第118話 入学式



「シュータくん、おはようなのだ! いよいよ今日から学校なのだ!」



「うーん……おはよう茶々丸くん……学校……?」



「朝ごはん出来てるのだ! はやくしないと入学式に遅れちゃうのだ」



「朝ごはん!」



 おはようございます。シュータです。色々あった夏季が終わって秋季を迎え、入学前に始めた寮生活にも慣れてきました。

茶々丸くんの料理は相変わらずでっかい魔物の丸焼きばっかりですが、ちょっとずつ味付けが良くなってきている気がします……たぶん。

今日はいよいよ学園の入学式。どんな授業があるのかとっても楽しみだ。



「小学校に行ってる時は給食くらいしか楽しみが無かったけど、今思うともっと色々楽しんでおけば良かったなあ」



 家で全然食べられなかったから、お腹が空いて勉強に集中できなかったんだよね。体育とかもきつかったなあ。



「なあ寮母ちゃんよお。朝からトンホーンの丸焼きはちとキツイぜ……」



「しっかり食べないと力が出ないのだ。シュータくんを見習うのだ」



「もぐもぐもぐ。うん、美味しい!」



「悪食のブラックボーンと一緒にされたら敵わねえよ」



「たまにはサラダとか出してくれよ」



「野菜は美味しくないしペラペラだから栄養ないのだ」



「あるよ」



 __ __



「それでは第992回、王立冒険者育成学園の入学式を始めさせていただきます……」



 朝ごはんを食べて茶々丸くんに送り出された俺は、学園の中にある『大講堂』という場所で入学式に参加していた。

今日は入学式の後、1年の教室に行って他の生徒と顔合わせをして半日でおしまい。

小学校の始業式みたいだ。



「学年ごとに集まってないから、誰が新入生か分かんないな」



「まあ、この後クラスに行くんだから大丈夫っしょ」



 入学式には全校生徒が参加しているらしいんだけど、クラスごとに並んだりしていなくて、それぞれが好きな所で先生の話を聞いている。

人数もたくさんいるので、ごちゃごちゃしていて分かりずらい。

クロガネ寮のみんなと来といて良かった。一人だったら心細いからね。



「続きまして上級生代表の挨拶です。3年ザルティス組、アサさん」



「はい」



 あ、シロガネ寮にいた女の人だ。挨拶をするってことは、上級生の中で成績が優秀なんだろう。たしかに委員長っぽかったし。



「……これから王立学園で過ごす青春の1ページを、仲間たち、そして私たちとともに歩んでいきましょう。以上を持ちまして、歓迎の挨拶とさせていただきます」



 パチパチパチパチ。



「アサのやつ、相変わらず固い挨拶だぜ」



「ザジク先輩、アサさんのこと知ってるんだ」



「隣の寮だしな。それに、ウチは1学年2クラスしかねえし」



 学園の生徒は1年から3年までで約200人。1学年2クラスで、1年生が1クラスあたり40人、2年生が約35人、3年生が約25人。

だんだん人数が少なくなってるのは、学校の授業や実習が厳しくて、毎年途中で辞めちゃう生徒がいるらしい。

俺も冒険者になるために卒業までがんばらないとな。



「続きまして、新入生の表彰に移ります。まずは特待生合格者から……ブラキ君、スタード君、ツイルさん……」



「あ、そういえばこれ……」



「なんだシュータ、表彰に呼ばれてんのか?」



「らしいんだよね。なんか学園長に言われた」



「筆記試験の最優秀者……サテンさん」



「はい」



 近くにいたポニーテールの女の子が壇上に上がっていく。あの子が筆記1位か……俺は多分最下位だけど。合格点いってないし。



「続いて実技試験の最優秀者、まずは魔法実技試験参加者から……こちら同率最優秀で、キルトさん、ギロ君」



「はあい」



「はい……」



 もう一つの実技は魔法を使った試験だったのか。何をやったんだろう、気になるな。



「最後に、採掘実技試験参加者……シュータ君」



「はい!」



 呼ばれた生徒たちと一緒に壇上に上がって、学園長からバッジのようなものを受け取る。



「試験優秀者のみなにはデザート1品無料になるバッジを進呈じゃ」



「ありがとうございます!」



「スイーツ無料は嬉しいわねえ」



「甘いもんか……」



「いらないなら俺にちょーだい」



「いやあげねえけど……」



 隣にいたギロくんが要らなそうにしてたから貰おうとしたけどダメだった。

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