第19話 捕まった側の女性冒険者
集落の中心部にある鉄で出来た檻。
その中には冒険者ランクCからFの女性冒険者が、皆おもいおもいの表情で顔を伏せていたりした。
終始無言なのは、前衛剣士タイプのミイナである。パーティーのサブリーダー的な存在で爪を噛んで悔しさをにじませていた。
このパーティーは、トーマ以外は女性で構成されていた。
特徴的なのは全員がトーマと関係を持ちトーマもそれに応じているという珍しいパーティーである。
トーマは別に弱いわけでもないが、今回の発端はBランクに上げたいと思い、全員がそれに賛同した結果だ。
表向きははぐれオーク以外は討伐したらだめだ。という決まりは知ってはいたが、はぐれオークだった。と言えば問題も無い。
全員の意見が一致すると、行動は早かった。
沼地を抜け、封鎖されている洞窟にはいる。8人パーティーはそのままオークの集落へと突進した。
全ては順調であり殲滅できる。と思った矢先に。
爪を噛むミイナがみるのは一つの小屋、そこに肌がグレーなハイオークが居るはずだ。
それまで統制の取れていなかったオーク達は、ハイオークが現れたとたんに無駄の無い動きになったのだ。
ハイオークは最初に盾を吹き飛ばし、回復魔法を使う仲間を狙った。
その隙に一気に形勢が逆転された。
それでも、トーマを茂みに隠せたのは大きい。彼さえ生きていればと思う、全員が同じ思いだった。
物思いにふけっていたミイナは後頭部に痛みが走り檻の中で悶絶した。
最初は見張りのオークが槍で刺したのかと思ったが背後には見張りのオークは折らず、逆に牢内で暴れた事により見に来たぐらいだ。
「な、なんだ!?」
「お姉さま?」
見張りのオークが何も無いと確認すると少し離れていく。
ミイナの足元には手のひらサイズの石が落ちていた。
「ミイナ?」
「ミィ、オークに何かされた!?」
「お姉さまっ大丈夫ですか!? 直ぐに痛みは飛ばしますから」
同じ牢に居た仲間達に心配をされる。
ミイナは石が飛んできた方向をもう一度みると、小さな女の子が茂みから手を振っている。
もちろんラーミであった。
ラーミはいま体にロープを巻きつけ、オークの集落へと降りている。
思わず手で口を閉じた。
そうしないと叫びそうになるからだ。
こんな集落に子供がいる、もはや亡霊でも見ているのではと思ったからだ。
しかしその姿は全員が確認しオークに見つからないように直ぐに建物の影に隠れた。
もう一度姿を現すと、ラーミは第二球目を投げた。
その物体を、音を立ててキャッチするのは同じ牢に入っている守りが得意なアケミである。
音に気づき、見張りのオークが牢の中を見る。アケミはわざと牢の中で暴れた。
見張りのオークが、奇声を発して牢へ近寄り蹴る。おそらくは静かにしろ、という合図だろう。
「ミィ、これって助けてくれるつもりらしいよ」
アケミがこっそりと手紙を見るとマルクの考えた作戦が書かれていた。
「あの崖上か……1人男性がいるな。しかし、あんな小さい子を伝言役として集落にいれるとは少し気に障る」
「私は賛成。この檻さえ壊せればもう一度戦う」
「チャンスは少ない……読み終わったら隣へまわして全員の意見が合えば……」
ミイナとアケミが頷くと手紙は直ぐに皆に渡された。
代表者としてミイナが不自然であるが二回手を上げた。これが承諾のサインである。
マルクはラーミを引き上げると肩で息をする。
「戻りました、マルクさんって……あの、大丈夫ですか? 息上がってますけど」
「だ、大丈夫だ。それよりも」
(やはり担ぐと引っ張り上げるのでは使う力が違うな。少し力をつけたほうがいいかもしれない……)
肩で息をするマルクはもうひと踏ん張りだ! と気合を入れた。
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