第121話 使い魔登録



「それじゃあみなさん、能力鑑定で現在のステータス状態を把握出来ましたね……後でその結果を見ながら選択授業と実習を選んでもらいますから、無くさないようにしてくださいね……」



 クラス全員の鑑定が終わり、教室に戻って来る。



「二人は鑑定結果どうだった?」



「……秘密」



「言うわけねえだろ……」



「そういうもんなの?」



「戦闘実習とか闘技大会もあるんだぜ……」



「……私は出ないけど」



 一応、自分の鑑定結果を他人に話してもOKなんだけど、あんまり自分の結果を話してる人は見かけない。

使い魔登録したり、ステータス条件付きの選択授業とか取ったらなんとなく分かっちゃうけど、弱点とかもバレちゃう可能性があるから基本的には秘密にしているようだ。



「午後からは、既に従魔契約や使い魔契約をしている生徒の登録を行ないますね……それ以外の生徒は本日はもう終わりです。お疲れさまでした……」



「よーしお昼だ! じゃあこれから学食に」



「あ、俺使い魔登録ないから帰るわ……」



「……私も。また明日」



「あ、うん……また明日……」



 …………。



 な、なんで二人とも学食に興味がないんだ? ギロくんなんてデザート1個無料で食えるのに……謎だな。



 ……。



 …………。



「な、なんだこのドーナツ! 美味すぎる……!」



 学食で本日のデザートというところに書かれていた『フェザードーナツ』というものを、無料バッジをチラ見せしつつ貰って食べたんだけど、これがめちゃめちゃ美味しかった。

鳥の翼のような形をしている揚げドーナツで、中に甘酸っぱい木の実をすりつぶしたやつと生クリームみたいなのが入っている。



「なんとかして茶々丸くんに作れるようになってもらいたいな。いや茶々丸くんには難しいか……よし、シルクに頼もう。おばちゃんからレシピ貰えないかな」



 ちなみにメインのごはんは、トンホーンのひき肉を丸めて焼いたやつをパンで挟んだハンバーガーみたいな料理だった。これもとっても美味しかった。



「デミグラくん、元気にしてるかな」



 ハンバーグっぽい料理を食べるとどうにも彼を思い出してしまうね。王立学園の試験は途中で止めて不合格になっちゃったけど、風のウワサでどっかの貴族学校に裏口入学したって話を聞いてはいるんだけど。

裏口入学ってなんだろう。毎回裏門から登校しないといけないのかな。



「あれっ? 塩バターフェザードーナツっていうのもあるじゃん! おばちゃーん! それちょうだい! お金払うから!」



 デミグラくんのことは一瞬で忘れた。



 __ __



「はい、それじゃあ次の人~って、おや君は……」



「あっピヨちゃん先生」



「いやピヨちゃんは私の名前じゃなくて使い魔だけどね」



 使い魔登録をするための会場に向かったら、実技試験の時に試験官をしていた先生と再会した。

帰りの馬車で襲われた時に巨大なトルネードチキンを召還していたし、学園では使い魔関係の授業を教えているのかもしれない。



「そういえば自己紹介をしてなかったね。私はアルマニ。魔物学や従魔・使い魔実習なんかを担当しているよ。シュータ君、入学おめでとう」



「ありがとうございます!」



「それで、ここに来たってことはシュータ君も使い魔登録をするんだね」



「はい、そうなんですけど……」



「なにか気になるところがあるのかい?」



「キャンディって、登録できます?」



 キャンディみたいなヴァンパイアや、フロランタみたいな竜人族のような、過去に人間族と争った『魔人族』の血を引いている人型の魔物はとても珍しく、存在を知らない人も多い。

この間の襲撃でキャンディを召還したときは先生が誤魔化してくれて(先生方にはバレたけど)、生徒たちには『なんかすごい魔法使いがいた』くらいに思われてたらしいんだけど、ここで召還したら完全にバレちゃうよな……。



「実際、私が学園で教師を始めてから人型の魔物を使い魔にしている生徒は見たことがないね。魔法で人に変化できる魔物は数匹いた気がするけど、それでもかなり珍しい。そういえば今年から寮母さんになってる魔物がいたっけ」



 魔物が寮母さんなんて初めてだね、と笑うアルマニ先生。やっぱり茶々丸くんや双旦さんは先生から見ても珍しいみたいだ。



「じゃあ、キャンディ……ヴァンパイアはやっぱまずいですかね」



「いいんじゃない? 登録しちゃいなよ。手続きするの私だし、許可出すよ」



「ええ……フットワーク軽」



 そんなんで大丈夫なんだ。



「一応、死霊の館のヴァンパイアは有名だし、知ってる人もいるからね。まあ都市伝説的な魔物を紹介する雑誌とかにもよく載ってたし」



「そんな本があるんだ……」



「変な偏見を持たれないように、私も授業で人型の魔物について今までよりも詳しく教えていこうと思う。もしよかったら、キャンディさんにはその協力をしてもらいたいんだ」



「先生……分かりました! それじゃあ使い魔登録、お願いします!」



「うん。それじゃあこの後の流れだけど、大型の魔物でも大丈夫なように屋外の広場に移動して、そこに使い魔を連れてくるか、魔法で召還してもらって」



「はい」



「使い魔が他人に危害を加えないか、主の命令をちゃんと聞くか、良好な関係を保てているか……つまり、主に懐いているか、みたいな所をみていくね」



「はい。……主に、懐いてるか?」



「従魔契約の場合は一方的に魔物に命令を出すだけだけど、使い魔はお互いに信頼関係を築いているはずだからね。一定時間、使い魔の好きにさせて、どんな行動を取るか調べるんだ」



「な、なるほど」



 キャンディ、大丈夫かな……

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