第126話 三人一組
「それではさっそく新入生のみなさんは森にレッツゴー! と言いたいところですが、まずは3人1組のグループになってもらいます」
「3人1組か……」
「……シュータ、一緒に」
「寮生同士の親交を深める為、グループはくじ引きでーす。ここから引いてくださーい」
「…………」
「だ、大丈夫だよ。くじで同じグループになれるかもだし」
というわけで、まずはオリエンテーションのグループを決めることに。
「えーと、俺は……4番! アクリは?」
「……2番」
「お、お互いがんばろうね」
「あ、オレ2番だわ……」
「……!!」
「ギロくん、アクリをよろしくね」
「お、おう……?」
今回のオリエンテーションでたまに出るアクリの人見知りも少しは良くなるといいんだけど。
そうだ! 今度の休みにアクリを連れて教会まで遊びに行こうかな?
シルクもどっちかっていうと引っ込み思案だし、似た者同士仲良くなれるかもしれない……あれっ、なんか急に寒気が……風邪かな。
「ウチも4番ネ。シュータ、よろしくネ!」
「あっえーと……同じクラスのツイルさん!」
アクリと同じシロガネ寮のチャイナっぽい人だ。こっちはアクリと違って気さくな感じだな。
「ツイルでいいネ! シュータはアクリと仲良いネ?」
「うん、入学試験の時に一緒だったんだ」
「ウチも早く仲良くなりたいネ」
「同じ寮なんだし、すぐ仲良くなれるよ」
「でもなんか今アクリに睨まれてる気がするネ」
「えっ?」
ツイルに言われて2番グループを見ると、ギロくんの陰に隠れてこちらを伺うアクリを発見した。うーん、相変わらずの前髪で表情は分からないけど……
「気のせいじゃない?」
「シュータ、にぶちんネ」
「にぶ……?」
「あら、あなた方が同じチーム? よろしくお願いいたします」
「あ、よ、よろしくおねがいいたしますわ」
「シュータ、なんか変な喋り方になってるネ」
なんか貴族っぽい話し方の人だったからつい釣られてしまった。
「カナリア寮のサテンです。シュータさんとツイルさんですよね」
「えっなんで俺たちの名前を!?」
「さっき自己紹介やったネ」
「そうだった」
「うふふ、面白い方たちが同じチームで良かったです」
「ウチもそう思うネ」
「俺も愉快な二人がチームで良かった」
…………。
「シュータはデリカシーがないネ」
「わたくしはおしとやかな一般女生徒ですけども」
「いやなんでさ」
__ __
そんな感じで、寮の1年生達はくじ引きで3人組を作り、4つのグループに分かれて順番に森の中へ入っていく。
俺たちは最後の4番チームなので、出発までしばらく3人で話をしていた。
「そういえばシュータさんには既に使い魔がいると聞いたのですが、本当ですか?」
「うん。キャンディって言うんだ」
やはりヴァンパイアは珍しかったのか、使い魔登録に参加していた生徒達からキャンディの事が噂になり、一目見たい、とクラスまで押しかけてきた生徒もいた。
「でも学園で見かけないネ」
「いつもは死霊の館っていうダンジョンにいるからね」
他の生徒の使い魔は学園の敷地内で暮らしている子が多いけど、キャンディには住処があるし、面倒を見ている眷属の子たちもいるから学園に来ることはほとんどない。
気が向いたときに俺の部屋に勝手に来たりするけど。クロガネ寮の管理人室、つまり茶々丸くんの部屋にブラック・ラクーンの里と繋がっている樂狗亭の入り口があって、キャンディは何故かそこ経由でやってくるのだ。
「今度二人にも紹介するよ」
「ウチはそれより、あの子を紹介してほしいネ」
「あの子?」
「クロガネ寮の寮母の女の子ネ」
「ああ、茶々丸くんね」
男の子だけどね。
「そういえば、クロガネ寮とシロガネ寮の管理人さんは魔物だと聞きましたが、それは本当ですか?」
「うん。茶々丸くんはブラック・ラクーンっていう魔物だよ」
「ウチの双旦はホワイト・フォックスっていう種族ネ」
双旦さんは初日に会ったとき以降、俺にはだいぶ優しくしてくれるようになった。やはり勘違いで毒を盛ってしまったことを気にしているみたいだ。
茶々丸くんとは相変わらずちょっとバチバチしてるらしいけど。
「お二人は、魔物と暮らしていて大丈夫なんですか?」
「まあ、普段は人に化けてるからあんまり気にならないネ。世話焼きの美人のお姉さんネ」
「そうだね、美人の……お兄さんだね」
「「……お兄さん?」」
茶々丸くんが男だと言ったらやっぱりめちゃめちゃビックリされた。これ会う人に毎回説明しなきゃいけないんかな。
「ん? どうしたのだシュータくん」
「茶々丸くん、今度一回短髪に……いや、なんか似合わなそうだからいいや」
「なんなのだ!?」
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