第130話 魔石獣の長



「すーくん大丈夫? どっか壊されたりしてない?」



 (破損部位はありません。元気いっぱいです)



「元気いっぱいなんだ」



 人工の魔石獣だと思われる魔物たちが集まっている洞穴で無事にすーくんを取り戻した俺は、とりあえずすーくんが壊れていないか確認する。

ちなみに洞穴にいる魔物たちはみんな俺があげた食べ物に夢中のようだった。ああ、俺の非常食が……



「すーくん、ここにいる魔物たちは鑑定できる?」



 (人工の魔物に関しては最新データがありません)



「そっかあ」



 ここ修練の森には、学園に昔いた魔石学と魔物学の先生の研究によって生まれた魔石をエネルギーに動く人工の魔物、『魔石獣』が生息している。

この魔石獣が突然変異した結果、自分たちで勝手に増えることが出来るようになってしまい、普通の魔物と同じようにこの森で数を増やしているというのだ。



「魔石じゃなくて普通の果物や魚も食べることは意外と知られてなかったりするのかな? そしたら大発見だね」



 あとで魔石学のコル先生に聞いてみよう。



「すーくんも返してもらえたし、そろそろみんなの所に戻らないと」



「キィーッキッキ」



「ん? ああ、きーくんか」



 きーくんはすーくんを盗ってた小さなサルの魔物だ。長い尻尾の先に魔石が付いている。あれで殴られたら痛そうだな……



「キィ」



「ん、なに? こっち来いって?」



 きーくんに連れられて、洞穴のさらに奥に進む。しばらくいくと、少し開けた広場に出た。



「ちょっと、こっちになにがあるのさ……って、うわあ!」



 なんと、そこには巨大なヘビがとぐろを巻いてこちらの様子を伺っていた。

ヘビは全身がまるで魔石のようなウロコに覆われていて、こちらを見ている瞳も大きな赤い魔石のようにツヤがあり、とても美しく光り輝いている。



「……なんだ、珍しい客人だな」



「……ん? すーくん今喋った?」



 (ワタシではありません)



「じゃあきーくん?」



「キィ」



「いや我だよ我。目の前にいるではないか」



「……ヘビさん?」



「そうそうこっちこっち。よく来たな魔人の子よ……いや、真の姿は人間かな?」



「俺の事が分かるの?」



「まあな。我、有能だから」



 どうやらこのヘビさんはかなりの高知能な魔物らしい。



「我の名は被検体No.0369。まあ、番号だと味気ないのでな、ミロクと呼んでくれ」



「ミロク……」



 被検体、ということはミロクは例の研究で作り出された魔物ということだろうか。ど、どうしよう。人間を恨んでたりしたらここで襲ってきたりしそうだけど……



「我は王立冒険者育成学園の人工魔獣研究によって生み出された魔石獣だ。といっても、他の同胞たちと違い、我には人間族の言葉を理解し話す知能と、単為生殖の能力が発現してしまったスーパー魔石獣であるがな」



 ハッハッハと誇らしげに笑うミロク。どうやら突然変異で生まれたことは気にしていない、というかむしろプラスに考えているらしい。



「でも、ミロクみたいなヘビの魔物はここには見当たらないけど……」



「うむ、我の子は生まれると何故かみな姿が我に似ないのだ。ちなみにそこにいる子ザルも我の子供なのだよ」



「えっ!? きーくんってミロクが生んだの!?」



「キッキィ」



 ヘビからサルが生まれるなんて聞いたことないよ。



「我ら魔石獣は身体にある魔石から新しい子が産まれるのだが、我から生まれた子が更に子を産むと、その子は親に似る。何故か我の子だけは我と似ないのだ」



「えっなんかちょっと難しいな。すーくん、まとめると?」



 (ミロク様が産み落とした子はきーくんのように、ヘビではなく色々な種族の魔石獣になります)



「うんうん」



 (で、その魔石獣が子供を産むと、それは親と同じ種族、つまりきーくんが子供を産むときーくんみたいなサルの魔石獣になるということです)



「なるほどなるほど」



 (魔石獣は身体にある魔石がタマゴのような役割をしていて、そこから子供が生まれます)



「ふーん……って、さっき食べ物と交換してくれたこの魔石じゃん! これタマゴだったの!?」



 ちょっとそれはさすがに貰えないよ……あとで返しておこう。



「……ん、魔石から子供が生まれるってことは、ミロクのそのウロコって」



「ああ、我のウロコは1枚1枚がタマゴのようなものだな。しばらくすると剥がれ落ちて、子が生まれてくる。その後またしばらくするとウロコが新しく生成される。すごいであろう」



「うん、すごい」



 なんかもう……神様じゃん。

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