第131話 ミロクの頼み
☆前回までのあらすじ☆
学園寮主催のオリエンテーションに参加し、修練の森でスタンプラリーを楽しんでいた俺とツイル、サテンのチームフェザードーナツ。
いきなり現れた魔物にすーくんを盗られ、二人を置き去りにして追いかけるも魔物を見失ってしまう。
魔人化して俺とすーくんの魔力オーラを頼りに森の深部へと進み、発見した洞穴の中で無事にすーくんを回収。
更に洞穴の奥へ行くと、そこにいたのは全身が魔石のウロコに覆われた巨大なヘビ、学園の実験によって生み出された魔石獣のミロクであった。
「それじゃあ俺はもう行くね。あ、きーくんにもう人の物盗っちゃダメだよって言っといてくれる?」
「キィ?」
「ああ、後でキッチリ言い聞かせておこう。ところでモフモフ魔人少年よ、帰る前に一つ頼みがあるのだが……」
「なにそのモフモフ魔人少年って」
「すまんすまん、名前を聞いておらんでな。それでな、モフ太郎よ」
「いやシュータだよシュータ! 俺の名前はシュータ!」
モフ太郎って誰だよ。変な名付けセンスだなあまったく。
(ねこのすけやきゅーたろう、にょんきちなども名付けセンス的にはどうかと思いますけど)
「えっ……すーくん、いまなんて?」
(いえなんでも)
「それで、お願いだっけ? 俺、そろそろ戻らないと同じグループの二人に迷惑が……いやそれはもうかかってるんだけど」
「お願いを聞いてくれたら“宝の地図”をやろう」
「よしやろう。俺に出来ることならなんでも聞くよ」
宝の地図! なんかめっちゃ面白そうじゃん!
「シュータに頼みたいことはな、この森にいる魔物を1匹倒してほしいのだ」
「魔物? まあ、それはいいけど……」
まさか魔物から魔物退治をお願いされるとは思わなかった。
「ソイツの名は、そうだな……“暴食ラット”とでも呼んでおくか」
「暴食ラット……」
「非常に食欲が旺盛なヤツでな、森の食料を片っ端から食い尽くしてしまうせいで、現状、他の魔物たちが食べるものに困っている」
だからさっき食料を渡したら喜んで食べていたのか。あれまだ冷凍されたままだったんだけど、気にせずばくばく食べてたな。
「その暴食ラットってやつは、かなり強いの?」
「食べた分だけ成長しているはずだからな、今ごろはかなり強くなっているかもしれん」
「そうなんだ……ミロクも巨大だし、そいつを丸呑みにできちゃったりしないん?」
ザルティス湖にいる巨大なウミヘビを見ているからか、ミロクもかなり強そうなイメージがあるんだけど。
「……実はな、暴食ラットは我と同じ、実験体の突然変異でな」
「えっそうなの!? ああでもそっか、この森にいるのはみんな人工の魔石獣とその子孫なんだもんね」
「ああ、しかもだな、我ら人工の魔石獣にはある特徴があってだな……魔石獣同士で争うことができないのだよ」
ミロクによると、単一の種族を持たない魔石獣を1つの種族のように扱うためのプログラム(?)のようなものが組み込まれていて、見た目が違っても仲間だと認識するようにできているという。
そのため、ミロクが暴食ラットよりも強かったとしても、相手を仲間と認識してしまうため倒すことが出来ずにいるとのことだった。
「アイツも元は少し大食らいなだけの大人しいヤツだったのだが、体内の魔石が暴走してしまったのか、徐々に性格が凶暴になり、ひたすらに森の食材を貪る獣と化してしまった」
「それで、俺に討伐の依頼を……」
「このままではここにいる魔物たちが餓死してしまう。シュータ、どうにかお願いできんか」
「わかった。その任務、俺に任せてよ。宝の地図も欲しいからね」
「……恩に着る。暴食ラットの居場所だが、ソイツを道案内に連れていけ」
「キィ!」
「きーくん。うん、よろしくね」
まさか学園の森でスタンプラリーをやってたら魔物討伐をすることになるとは思ってもみなかったな。
「それじゃあ、宝の地図の為にがんばるぞ!」
「キィー!」
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