第23話 道草日記

 泣きながら改心します。という盗賊達を門兵に引き渡すと、そのまま冒険者ギルドに通された。報奨金の支払いのためである。


 マグナの街の冒険者ギルドと作りは一緒であるがマグナの街よりは活気がない。

 鉄の扉がある部屋に通されると、ずいぶんと高齢の人間と、若い男性が中で待ち構えていた。



「では、報奨金のほうを少ないが」

「うわ、本当にすくな――――金貨1枚と銀貨5枚ですよ」

「ラーミ。そういう事は言わないほうがいい、それに薬草を取って暮らしていた俺には大金だ」

「高名な冒険者と見受けられる、ギルドカードを確認させてもらってもよろしいじゃ?」



 別に見せる必要もないがマルクは自分のを出すとラーミもカードをだす。

 (しまった、ラーミのカードは偽造されたBだ……問題が起きるか?)



 マルクの心配をよそに老人がギルドカードに手をかざした。ギルドカードが光るとマルクとラーミを見てギルドカードを返してきた。



「所で盗賊のアジトは破壊しなかったのですか?」

「しなかったのですか? と言われても、場所がわからない」

「何故無傷で捕らえた盗賊に、質問しなかったのですかな?」

「そういわれてもな」

(何を言いたいのか……)



「マルクさん、ちょっと離れていてください」



 ラーミが話の途中でマルクに注意をした。

 全員の会話が止まると、ラーミが壁に手のひらをあて腰を落とす。



「まさ――」



 ラーミは気合をいれると、冒険者ギルドの壁を粉砕した。通りにいた一般人などは信じられないような顔で崩れた壁とラーミを見る。



「ラーミ!?」

「よくわからないですけど、とても腹が立ちそうな言い方が多かったので。盗賊を引き渡して尋問するとか話になりません、こっちは急いでいるんですし帰りましょう。に穴があいてますし」



 ラーミが一歩外に出ようとすると、老ギルド員が素早くラーミの腰にしがみ付いた。



「ま、まってくれワシがここのギルドマスターゴロウだ! 戦力が欲しかったんじゃああ!」



 ◇◇


 改めての話し合いの場となった。

 先ほどとは違い、テーブルの上には、茶と大量の茶菓子が山積みになっていた。壁には木の板がはられており修理費にいくらかかるのか。とマルクが心配する。



「すまん。あまり、内情を知られたく無かったのじゃ」

「最初から頼み事なら素直に話してくれればいいんですっ! もっとも内容によっては引き受けませんけど」

「それじゃ。お主らに罪悪感を持たせ絡め脅し引き受けるように持っていこう。とおもったのじゃが」



 とても嫌なやり方だな。

 とマルクは口にはしなく思っただけにした。



 「その、話はなんなんだろうか? 俺達みたいな流れの冒険者に頼むよりは、所属の冒険者もいるのでは?」

「問題はそこじゃっ!」



 なにやらギルドマスターロウ爺の演説が始まった。

(どこの町でもギルドマスターというのは、なぜこう、押しが強いのだろうか?)



「いいか、お若いの。冒険者ギルドといえど、国と友好関係はあるが国のためにあるわけではないのじゃ! おぬし等が捕らえた盗賊は既に、釈放されているだろう大本を捕まえないとな」

「じゃぁ捕まえてください」



 ギルドマスターの顎がカコンとはずれた気がした。近くにいた若いギルド員が小さく笑う。



「それが出来ればこうしてお主らに頼み事なぞしとらんわ!」

「老人の逆切れほど嫌な物もないですね」

「ええっと……ギルドマスターロウさん。続きを話してくれ」



 咳払いをした後に小さい声に切り替わる。



「あやつらの元は貴族達じゃ、下っ端は遊び半分で雇った奴らだろう」

「では、そのベテラン冒険者はどうだろう?

 ムツナイにだって家を持っている冒険者はいるはずだ、オレ達みたいな流れ者に頼まなくても」



 わかっている。というと、続きを話しだす。



「もちろん、マグナの街に負けずにムツナイにも冒険者はいる。しかしだ……過去に討伐に向かったが何度も空振りが起きている情報が漏れているのだ。1人1人に監視をつけるわけにはいかないからのう、こういうのはよそ者のほうがいい」

「ふむ」



 マルクは腕を組んで考える。

 急いでいるといっても幸い盗賊を届けるのに全力で走った結果時間は短縮されている。


 冒険者はあくまで、冒険者だ、金のために動く人間もいる。というかそっちの方が多い。



「そこでだ。困っていた所に現れた、綺麗で可愛くて、博識でその上に強い冒険者がやってきた。きっと将来は今よりも美人になるだろう、いやぁ美人な奥さんを貰う旦那は凄い羨ましいなぁ。万が一失敗しても流れの者ならば、直ぐに街をでていくだろうし、アジトが崩壊すれば暫くは大人しくもなる。頼みたいと思う気持ちは、わかるじゃろ……」



 持ち上げて、持ち上げて最後にしおれて話すのは、交渉術だ。ラーミは満更でもない顔をしている。



「そ、そこまで言うなら。急ぐ旅ですけど、ちょっとぐらいの寄り道はいいと思います。ねー、マルクさんっ私がいれば一撃でしょうし」

「ロウギルドマスター。その、危険はないのか?」

「無いわけがあるまい、そこでワシの優秀な右腕のニイケルが案内する」



 壁際で小さく笑っていた若いギルド員だ。



「冒険者の資格もありランクはCのニイケルです」



 ニイケルと呼ばれた男性が小さくお辞儀をする。マルクの半分程度の年齢にしかみえないのにランクはC、かなり出来る冒険者に違いない。

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