第17話 マルク家を買う! の企画

「家を買うか……」



 マルクがそういったのはシスターアンに結婚報告をしてからすでに7日後の事だった。

 姿のラーミがベッド上で寝ころびながら「家を買うんですか?」とマルクに聞いてくる。


 ぎりぎりの所でラーミの裸は見えてはいない。



「この家は狭いからな」

「別に狭いほうがマルクさんを見れて楽しいですけど」



 マルクはベッドの近くの椅子に座ってラーミを見ては汗を拭く。



「俺が困る」

「あー……そうですね。男性には女性には言いたくない一人でする事があるとママが覚えて置け。と」



 どんな母親だ。とマルクは突っ込みたいが我慢する。

 亡くなった人を、それもラーミの母親をけなす事はしない。



「別にそういう事ではない、下着姿のラーミを見ていると俺の自制心が壊れそうだからだ」



 ラーミと一緒に暮らすようになってラーミは家の中ではよく服を脱ぐ。理由は熱いからだ。と。

 子供には性的欲求はない! と思うマルクであるがちらちらと見える姿をみては外の井戸で体を冷やす日々になっているからだ。



「夫婦ですし別にいいかと」

「ラーミは反対か?」

「いえ、マルクさんが決めたのであれば、相談されたわけですし反対する理由もは無いですね、でも家ってそんな簡単に買えるんですか」

「そこで相談なんだが――――」




◇◇


 冒険者ギルドに二人で入る。

 さすがに好奇の目で見られる二人であるが最初よりは少なくなった。


 冒険者たるもの一つの事にこだわっていても仕方がない。と言う奴だ。

 マルクは懐かしの買取カウンターの前に立った。ギルド職員のミーアが笑顔で対応してくれる。



「お久しぶりです。薬草の買い取りですか?」

「いや、今日は相談があって……」

「え! もう薬草の在庫が少ないんですけど!?」

「………………今度採取してこよう」



 マルクがいうと横のラーミが「マルクさんは薬草係じゃないんですけど」とミーアにいうとミーアが慌てて謝った。



「ごめんなさい。マルクさんがいつも上質な薬草を納品してくれるので他の人の薬草は中以下なんですよね……おかけで薬草の値段が上がっています」

「それは嬉しいな、今から――」



 マルクが今すぐに採取しそうな勢いでラーミは咳払いする。



「っと、その家を買いたいと思って、いい物件はないだろうか、資金は前回の分を使おうかと」



 マルクがラーミ相談したのは資金の事だ、二人の共同資金からだしていいか? という相談でラーミはもちろんと承諾した。



「家ですかギルドが管轄する物件といえば――」



 二人で色々と注文をしてそれに見合う物件をミーアが探す。それを暫く繰り返すとあっというまに時間が過ぎる。



「中々にないですね」

「そうですね……良物件は既に先約がいますし冒険者が住む家となると近隣トラブルもありまして冒険者ギルドの課題の一つですね、シュアハウスと言う手もありますが新婚の二人ですしそれは無理ですし」



 結局家を買うといっても物件がなければどうしようもない。ミーアは直ぐに探しますね。と言う事で話は終わった。



「折角ですし依頼でもみましょうか」

「そうだな……うん、それがいいだろう」



 依頼掲示板を眺める二人であるが、早々美味しいクエストは無い。小さい声でラーミがマルクへと口を開いた。



「またエルドラおばさんに頼みましょうか?」

「いや……彼女にも悪いし、ここで同じのを取ってくると前回の買い付けでお金を出した商人だけじゃなくて、その商人から買う人間の恨みも買う」

「なるほど、んーーどうしましょうね」

「薬草が少なくなっていると言っていたし……」

 (ラーミにとっては地味かもしれないな)




 美味しくなくても何か、『俺にでも出来る』依頼でもないかとマルクが掲示板を眺めていると、ギルドの扉が乱暴に開け放たれる。


 マルクをはじめ、ギルド内に残っている人間の眼が、音のほうへ向いた。

 そこには、応急処置をした青年と、若い門兵が入ってきた。

 門兵ほうが先に口を開く。 



「門兵のラッツだ。この冒険者が依頼最中に魔物に襲われたと逃げ込んで来た。直ぐに係りの者を頼む」



 その言葉でギルド内が騒がしくなる。

 怪我をした青年は、名はトーマといい冒険者ランクCだった。

 Cといえば冒険者の中でも平均を越えている、そんなランクが重症を負う、一大事であった。

 騒ぎにかけつけたのか、二階にいるギルドマスターのフィが直ぐに降りてくる。


 ちゃらんぽらんしているが、ギルドマスターである。

 手短に指示を出していく。



「回復魔法、もしくは薬草に詳しい物など直ぐに手当を! ミーア直ぐにベッドの手配を。っと門兵のラッツ、ご協力を感謝する。後日礼に行く」

「気にするな。ただ、マグナの街の外で起こった出来事は俺達じゃ勝手に動けない、領主や貴族の指示がいるからな……」

「わかっている、直ぐに対処する」



 門兵のラッツがギルドから出て行く。

 直ぐに移動式ベッドに寝かされたトーマにフィが優しい声で尋ねている。


「トーマだったな昨日マグナの街来た冒険者と聞いている襲われた場所と魔物、賊、他の情報は?」

「ミイナとマイが……」

「なるほど、三人編成だったのか、他にはいるか?」

「それに……ユリにハルカ、アケミにナッチ、それとフォーミンが西の森にいる……」

「その、全員女か?」



 ギルドマスターのフィが少し醒めた眼になる。

 それは、周りで聞いていた男性冒険者も同じ感情だっただろう。



「はぁはぁ……。ああ、僕を逃がすために……」



 マルク以外の男性冒険者全員が思っただろう、どんだけハーレムなんだと。見ると直ぐに動こうとしていた男性冒険者の顔にやる気が下がって見える。



「まずはこれを飲め。煎じた薬草だ。不得意であるが回復魔法をかける」



 フィが他人には聞こえないように何かを呟くと手が光り輝いた、髪が風圧であがりトーマに回復魔法をかけた。

 傷が治っていき顔に生気が戻っていく。



「痛みが治まったっ。これで沼の先へ行ける! 誰か一緒に手伝ってくれ」



 ギルド内が再び静かとなる。



「ど、どうしたんだ……まだ助けを待っている仲間がいる」


 フィの顔が真面目な顔になる。



「トーマ、沼というのはマグナの森から南に抜けた先か?」

「そうだ立ち入り禁止区域なのはハイオークがいるからだろ? だからそれを倒そうと」



 懸命に話すトーマであるが他の冒険者が静まり、中には帰って行く冒険者もいる。ラーミはマルクの小さく服を引っ張っている。



「マルクさんっ。あの、よくわからないんですけど立ち入り禁止とは? ハイオークぐらい倒せばよくないですか?」

「マグナ森の奥には沼地があって、その先は危ないから立ち入り禁止なんだ。普段は沼の奥に洞窟があって手前からいってはいけない」



 ギルドマスターのフィがキツイ声でトットマに話しかける。



「もしかして洞窟を抜けたのか」

「ああ、沼を越えて暫くしてから二つの大岩があったんだ、それを越えて小さなトンネルがあるから、そこの大岩を開けて、そして暫く先の広場であいつらは待ち伏せをしていた……直ぐに救助を」

「だめだっ救助隊は中止。直ぐに大岩の確認後、再度ふたをする。なお洞窟から出てきた魔物と戦う恐れあり」



 ギルドマスターのフィが冷酷な依頼を飛ばす。

 納得行かないトットマが異議を唱えるが、答えずに続きを話す。



「なぜだっ!」

「禁止区域に手を出した物を救助するほど冒険者ギルドは暇ではないんだ……手の開いているランクB、C以上の者は申し出て欲しい、報酬は一人金貨一枚。志願者は西門へ集合以上! 二十名になった時点で出発をする解散」



 ギルドマスターは直ぐに二階へと上がって行った。

 納得行かないトーマは他の冒険者に残ったメンバーを助けてあげてくれと頼み込むが、どの冒険者も頷きはしない。


 中には助けにいくからと法外な金額を請求する冒険者もいる。


 そもそも危険な場所に自ら入ったのに危険すぎたから助けてくれってのは冒険者として間違えている。



「ラーミ、依頼を受けれそうな空気じゃないな外へ出よう」

「マルクさんは行かないんですか?」

「万が一ハイオークが出れば金貨1枚は安すぎるからな」

「なるほど」



 騒がしいギルドを後にしながらマルクは考えていた。

 (ギルドの依頼からすれば相場違いではない、しかし1枚では中々に集まらないだろう)


 マルクは、トーマの話にあったおとりになった冒険者が気になった。ギルドマスターのファは道を塞ぐつもりで助けるつもりはない。


 立ち入り禁止区域に入れば逆に罰せられるだろう。

 せっかくランクCになったのに罰則でF最悪はギルド追放まである。

 (俺であれば何度も森に通って抜け道を知っている。が……)



「おや、私に何かついています?」

「……今日も可愛いな。と思ってな」

「さすがです!」

「少しヤットの所に行こうと思う」

「では私も……」

「そのなんだ、男同士の話というか……たまにはアイツと飲みたいと思って先に家に帰っていてくれないか?」

「珍しいですね」



 バレたか? とマルクが思うとラーミが静かに頷いた。



「わかりました、家に帰り帰りを待つのも良妻の務めです、ちゅーしてくれたら帰りましょう」

「…………ここでか!?」

「はい」



 マルクは周りをみると数人と目があった。

 ラーミは眼を閉じてまっている、マルクは軽くラーミにキスをする。

 口を離した瞬間ラーミが笑顔で「背徳感で心が爆発しそうです」とマルクに伝えてくる。


 マルクとしては既に爆発しているので、手短に行ってくる。といって足早にヤットの店の方へと向かった。

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