第124話 寮生交流オリエンテーション



 学園が始まって数日が経った。今は1年生が全員受ける基礎の授業を中心に教わっていて、しばらくすると選択授業や実習が始まるらしい。



「学園寮生交流オリエンテーション?」



 授業が終わってアクリ、ギロくんの3人で帰る途中、学園の掲示板に貼られていたオリエンテーションのお知らせを発見した。



「寮の1年生は全員参加だって。なにやるんだろう、楽しみだね!」



「今週末か……めんどくせえな。風邪ひくか」



「……同じく」



「ええ……」



 二人はインドア派みたいだ。俺はねえ、やっぱ外が好きだよね。家の中に食べ物は無いけど、外に出ればいっぱい生えてるから。



「集合場所……修練の森?」



 えっどこ? 魔獣の森じゃなくて?



「学園の西にあるダンジョンだ……」



「……ロクショウ寮と、シャクドウ寮の奥にある森のこと」



「ああ、なんか前に見かけたかも。立ち入り禁止になってるとこ?」



 王立学園は周りを高い壁に囲まれていて、王都の中に建っているけど別の国というか、街のような感じがするちょっと不思議な所だ。

そんな学園の西には森が広がっていて、森の手前には前に見かけた『ロクショウ寮』と、ギロくんがいる『シャクドウ寮』という学生寮が建っている。



「あの森は魔物が出るらしいからな……今回のオリエンテーションや、実習で使用するとき以外は立ち入り禁止だぜ」



「えっ王都の中なのに魔物が出るの!?」



「そうだねえ、あそこには人工の魔石獣が生息しているのでね」



「うわっびっくりした! えっ誰……? あっ!」



「……魔石鑑定の、先生」



「どうもお久しぶりです」



「誰だ……?」



 掲示板の前で修練の森について話していたら、実技試験の時に魔石の確認やにょんきちについて調べてくれた先生と再会した。

ギロくんは魔石採取の実技試験じゃなかったから知らないみたい。



「僕はコル。前にも言ったと思うけど、学園では魔石学を教えているよ。興味があったら是非とも僕の研究室に」



「あ、はい」



 コル先生っていうのか。絶対お話長くなるタイプの先生だよね。社会の先生の話とか聞いてると眠くなっちゃうタイプだから、魔石学はやめとこうかな……



「それで、魔石獣ってのはなんなんですか?」



「ああ、あれは僕がまだ学園生だった頃の話なんだけどね……」



「あっ話長くなりそう」



 コル先生の話によると、数十年前、コル先生がまだ学生だった時代の魔石学の先生と魔物学の先生が協力して、魔石を使って人工の魔物、“魔石獣”を作り出すことに成功したらしい。

元は生徒たちの摸擬戦闘用に開発していて、最初の実験体は外から魔素を吸収できずに死んでしまうようになっていたんだけど、一部の魔石獣が突然変異を起こし、魔石洞窟にいた魔物のように、自力で魔素を吸収出来るようになってしまったのだ。



「そうして、自分たちで生きられるようになった魔石獣が学園の西にあった森に棲みついてしまい、あそこは学園内にあるただの森から『修練の森』という森林型ダンジョンになってしまったのさ」



「森の魔物は外に出てきたりはしないんですか?」



「そうだね、基本的にダンジョンに生息する魔物というのは、その場所に適応しているからか、ダンジョンの外に出ることはほとんどないんだ。それに修練の森の周りには強力な魔物除けの結界も設置されてるから、こちらからアクションを起こさない限りは大丈夫だよ」



「なるほどなあ。あれ、でもその森でオリエンテーションをするんですよね? 森の中に入るってこと?」



「ああ、寮生のオリエンテーリングか。たしかにアレは毎年森でやってたね」



「……大丈夫なの?」



「あっはっは。どうだろう。あの森の生態系ができて数十年が経ってるからねえ。物凄い強い魔石獣もいるかも」



 オリエンテーション、気を付けて楽しんでね。と言ってコル先生は去っていった。



「……やっぱ私、その日は仮病で休む」



「オレも……」



 オリエンテーション、楽しみだ!

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