第25話 ブチ切れた妻は無双しすぎる

 扉を開けると、中央エントランスが広がっていた。

 その中であり数人の男がこちらを向いた。覆面は外しており、少年といえる顔つきから、中年を越えたであろうと思う顔ぶれである。


 先ほどの女性は既に裸にされていて盗賊の手によって抱きかかえられている。

 

 逆にマルクとラーミは覆面をしていた。

 その覆面ラーミは大声で叫ぶ。



「私達は盗賊S&Bです! 女、金、あとお酒ですかね? 全て奪いとります!」

「………………」

「あの、マ――じゃない盗賊Bさんも叫んでもらわないと……」

「盗賊Sみたいにか?」



 バレバレであるが最低限、作戦が失敗しても私達は冒険者ギルドと関係ありませんよ。という建前みたいなものである。


 その証拠に冒険者ギルドのがさ入れに違いない! など声が飛ぶからだ。



「違います! 盗賊Sですからね」



 ラーミは近くにいた若い男を蹴り飛ばす、すぐに別の攻撃が迫ってくるが難なくかわすと、それも回転蹴りで捌いていく。



 (相変わらず強いな……っと俺も仕事をしないとな)


 マルクは捕まっている女性の救出だ。

 先ほど捕まっていた女性を危なくないように端に移動させ。

 逆に吹き飛んだ盗賊を縄で縛っては反対側に置く。



 ラーミに襲い掛かる盗賊が少なくなったころ、二階へ上がる階段に一人の男性が見下ろしてきた。



「くそ! お、おまえらいいのか? 俺はクロ家の舎弟だぞ!」

「…………と、いわれましても私はクロ家なんて知りませんし」

「どこかで……」

「マ……盗賊Bさん知ってるのです?」

「最近どこかで聞いた気がしてな」



 マルクは考えるも思い出せない。



「聞いておどろけ! 中央のマリュ・クロ家だ。俺達が本気になれば冒険者ギルドだっていのままなんだよ!」



 半分当たって半分不正解の答えだ、現にラーミ達は冒険者ギルドから頼まれてきてるのだし。



「あの、すぐそっちに行きますのでボコボコにします」



 ラーミが宣言すると舎弟宣言した男が近くのレバーを引く、そのとたんに天井部分が崩れてきた。



「ラーミ!」



 思わず本名を叫んでしまったマルクに土ぼこりの中ラーミの大丈夫です。と言う声が聞こえてきた。


 土ぼこりがおさまると、異様な化物がそこにはいた。



 頭はトカゲで体は白い体毛に覆われている、背中には羽が二枚生えており、尻尾は蛇だ。足などは魚のウロコのようで生臭さを放っていた。



「マルクさん、私こういう魔物見た事無いんですけど知ってます?」

「いや」

「魔物? 何を言っているこれこそが究極の実験。人工魔族である! 頭はドラゴンをベースに体はイエティ、尻尾は蛇を残った部分はマーメイドの鱗。背中の羽はワイバーンだ、それを奴隷ゴミに移植したのがこの奴隷魔族よ」



 自信満々にいう男は人工魔族に向かって「侵入者を殺せ」と命じた。


 マルクは信じられない物をみて茫然としている、今の話が正しければこれは元は……人間と言う事であるからだ。


 気づけば走っていた。

 元々足は速い方ではないが遅い方でもない、マルクに向かって人工魔族1号が攻撃を仕掛けるが、マルクはその腕を跳ねのけ走る。



「マルクさんの未知なる力が!?」



 驚きの声などを聴かず首謀者の前まではしり、その勢いのままマルクは相手の首を壁へと押し付けた。


 マルクが力を入れればこの男の首は粉々になるだろう。それぐらいに怒っているのだ。



「元は人間なんだろ?」

「うぐ、はなっ! 俺はっぐううう!」

「元は人間か!? と聞いているんだ」



 マルクが激怒している背後では大混乱になっており、それまでやられていた盗賊達は異様な魔物が現れて必死に外ににげる、捕まっていた女性達も、少しだけ良心の残った盗賊達の手によって外に逃げ始めていた。


 ラーミのほうはその二匹の人工魔族の注意を引いては今は攻撃をしかけないでいる。



「人間とは選ばれた……物だ。ゴミはにんげ……でなはい」

「元に戻す方法は?」



 声は冷静であるが首謀者の首に込めた力が強くなる。



「ばかが、あるわけが…………」



 首謀者の体から力がなくなると手足が人形のようになった。



「っと。マルクさん殺したのですか?」

「落としただけだ……ラーミその……せめて苦しまないように」



 ハイオークを一撃で倒すほどのラーミだ、この人工魔族も倒せるだろうと踏んでの願いである。



「そうですね……その方がいいかもしれません。では」



 ラーミのスピードが一気に速くなった。



 ◇◇◇


 屋敷の外に出ると大量の人がそこにはいた。剣や盾をもっている兵士が先に逃げ出した盗賊などを縛り上げている。



「終わったようじゃな」

「ロウギルドマスターとニイケル」

「お疲れ様ですお二人とも、大変素晴らしい働きでした」



 マルクは黙って首謀者をニイケルに引き渡す、その顔の表情は暗い。



「そう怒るな。孤児院から出た子供が行方不明になる。そういう事件も調査していた」

「全部知っていたのか」

「半信半疑だったじゃがな、しかし今までと違いここまで証拠があるのじゃ。これ以上は逃げれないだろう」

 (そう願いたいな)



 マルクはまだ怒りは収まらないが無理やりに収める事にする。



「ものすごい面倒な依頼でした、大金貨100枚ぐらいは欲しいです、ねーマルクさん」

「ラーミ!?」

「だってこっちは命がかかっていたんですよ? いくら積まれても命の値段なんてつけれないですからせめて大金貨100枚は貰わないと」

 (一理あるが……うお。ギルドマスターロウの顔が物凄く渋くなっている。隣のニイケルは小さく笑っているな)



「解った。ワシの別荘を譲ろう……どうせお主ら王都にいくんじゃろ? 帰りにまた寄れ」

「その間にロウさん死んでませんか?」

「死ぬかっ! わかったニイケル! 証人になれ!」

「はい」



 場の空気が変わりマルクの怒りは消えていく。

 (もしかしてとラーミは俺の気配を感じて話題を変えてくれたのか?)

 とラーミを見るとラーミと目があった。



「マルクさん! こんなに人が見てるのにちゅーですか? ちゅーですよね!?」

「えっ! いや……」



 それまで仕事をしていた兵士や他の冒険者。捕まっている盗賊や助けだされた女性達までもマルク達を見た。



「その、他の人が見てるからな」

「では、見えない所にいったらお願いします」



 言質を取られたとい奴だ。

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