第128話 すーくんを取り戻せ!




「待て~! すーくん返せ~!」



「キキィ!」



 修練の森でスタンプラリーをしていたところ、いきなり現れたサルみたいな小さい魔物にすーくんを盗られてしまった。

で、今はその魔物と追いかけっこ中。



「くっそ~走りづらいなあこの森」



 魔獣の森なんかは冒険者が普段から採取などで探索してるから、ある程度地面も普通に歩ける道があったりするんだけど、ここの森は学生が実習でたまに入る程度だ。

そのため、あまり整備もされてなくて、地面から木の根っこが出ていたり、目の高さ位にツルみたいなのが垂れてきてたりして奥に行けば行くほど進みづらい。



「キィッ!」



「うわっいつの間にか木の上に……便利な尻尾だなあ」



 魔物は自身の長い尻尾とその先に付いている魔石を器用に使って木の枝から別の木の枝へと移動しながら逃げているので、走りづらいのと相まって余計に捕まえにくいのだ。



「はあ、はあ……ん? なんだあそこ……なんか青くなってる」



 しばらく魔物を追いかけていると、青くて薄い膜のようなもので森の奥が遮られていた。あれが強力な魔物を出さないようにするための結界だろうか。



「じゃあ、あそこから先がこの森の深部ってことか……」



「キッキイィ!」



「あっ! 入ってっちゃった」



 木の上を飛び回っていた魔物はそのまま結界の中へ入っていってしまった。



「え、これ、中に……あ、入れる」



 どうやらこちらから入ることは可能みたいだ。



「でも、完全に中に入って出れなくなったらどうしよう……いや、そんなことよりすーくんを取り戻さないと」



 いざとなったら助けが来るまでここの魔物でも食べながら待っていよう。

魔石が食べられたんだし、魔石獣だって食えるはず。多分。



「よし……いくぞっ! えいっ!」



 こうして俺は修練の森の深部へと足を進めるのであった。



「……あ、人間は結界関係ないみたい。普通に戻れるや」



 どうやら修練の森サバイバル生活はしなくてよさそうだ。



 __ __



「さて、どこいったかなアイツ」



 結界の中に入るのを躊躇していたせいですーくんを盗んだ魔物を見失ってしまった。



「俺も木の上に登って進もうかな」



 でもあのサルみたいに細い枝を掴んでいったら流石に枝が折れちゃうから、普通に走っていった方が良いかも。



「すーくんどこだ~聞こえてたら返事してくれ~」



 (はーい」



「あ、返事来た」



 (あなたの脳内に直接語りかけてる系魔道具、携帯型能力鑑定器のすーくんです)



 そういやそうか、すーくんは風が語りかけるタイプのやつだった。



「それですーくん、今どこにいるの?」



 (そうですねえ、なんか森の奥の洞穴みたいな所にいるみたいです。魔物もたくさんいます)



「大丈夫? 壊されたりしてない?」



 (今のところは。私を紋所みたいに構えると相手が土下座する遊びをしています」



 水戸黄門かな?



「でもどうしよう。俺の周りには洞窟みたいのは見当たらないんだけど……」



 (それでは、私の魔力オーラをシュータ様と繋げますので、それを目印に来てください)



「えっすーくんそんなことできるんだ!?」



 魔力オーラとは、魔力を持つ人間が自然に出しているオーラ、というか光のようなものらしい。

キャンディみたいな一部の魔物のみが感知できるそうだ。



「でも俺、魔力オーラなんて見えないよ」



 (大丈夫です、シュータ様でも魔力オーラが見えるようになる方法があります)



「それほんと!? やりかた教えてよ!」



 (はい、まずシュータ様には……魔人化していただきます)



「……え゛っ」



 魔人化……魔人化かあ……あんまし良い記憶がないんだよなあ……



「あのお、魔人化しなくても魔力オーラが見えるようになる方法はあったりなかったり……」



 (ないです)



「ないです了解」



 ……魔人化してる間、誰にも見つかりませんように。

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