第3話:アヴェルアンジェ。

僕と安羅あらの横に止まったRV車はキューピットの車だった。


あと数台の車が一緒にやってきて、それぞれ武器らしきものを持った武装した

男たちが車からゾロゾロ降りてきた。


そして僕と安羅のすぐ横に止まったRV車から、ひとりの男が降りてきて

その男が僕を見て言った。


「君は?」


「あ、僕・・・式神しきがみさんと、ど、同級生の・・・」


「そうか・・・まあいい」


そう言うとその人は部下らしきに人たちに指示した。


「安羅を回収する」

「同級生・・・君の名前は?」


神童 輝しんどう あきらです」


「では神童くん、君も一緒に来てもらおう」


ってことで否応なしに僕はキューピットに連れて行かれた。


「キューピットはデカい施設で、僕は施設の建物はてっきり地上に

あるもんだと思っていた。

でも、全施設地下あるんだ。


一度施設に入ったら、どこにどの研究室とか部署がるなのかまったく

分からなかった。

まるで迷路みたいだ。


僕は椅子が一つだけ置かれた何もない無機質な部屋に連れて行かれた。

安羅の秘密を知っちゃったから監禁されるのかな?

僕はどうなっちゃうんだろ?


それはそうと安羅は大丈夫なのかな?


そんなことを考えてると、部屋のドアが開いて武装した男がひとり入ってきて


「これから施設長のところに連れて行く」

「ついてきたまえ」


言われるままに僕は男についていった。

なにもない長い廊下を右左に折れてエレベーターに乗せられた。


「あの、僕はどうなっちゃうんでしょうか?」


「施設長に会えば分かる・・・黙ってろ」


で、エレベーターを降りた僕たちは、そこから角を左に曲がって

正面に見える立派なドアのところまで来た。


男はどこを向いてしゃべてるのか


「青年をお連れしました」


「ご苦労・・・彼を部屋に入れてくれたまえ」


と同時に自動ドアが開くと、僕は男に部屋の中に入るよう指示された。


「失礼します」


そう言って男は僕を部屋にひとり残してさっさとどこかへ去っていった。


「部屋に入って、そこに掛けたまえ、神童くん・・・」


「あ、はい・・・失礼します」


僕はめっちゃ高級そうなソファに座った。


「私はこの施設全般を統括している「式神 伊玖磨しきがみ いくまだ」


(しきがみ?、式神って?・・・安羅と同じ名前・・・)


「式神さんは安羅の身内の人ですか?」


「安羅は私の娘だ・・・厳密に言えば娘の一部だがな・・・」


「それってどういうことですか?」


「それはいい・・・」

「それよりも君は・・・なぜあそこに、安羅がいた場所にいた?」


「あ〜それは、つまりベリアルが現れた時、危険だからって

クラス全員、教室から避難したんですけど、僕と式神さんだけが教室にまだ

残ってて、で、危険だから逃げようって彼女に言ったです」

「でも式神さんは教室の窓から見える、ベリアルを見て興奮してて・・・」


「トランス状態の安羅を見たのか?」


「そうです」


「そこで君はメタモルフォーゼをする安羅を見た?」


「メタモル?フォーゼって?」


「安羅がアヴェルアンジェに変身する姿だ・・・」


「アヴェル?アンジェ?」


「それが安羅の変身後のネーミングだ・・・いずれにしても、名前はいる。

名無しの権兵衛では困るからな・・・いちいちアレとかソレではいかんだろう?」


「それで窓から飛び出して行った式神さんを追いかけたんです」


「まあベリアルとの戦いはニュース映像でも見れるが・・・」

「そうか・・・それであの場所で安羅を介抱していてくれたと・・・

そう言うわけか?」


「介抱ってそんな大げさなことじゃなくて・・・僕はただ安羅のことが

心配だっただけです」


「そうか・・・」


そう言うと式神さんは誰かを呼んだ。


しばらくすると、超美人な女性が部屋に入ってきた。

「白衣なんか来て、お医者さんみたい・・・大人の女性って感じ・・・」


「御用でしょうか?」


「神童くん、紹介しておこう・・・

うちの生物学研究室室長の「櫻井 恵さくらい めぐみさんだ」」


「よろしくね神童くん」


「あ、はい・・・よろしくお願いします」

(え?なんで僕の名前知ってるの?)


「ここからは櫻井くんが、案内してくれる」

「櫻井くん、神童くんを安羅のいるICUに連れてやってくれないか?」


「分かりました・・・行きましょ、神童くん」


そう言われて僕は櫻井さんに安羅がいるだろうICUに連れて行かれた。

そこに治療器具に繋がれた安羅が行半な機械的な椅子に座っていた。


安羅はすぐに僕たちに気づいた。


「安羅・・・よかった、生きてたんだ・・・」

(全身串刺しになったのに・・・)


「なんで?なんで神童くんがいるの?」


安羅がしゃべってる・・・ちゃんとしゃべれるんだ・・・。


「神童くんは安羅を助けてくれたんだよ」


「あ〜いえ、助けただなんて、櫻井さん話がさらに大袈裟になってますけど」


「神童くんが私を助けてくれたの?」

「ありがとう」


そう言って安羅は笑った。


あ、ありがとう?・・・そんな言葉安羅から聞けるとは思わんかった。

しかも・・・笑ったし・・・無愛想な安羅が、笑ったよ。


それにしても安羅は何者なんだ?

アヴェルエンジェってなに?

やっぱり安羅は人間じゃないよな・・・だったら?なに?


「神童くん、安羅に対して疑問だらけなんでしょ?」


「はい、あんな光景見せられたら・・・安羅って、あ、式神さんって

なんなんですか?」


「安羅のことは政府とこの施設だけの極秘になっているの」

「だからいち高校生の君には関係ないこと・・・って言っちゃったら身も

蓋もないわよね・・・」

「安羅・・・アヴェルアンジェに関わっちゃった君には安羅のことを

知る権利があるわね・・・」

「君のなぜ?の疑問に答えてあげるわ・・・」


「安羅はそのまま治療を続けて・・・完全完治しておかないとね」


「神童くんは、私の部屋へ・・・」


「櫻井さん、安羅は大丈夫なんですよね」


「あの子の治癒能力を過小評価しちゃいけないわよ、神童くん」

「これから君は、あの子にもっと驚かされることになるはずだからね・・・」


つづく。

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