第28話 闘技場でサンフラ宰相と出会う
闘技場受付所。
街の中心部から離れたこの場所は常に人が多い。にもかかわらずマルク達の周りは一定以上道が空いていた。
背が高く髭がはえ、真っ赤な口紅をつけた大男がワンピースを着ているのだ、道も空くだろう。
その横にいる小柄な少年の事などかすんで見える。
「これはあれですね、マルコ姉さんのおかげです。近づくなという雰囲気が出てますね」
「そうではないだろう……所でラーオ」
「はいなんでしょう」
ラーオと呼ばれた男装をしているラーミが元気にマルクに返事をする。
マルコ闘技場で優勝しちゃうもんね作戦は結局ラーミが男装して出場する事となった。
一番は優勝しやすい事。これはS級ゆえの自他ともに認める自信でもあるし、別に優勝しなく好成績ならそれでいい。
C級のマルクや同じくC級のトーマ達では中々に難しい事だ。
次にマルクが女装しながら戦わないといけない事に物凄い抵抗感があった事。途中で男とばれて……既にバレているが昨夜決めた事である。
「俺は心配だ、今からでも俺が」
「マルコ姉さんは心配しすぎです。それにその姿で戦って力が出ないでしょうし、女装がばれてマルクさん飛ばれる可能性もありますね。詰め所でみたのですけど、私とマルクさんの人相書きまで出回ってましたよ。その点私でしたら問題ないす、その辺の雑魚には負けるつもりありませんし、まぁ万が一バレたとしても逃げ切れます」
そこまで言われると納得させるしかない、マルクとラーミは闘技場の受付へと向かった。
ラーミは偽名でラーオと言う名前で登録し後は帰るだけだけだ。
闘技場からでると周りがざわめいた、人がこみはじめマルクは近くの男に肩を叩く。
「何があったのか?」
「珍しく貴族様が着てるらし……うわ化物!」
マルクが訪ねた男はマルクを見ると逃げていく。貴族が使う豪華な馬車が止まると、中から顔に傷がある男性が降りてきた。
だれかか『サンフラ宰相だ』と言う言葉が聞こえる。
「ラーミ」
「あの今はラーオです、それよりも解っています。あれが……」
サンフラ・マリュ・クロ。
全身を黒づくめで杖をついていて闘技場に向かっていく。護衛すらつけないでだ。
年齢はマルクより上にみえ顔の頬に大きな傷があるのが特徴的だった。その堂々な歩き方に道が分かれていく、そのサンフラがマルクのほうを見て一瞬であるが眼があった。
汚い物を見るような目つきでマルクを見ると闘技場の中に入って背中を見送る。マルクが息を吐くと横にいたはずのラーミの姿がみえない。
「っ!?」
マルクがサンフラの背中へと視線を移すとラーミは既にその背中目掛けジャンプしていた。
手には鉄根がありその狙いは頭である。
「とったどおおーーー!」
ラーミが宣言すると、サンフラは背後も視ずに頭の上に手を上げた。
「ふぁっ!?」
ラーミの持っていた鉄棒を掴むと、そのまま振り回し壁へと激突した。ラーミが背中から壁にめり込むと、サンフラは何事もなかったかのように奥へと進んでいく。
「ラー! オ……大丈夫か」
辛うじてラーミというのを我慢したマルクが壁にめり込んだラーミへとかけよる。
その壁からラーミが出てくると頭を振っては大丈夫です、とマルクへ手を差し出した。
周りから流石鉄壁のサンフラだ。と声が聞こえてくる。
「鉄壁?」
「うわ、さっきの女装化け物……いやすまん。サンフラは鉄壁と別名があるらしくな、強さを求めた結果護衛すら要らない程に強くなったのよ、その鉄壁を見せつけるようにああして街を歩いてはお前達みたいな名声を求めた奴を返り討ちするのさ」
「えらく迷惑な話ですね」
ラーミが立ち上がると二人の前に壁が出来る、さきほど出場登録をした時の女性が腰に腕をさせて怒っている。
「はい、周りの野次馬は散って頂戴。迷惑なのはこっちです。壁の修理代として金貨30枚もしくは50日の住み込みの仕事。どちらを払いますか! それとも周りのお仲間さんが払うのかしら」
先ほどまでいた野次馬は俺は関係ない。とばかりに消えていく。
マルクは素直に腰から金貨30枚を支払う。
「これで足りるだろうか」
「え、本当!? ちょっとふっかけ――いえなんでもないわ。え、本当に払うの? 返さないわよ」
「ああ、迷惑をかけたのはこちらだ金額に不満はない」
「見かけの寄りに男らしいのね」
意外にも支払うと受付の女性はご機嫌になった。
闘技場にくるような人間は金払いが悪いのでマルクのように金払いがいいと機嫌が良くなるのは仕方がない。
「そのサンフラ様はなぜ闘技場に?」
マルクは相手が貴族なので様をつけるが、引き飛ばされたラーミは、あんな奴に様をつける必要は無いと思います! とののしっている。
「期間限定ですけど、優勝者には挑戦権がえれるんですよ。って知りませんでした? 最近はあの人に挑戦する人も減ってますからね」
「となれば優勝したらあのサンフラと戦えるわけですね!」
「ラー……オ。様をつけた方がいい。所で……そのサンフラ様だが最近結婚するなどの話は聞いた事ないか?」
マルクが情報通そうな受付に聞いてみる。
万が一噂があるならラーミの事も噂になっているだろ。少しでも情報が欲しい所の質問だ。
「あらあなた……サンフラ様と結婚したいの? うーん、サンフラ様は強さしか興味ない人だからねぇ、そんな話は聞いた事ないかな」
事務員の話にマルクの思考が動く。
(やはりここでもか。それはおかしい、ではなぜラーミと結婚すると書状がくるのだ? もしやサンフラですら知らない話と言う事もある)
「つまりマルコさんでも結婚チャンスはあると言う事ですね!」
「お、自分はしない!」
気づけば途中からからかわれている事になったマルクはラーミの体を怪我をしてないか確認し、受付嬢に別れをつげ闘技場を後にする事にした。
これ以上はここにいても無意味だろうと感じたからだ。
「にしても、ラーミ」
「ラーオですけど、周りに人がいないので良いでしょう。なんですかマルコ姉さん」
「いきなり襲うのはどうかと思う」
「あれが一番早かったんですけどね、護衛もつけないで歩いているので何かあるとは思ってましたけど、ああも簡単に受け止められるとこちらのプライドがピキっていますので、今度は外しません」
ラーミは宣言するのをマルクは苦笑してしまう。
「む、その笑いは絶対に出来ないという私への当てつけでしょうか」
「いや、違う。ラーミといると面白いと思ってな」
「ですので、あんな不愛想な男と結婚はしたくないですね」
「俺も渡したくないな」
思わずマルクが本音をいうとラーミの顔が輝いていた。
「それはもう告白ですよね。いえ結婚しているので当たり前ですけど、ちゅーしましょう、ちゅー!」
「え。いやしかし街中だぞ!」
「周りに誰もいませんし、ちゅーでは子供生まれませんよね? 断る理由は無いと思いますけど」
マルクは一歩後ろに引く、顔を横に向けると偶然通りかかった人はマルク達を見て顔をそむけた。
反対側でパンを売っていた男も突然に本を読みだす、その本は逆さまであった。
「ま、まて……俺が恥ずかしい」
「女装までしてるのに!? 今更です。1回でいいですよ1回でそれ以上は望みませんし」
ラーミが顔を上げて目を閉じている。
周りから見ると少年が女装した中年男性とキスをするという、もはや捕まりそうな絵ずらであるが、幸い周りの人間は見ないフリをしてくれていた。
見ないフリというかは関わりたくない。かもしれない。
マルクは息を吐きだすとラーミの肩に手を置いて……。
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