第26話 王都で捕まる!

 盗賊退治の主役であるマルクとラーミは、現在王都に向け出発中である。

 あれ以上ムツナイの街にいると、あちこちに引っ張りだされて出発が遅れそう。と言う事で今朝早く出発した。


 見送りはニイケルで、結局別荘を貰っても管理するのにお金がかかると言う事で上質な酒を沢山馬車に詰め込んでもらい事なきをえる。



「マルクさん、はいどうぞ」

「っと、すまないな」



 御者台に座るマルクの横から酒が渡される。マルクはそのまま飲むと馬車をゆっくりと走らせていく。

 凄くのんびりした空気が流れていく。



「ラーミ」

「はい、なんでしょう?」

「俺に特訓をつけてくれないか?」



 のんびりとした空気の中、思っていた事を話し出す。

 マルク何度も人工魔族と戦った事を思い出していた。あの時は興奮していたが確かに一撃を片手で薙ぎ払った…………様な気がするからだ。


 冒険者になり強さとは関係ないものと思っていたがラーミと一緒にいて強くなければ何も解決できない。と言う場面も見ている。



「夜の!?」

「ぶっはっ……それはち、ちがう。戦闘のだ」

「珍しいですね、マルクさんの一人、二人ぐらい私が守りますよ?」

「俺が二人も三人いたら困るし、限界と思っていたが先があるような気がしてな」



 素晴らしいです! とラーミが言うと、新しい酒がマルクの前に差し出されてきた。



「これ以上飲むとだな、御者としての運転が」

「飲まないんですか? 祝い酒というやつですよ。美味しいお酒でツマミもあるのに……じゃぁ私がっあっ!」

「飲まないとは言っていない」



 マルクはラーミの手に戻る前酒を飲んで手綱を引いた。



 ◇◇◇



 ちょいちょいトラブルはあったもの何とか 王都カーベランスまでついた。


 そう相変わらず盗賊に襲われたり、温泉を見つけて入ると混浴だったり、そこに美女が押し寄せたり、マルクとラーミが訓練すると年齢の割に頑張ったマルクが翌日に筋肉痛で動けない。など色々あったが王都にはついたのだ。



「で。マルクさんここからどうするんでしたっけ?」

「ああ。冒険者ギルドにいきギルドマスターに説明をし、二つの遺言状の破棄だな」

「ああ。そうでしたね、まずは入国しますか」



 相変わらず面倒な仕事は若い人間が押し付けられる。と言う事で門兵に入国手続きをする、冒険者カードを見せて入るだけであるが、その兵士の顔が少し曇った。



「あの、人のギルドカードをまじまじと見て失礼ですよ?」

「ああ、珍しい名前と思いまして。貴族のラーミ・ランフ・ヴァミューさんで間違いないですね?」



 若い兵士がラーミに確認すると、ラーミはそうですけど? と不思議な顔だ。



「ではこちらが、E級冒険者のマルクさんですか?」

「そうなるな」

「マルクさんはC級ですけど!」

 (この場合EもCも変わらないだろう)

「これは失礼しました。


「え、はい。そうですけど? で、こちらの渋い男性が夫のマルクさんです!」


(何もそこまで持ち上げなくても……)

 持ち上げられて、どうしていいかわからず少し照れる。



「わかりました。ラーミ・ランフ・ヴァミュー様。あちらの部屋で手続きがありますので。マルクさんは反対側の部屋で冒険者ギルドの手続きが残っています」



 マルクとラーミは門を抜けた先で会おう。と約束してそれぞれ別の入り口に入った。

 マルクが入った瞬間その体目掛けて鉄の棒がいくつも振り下ろされた。



「うぐっ! なっなんだ」



 マルクは周りを見ると銀色の鎧を着た兵士達だ、全員が鉄の棒をもちマルクの行動を制している、振り下ろされた鉄棒の何本をうけ痛みに顔がゆがんでいた。



「抵抗するな!」

「元からするつもりはない……貴族相手に何かはしてるだろうと、忠告は受けていたが、この歓迎は予想してなかったな」

「ラーミ・ランフ・ヴァミューを誘拐した罪で処刑する」

「それは困る」



 マルクの随分と普通な態度で周りの兵士のほうが困惑した。



「困るも何も、貴族のサンフラ・マリュ・クロ様の命令書がここにある!」

「サンフラ・マリュ・クロ……クロ……クロ! ああそうか、あの男もクロ家だったはずだ」



 マルクが大声をあげるので捕縛のタイミングを失った兵士達。


 マルクがいうクロ家というのは、人間を魔物にかえた事を自慢気に話していた男。その男がクロ家の弟分といっていたはずだ。



「この辺でクロ家というのはいくつあるんだ?」

「王都では一つだな。お前にはこのまま処刑されるか王国に来なかった。その二つの選択肢がある。どちらかを選べ」



 そもそも兵士達も貴族の命令でしてる事であって本気でマルクを捕まえて処刑しようとはあまり思っていない。

 ここで脅して外に逃げ帰ってもらうのが一番だ。と思っての行動である。



「どちらも断ります!」



 少女の声が聞こえたと思うと、マルクが入って来た鉄の扉が吹き飛んだ。

 中の兵士とマルクはその扉に当たらないようになんとか回避すると逆光の中腕を組んだラーミが立っている。



「ラーミ!? 無事だったか、いや俺がこういう状況であればそっちは無事とは思うが」

「無事なわけないですよ! どっかの貴族が私と結婚するらしいので、その屋敷までお送りしましょう! とかいうんですよ」

「例の貴族か……」



 マルクが言うとラーミが部屋の兵士の数を数えている。

 その中で一番偉そうな兵士が一歩下がりはじめた。



「な、何のつもりでしょう。ラーミ様、クロ邸へお送りします」

「ラーミまさか!」

「マルクさんは下がっていてください、ようはアレですよね。マルクさんは現在暴れると不味いというのは私でもわかります。と、言う事はですよ? 私が全員倒せば問題ないですよね? あっ因みに隣の部屋にいた兵士は全員倒しましたので」



 ラーミは近くに落ちていた鉄の棒を拾うと簡単に二つ折りにして見せた。

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