第125話 わくわくスタンプラリー



 そして月日は流れ、遂にオリエンテーション当日になった。いやまあ3日くらいしか流れてないけど。



「みなさん、よくぞ集まってくれました! 本日はお日柄も良く! 今年も無事に寮生交流オリエンテーションを開催出来て何よりですね!」



「何やるんだろう。ワクワクするね」



「……眠い」



「右に同じ……」



「申し遅れました、私は3年ザルティス組のアサ! シロガネ寮の寮長を任されています! みなさん朝ごはんはきちんと食べてきましたか?」



「はーい!」



「……朝は食欲ない」



「右に同じ……」



 隣でアクリとギロくんがフラフラしている。もう、ちゃんと朝ごはん食べてこないから。

俺は茶々丸くんが作ってくれた謎のデカい肉団子を食べてきたので元気いっぱいだ。先輩たちも『い、胃がもたれる……』とかわけわかんないこと言ってあんまり食べてなかったから、きっと今頃お腹空いてるかもしれないな。



「なんと今年はロクショウ寮、シャクドウ寮、シロガネ寮、クロガネ寮、そしてカナリア寮すべてに新入生が入ってくれました!」



 みんなの前に寮長をしている5人の上級生が立っていて、代表でシロガネ寮のアサ先輩が色々と説明をしてくれる。

ちなみにクロガネ寮の寮長はザジク先輩だ。あ、あくびしてる。



「それではまずは寮の新入生のみなさんに挨拶をしてもらおうと思います! こちらへどうぞ!」



 上級生たちにパチパチと拍手をされながら前へ出る寮の新入生たち。

今年の寮の新入生は全部で12人。ちなみに寮生全員で40人くらいいるらしい。



「1年ゲオルク組、ロクショウ寮のキルトで~す。よろしく~」



「ギロです……1年ザルティス組、シャクドウ寮所属」



 寮によって人数はバラバラで、ロクショウ寮やシャクドウ寮、カナリア寮は10人前後の寮生が暮らしているけど、シロガネ寮とクロガネ寮は寮自体も小さくて、今はシロガネ寮が6人、クロガネ寮が5人だ。



「カナリア寮所属、1年ゲオルク組のサテンです。本日はよろしくお願いいたします」



「1年ザルティス組、シロガネ寮のツイルっていうネ。よろしくネ。こっちは同じくシロガネ寮のアクリだネ」



「……1年ザルティス組、アクリです。よろしく」



「シロガネ寮ってアクリだけじゃなかったんだ」


 

 同じクラスのツイルさん。今まで喋ったりしたことないけど、なんか話し方とか面白いな。ニーハオって感じ。



「……次、シュータ」



「あっそうか。えーと、1年ザルティス組、クロガネ寮のシュータです! よろしくお願いします!」



「ひゅ~! シュータく~ん!」



「クレイジーパンプキン食べて~!」



「嫌だよ」



 クロガネ寮の先輩たちがヤジを飛ばしてくる。クレイジーパンプキンはそんな生半可な覚悟で食べていい物じゃないんだよ。



「はい、新入生のみなさんありがとうございました! それではこれからオリエンテーションの説明を始めます!」



「よっアサちゃ~ん!」



「こっち見て~!」



「ちょっとクロガネ寮! 静かにしてください!」



 先輩たちはアサ先輩にも絡んでいた。そういうことしてるからキツく当たられるんだよ……



「新入生のみなさんには3人1組に分かれて『修練の森』に入ってもらいます。 森の中にいくつかのチェックポイントがありますので、そこで到着した印としてスタンプを押してきてください」



 どうやら修練の森でチームに分かれてスタンプラリー的なことをやるみたいだ。コル先生が言ってたオリエンテーリングっていうのはこれの事かあ。



「え、でも森には魔石獣っていう魔物が出るって……」



「強力な魔物がいる森の深部には結界を設置しています。今回の行動範囲内で出現する魔物は学園に合格した皆さんなら倒せるレベルでしょう。まあ、代わりにこちらにいる先輩たちが邪魔をしてくるかもしれませんが」



「おう、邪魔するぜえ!」



「わん!」



「わおーん!」



「ばうばう!」



 ザジク先輩の後ろでシロが吠える。いやシロは普通に森の魔物よりヤバいんじゃ……



「チェックポイントは全部で8個! すべて集めなくても良いですが、最速でコンプリートすることが出来たチームにはプレゼントがあります!」



「プレゼント!」



 なんだろう、そう言われちゃうと優勝を目指したくなっちゃうね。



「森から戻ってきたグループはここに集合です! 各寮の寮母さんが美味しいごはんを作って待ってくれていますよ!」



「みなはん、怪我には十分気を付けておはようおかえりやす」



「待ってるのだ!」



「……なあ、あの寮母さんめっちゃ可愛くねえか?」



「シロガネとクロガネに新しく来た人らしいぜ」



「くっそ~羨ましいな……ウチはおばちゃんだしなあ」



「ちょっと! シャクドウのガキども! 全部聞こえてるよ!」



「ゲェッ!?」



「おばちゃんごめーん!」



 シャクドウ寮の人たちがパンチパーマのおばちゃんに怒られている。



「シャクドウ寮はごはんがとても美味しいのよ」



「おばちゃんは料理上手なのだ」



「なんだ、じゃあ1番良いじゃん」



 オリエンテーションが終わったらおばちゃんの料理、とっても楽しみだ!



「シュータくん、わっちの料理は?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る