第20話 ボスの攻撃を受ける
マルクは先ほどの場所から離れると大声を上げた。それは目いっぱいに。
直ぐに毒草で作った煙幕玉に火をつけて集落に投げこんだ。
オークたちがマルクに気づくと奇声を発しながら槍などを投げてくる。崖の上にいるマルクには当たらずに下に落ちていく始末だ。
その行動をみてラーミは素早く檻まで走ると捕まっているミイナの前で急ブレーキをかける。
「不本意ながら助けに来ました、いま牢をこわしっ!? 何ですかこの牢は」
「魔力で強化されている、普通の牢だったら私達でも壊せたんだけど……もちろん鍵はあるんだよね?」
「無いですよ?」
ラーミの言葉にミイナ達は絶望の色になった。
「仕方がありません、少し本気をだしましょうか」
ラーミが牢をつかみ気合を入れるとラーミの肩を背後から叩く手があった。
ミイナを含む全員がその絶句し絶望の色になる。
「ラーーーミイイイーーーー!!」
上空から見ていたマルクが叫ぶ。頭のいいハイオークは知っていたのだ、これが陽動だと言う事に。
現に長い斧をもちラーミの肩を叩いてはその反応をうかがっている。
マルクは叫びながらもロープで降りようとしていた。何も持たずに崖を降りようとするとしたからオークが槍を投げてくる。
「くっ! うおおおおおおおおおおお!」
マルクの口からでる叫びに、嬉しそうなハイオークはラーミに向かって大きな斧を振り下ろしてきた。
ミイナが辛うじて「逃げっ……」と声を出す。
「て……え?」
ラーミは背後からの強力な一撃をかわすと、小さくジャンプしていた。小さな体を回転させてそのハイオークの腹部に蹴りをいれると、ハイオークの体が物理的に二つになる。
着地し檻に向き直ると、ミイナに「集中できませんので静かにしてもらえると助かります」と伝える。
気合をいれた力で魔法の檻を壊すと唖然としているマルクに大きく手をふった。
「さて、ハイオークが来るといくら私でも戦いたくはないですしさっさと逃げましょう」
「え。ええっ!?」
ミイナが言葉にならないと隣に捕まっていたアケミが呆れた声をだす。
「今倒した奴がハイオークだよ……」
「えええええ!! はっ!? 言われてみれば肌の色が違います。こ、こんな弱いとは……これは作戦変更がいいかもですね。マルクさーん、殲滅していいでしょうかー?」
大きな声で叫ぶラーミ。
マルクの耳に届くと言う事は周りのオークにも聞こえたわけで、さきほどまで奇声を上げていたオークは武器を捨てて一斉に小屋に戻っていった。
オークは別に知能が無いわけではない……絶対に勝てない相手に遭遇した本能のようなものである。
ラーミの近くにあった小屋からかは銀貨や金貨、宝石などがラーミに向かってどんどん投げられた。
◇◇
マルクがゆっくりとオークの集落に降りると様子を見ていた木窓がバタンバタンとしまっていく。
道の途中に捨てられた鍵を拾って開いていない牢の鍵を開けた。
「ええっとだな……助けに来た冒険者C級のマルクだ」
「特別B級のラーミです。夫婦なんですよ夫婦」
聞いていない事を嬉しそうに喋るラーミにミイナが代表して手を差し出す。
「C級のミイナ。それとアケミ。他6名って所」
「他に捕まった人間は?」
「いない……ええっと助けてもらったのは嬉しいけど、場所移動したいかな」
先ほどから木窓からの視線が集まる。
小さいオークが小屋から飛び出すと、大きいオークが必死にそれを捕まえて小屋の中に戻っていく。
その度に金貨などが足元に投げられてくるのだ。
「マルクさんこれ持ちきれないですね袋が欲しいです」
ラーミがそういうと、汚い袋が何個も飛んで来た。
「………………オークが金貨を使うとはわからないがこれは置いて行こう。ミイナさん達もそれでいいかな」
「命を助けてもらって何も言う事は」
他の仲間がお姉さま今なら正面からでていけそう。と、いうがマルクは首を振った。
「ギルドマスターが洞窟の入り口にいるはずだ処罰の対象になる場合がある。崖の上から回って貰えないか?」
「従うよ」
「では最後に」
ラーミが発声練習をして周りを見渡した。
「私達はひっそりと来たので今日の事はお互いに忘れましょう! もし忘れなければ……今度は殲滅します」
オークの小さい悲鳴が聞こえた気がした。
「ラーミ!?」
「なんでしょう?」
「いや……良く言ってくれた。そうだな……」
全員が安全な崖裏まで来るとミイナが「本当にいいのか?」とマルクに聞いていた。
「ああ、君たちはオークの隙を突いて逃げた事にして欲しい」
「しかし、他の冒険者を命がけで助けたとなると……危険区域といえなんらかの報酬や名声が」
「処罰のかもしれないし、事を大きくしたくはない。それでなくても君達のリーダートーマさんは処罰を受けるだろう」
「わかった……」
「所でもうそろそろラーミを離してあげてほしい」
マルクがそういうのは他の助けたメンバーからラーミは質問攻めにあっているからだ。
どうやって知り合ったのから、いつ結婚したの、なんでそんなに強いの? 夜の回数はなどなど。まさに女子トーク全開である。
質問されるラーミもまんざらでもない顔で答えるので近くにいるマルクは恥ずかしい。
「わかった。ナッチ。フォーミン助けてもらった恩人を解放してあげて、アケミも聞きたい事あるなら酒でも入れた方がいいでしょ?」
ミイナがいうとしぶしぶとラーミから離れていく、ラーミは自然にマルクの横を歩き出した。
森の出入り口でもう一度握手をした。
一緒に帰るわけにはいかず先にミイナ達が帰り、暫くあとからマルク達が帰る手はずだ。
ミイナが先に歩くと、次に他の女性たちも後に続いていった。
「疲れたな……こういう時は一杯やりたいな」
「そうですねー。でも今日はダメですよ?」
「な、なぜだっ?」
「罰です! 私に黙って危険な事をした罰ですよ!」
「いや、それは酷……くもないか。わかったではラーミに奢らせてくれ。ラーミがいなかったら助けられなかっただろう」
「そこまで素直に褒められると照れますね……わかりました。一人で飲むのも寂しいですし許可しましょう!」
「本当かっ!?」
マルクは足早に街に戻った。
かった。
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