第127話 修練の森
「はい、それじゃあ最後に4番のグループ~! 行ってらっしゃい!」
「いってきまーす!」
寮生オリエンテーションのスタンプラリー、他のグループが森に入っていくのを待って、最後に俺たちのグループの番がやってきた。
「4番グループってのもなんか味気ないネ。チーム名考えるネ」
「そうですねえ。それではわたくしたちの頭文字を取って“シサツ組”はいかがでしょう」
「シサツ……視察?」
「刺殺組とは、だいぶ物騒ネ」
「あ、刺して殺すほう?」
「やっぱりやめましょうか」
暗殺組織みたいでちょっとかっこよかったんだけど。
「じゃあ“ツイルと愉快な仲間たち”にするネ」
「わたくしは愉快ではありません。シュータさんはなにか案がありますでしょうか?」
「えっ? あっわたくしの案は……」
「シュータ、またつられて口調が変になってるネ」
「わたくしの口調は変ではありません」
「はいはい、仲良くね。俺の案は、そうだなあ……そういえばこの前食べた……」
……。
…………。
「はい、スタンプ1個目だね」
チェックポイントが書かれた地図を見ながらしばらく森を散策すると、1つ目のチェックポイントを発見した。
「えっと、君たちはグループ4だから……」
「“チームフェザードーナツ”です」
「えっなに? チーム名?」
「はい、チームフェザードーナツです」
「そ、そうなんだ……ちなみに名前の由来は?」
「特にないネ」
「消去法ですかね」
「フェザードーナツは美味しいから」
「そっか。はい、スタンプ押したよ」
ポンッ、とチェックシートに一つ目のスタンプが押される。
「残りも頑張ってね」
「ありがとうございます!」
…………。
「ねえ、やっぱチームフェザードーナツってのやめない? なんか恥ずかしくなってきた」
「シュータが考えたネ」
「良いチーム名だと思いますけど」
「うう……」
その後に回ったチェックポイントでも先輩たちにチームフェザードーナツを微妙にいじられた。
あんまり思い付きで言うもんじゃないね。でもフェザードーナツは本当に美味しいんだよ。
「残りはあと3か所ですね。さすがわたくしたち、チームフェザードーナツです」
「ここまで順調ネ。さすがチームフェザードーナツネ」
「俺は恥ずかしくて消えそうだよ。穴があったら入りたい気分だね」
「ドーナツの?」
「シュータ、上手いネ」
そんな感じでにこやかに(?)修練の森を散策するチームフェザードーナツ。
森の中は結界が設置してあるからか、魔獣の森や大魔樹の森にいるときのような魔物の気配をあんまり感じない。
「魔石獣とやらは全然出てこないね」
「この辺りに住んでいる弱い魔石獣は隠れているのかもしれませんね」
「力試しができなくて残念ネ」
そんなことを話しているときだった。
ガサガサッ
「……ん?」
ガサガサガサッ!
「キィ!」
「木の上になにかいます!」
「魔物ネ!?」
「あれは! ……サル?」
サテンが指さした木の上にサルのような魔物がいた。
サルはきゅーたろうくらいの大きさでかなり小さいんだけど、尻尾がかなり長くて、その尻尾の先には魔石のようなものが付いている。あれが魔石獣だろうか。
「キィ~!」
「尻尾で枝にぶら下がってるね」
「ずいぶんと器用な魔物ですね」
尻尾の先の魔石を使って木の枝にぶら下がっている魔物もこちらに気付いていて、お互い様子を伺う感じになっていた。
「襲ってくる様子は今のところ感じないネ」
「とりあえず、なんていう魔物か鑑定してみようかな」
そう思ってカバンからすーくんを取り出した瞬間だった。
「キキィッ!」
「……ん? うわあっ!?」
尻尾をバネのように使ってこちらに飛んできた魔物は両手ですーくんを掴み、そのまま森の奥へ走り去っていった。
「……えっ?」
「えっ? ではありませんよ!」
「シュータ、何か盗られたネ」
「あーっ!! すーくん!!」
あまりに急な展開に一瞬ボーっとしてしまった。
「キィーッキッキ!」
「おい! すーくんかえせ~!!」
「あっちょっとシュータさん!」
「ちょっと待つネ……って、シュータも魔物もめっちゃ足はやいネ!?」
ガサガサッ!
「じゃじゃ~ん! 邪魔者上級生登場! オレはシャクドウ寮の」
「「…………」」
「……あれ、なに? なんかあった?」
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