っており、その中に焚き火で燃えた石を入れて、お湯を作って使用するものであった。
ユーマが先に使ってシャワーを浴びると、次にミラが入った。入る前に大きめのタオルを手渡してあげた。
やがて、「ジャー」という音がするとユーマは一言聞いてみた。
「湯加減は大丈夫か?」
「ああ。ちょうどいい。最高だ」
「そうか」
良かった。良かった。ダンジョン内で浴びるシャワーってなんか気持ち良いんだよな。というかそうか今この中ではミラがシャワーを浴びてるんだよな。裸で……。いや、なにを考えているんだ。最低だぞ。切り替えよう。
シャワーを浴びているミラの姿を少し想像してしまい良からぬことを考えそうになったユーマであったが何とか頭を切り替え、明日の探索の準備をし始めた。しかし、しばらくしてミラから「ちょっと来てくれ」と声がかかった。
どうしたんだろう。と思いながら即席シャワーの方へ向かっていくと中からタオルだけを体に巻いただけの恰好でミラが出てきた。
「えっ?ミラどうしたんだその恰好」
ユーマは慌てて眼をそらした。ちらっと見えただけだがすらっとした体型に見えて胸やももはしっかり膨らんでいてとても魅力的に見えた。
「ユーマ。済まない。着替えがないのを忘れていた。どうしよう」
ものすごく恥ずかしそうにしながらもミラはそう言った。
ああ、多分、今着てた服を着るのは生理的に無理なんだろうなということはユーマにはすぐわかった。なにせミラはアルドナでも有数の貴族の娘だ。でもユーマも自分の服を思い浮かべてみたがミラが着れそうな服は思い当たらなかった。
「ユーマ、その……。申し訳ないんだが、私の家まで一回帰っても良いか」
「えっ、それって瞬間移動で帰るってこと」
「ああ」
「別にそれは大丈夫だけど。俺の瞬間移動は一度見た場所にしか飛べないんだ。ミラの屋敷は知っているけど。まずは中庭にしか飛べないぞ?」
「中庭で大丈夫だ。今は誰にも見られる心配もないし。中庭からは私の部屋が見えるからそこから……」
「そこから飛べばいいんだな。わかったじゃあ。ほら。」
ユーマはさっそくミラに手を差し出した。
「ユーマ。さすがにこの格好のままでは恥ずかしすぎる」
「ごめん! そうだよな」
ユーマは慌ててこの前変装するときに使った布を渡した。この布を使えば全身を覆うことができる。
「済まない」
「良いよ」
ユーマが伸ばした手を今度こそミラはつかみ。二人は姿を消した。
次の瞬間、巨大な庭園を思わせる生け垣と花壇が庭には広がっていた。生け垣の隙間から顔を出すと、そこには中世の城を思わせるほど立派な城が佇んでいた。
すごいな。今まで見たどこの屋敷よりも立派じゃないか。こんな家で暮らしてきたのか……
あまりの光景に唖然としていると、ミラが後ろから小声でささやいた。
「ユーマ。あまり長くいると見つかってしまう」
「ああ。済まない。あまりに城が立派で驚いていた」
「4階の一番右端の部屋だわかるか」
「えっと、ピンクのカーテンが付いているところ?」
「ああそこに飛んでくれ」
「わかった」
ユーマはミラの手を握った。
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