第732話 ドレスコード?
「最後にリボンを整えて……はい、完成です」
「とっても素敵ですわ!」
こんにちは、シュータです。
遂に本日、念願の高級レストランでフルコースをいただく日がやってきました。
前世では貧乏小学生、現世もスラム育ちの腹ペコ少年として育ったマナー知らずの俺だけど、チュールさんの厳しい指導に耐えて今日まで必死にフルコース料理の食事マナーを勉強してきました。
「ね、ねえチュールさん。上層区の高級レストランにはドレスコードっていうのがあるのは聞いてたけど、本当にこの格好で合ってるの……?」
「大丈夫です、今のシュータさんはとても可愛らしいです。貴族寮である王立学園カナリア寮の寮母にして、プレート王国第一・第二王女のメイドを務める私のことを信じてください」
「俺はドレスコードに合ってるかどうかを聞いたんだけど……」
タキシードみたいな服を着てホテルの最上階にあるレストランに入っていくやつは昔テレビで見た記憶があるんだけど、今の俺はそんな感じでは全くなく……むしろ女性側の格好だった。
「自信を持ってシューコさん! わたくし……プレート王国第二王女・プリペラ・N・プレートも絶賛ですわ!」
「シューコさんって言ってる時点でおかしいでしょプリペラ」
カナリア寮で暮らす第二王女、1年生のプリペラから好印象の俺の格好は、ウェーブのかかった亜麻色のウィッグ、透明感のある美白のお化粧、そして不思議の国のアリスみたいなフワフワでフリフリの水色のドレス……えっ、ドレスコードってこういうドレス着なきゃいけないわけじゃないよね? 男の人はスーツみたいなやつだよね?
「ご心配ありませんよシュータさん。このチュール、お任せされたお店のチョイスと予約は完璧でございます。ドレスコードも間違いありません」
「チュールさんがそう言うなら心配はないけどさ」
王立学園祭で行なわれたホットホグノーズ早食い大会の優勝賞品として貰った高級レストランの予約紹介カード。
これを使えば上層区にある一見さんお断りなお店でも予約が取れてしまうという、とても貴重なカードだ。
1枚しかないのでそういったお店に詳しいチュールさんにお願いしてイチ押しのところを予約してもらったんだけど、男もフリフリのドレスで行かなきゃいけないドレスコードのお店って……まあ、美味しければなんでもいいんだけど。
「あ、ちなみにお名前はシューコ・ホワイトホーンで予約してありますのでそのように伝えて入店してください」
「じゃあこの格好はただのチュールさんの趣味じゃん!」
なんてこった……とはいえもうお店の予約時間だし、他にドレスコードに合格しそうな服とか持って無いからこれで行くしかないんだけどね。
「ごめんなさいシューコさん。チュールの食事マナーレッスン料代わりだと思って我慢してくださいまし」
「そ、そう言われたら何も言い返せない……」
王族のメイドを務めるチュールさんはマナー講師として貴族から引っ張りだこらしい。
俺にはタダで教えてくれたけど、きっと普通ならレッスン料もめちゃめちゃ高いのだろう……
「まあ、美味しい料理が食べられるなら女の子の格好をするくらいどうってことないです」
「素晴らしい心意気です、シュータさん……いえ、シューコさん」
パシャッ! パシャッ!
「転写魔道具で撮らないでください!」
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