第115話 クロガネ寮のお隣さん
「そういえば、隣にもうひとつ寮があるんだね」
茶々丸くんの作ってくれた鳥の丸焼きを食べつつ、寮のみんなに気になっていたことを聞いてみる。
ここに来る途中、隣の敷地に大きな白い鳥居のようなものが設置された建物を見かけたのだ。食堂の窓からもちょっと見えるくらい大きい。
クロガネ寮がお寺みたいなら、あっちは神社みたいだった。
「そういえばわっちも気になってたのだ」
「茶々丸くんも知らなかったの?」
「わっちも来たばっかりだし、基本的にはクロガネ寮から出ないから他の所はあんまりなのだ」
たしかに、寮の管理人さんならそれぞれの寮の外に行くことってあんまりないのかもしれない。
茶々丸くんの話によると、秋になって学園が始まったら、寮で出す食材なども届けてもらえるらしい。
今は学園の始業前のお休み期間なので、茶々丸くんが楽狗亭経由で里に行って獲ってきた魔物や、寮に残っている人が自主的に持ち寄った食材を使っているとのことだ。
「隣にあるのは“シロガネ寮”だ」
「シロガネ寮?」
「ああ、向こうは女子寮だな。昔はクロガネ寮もシロガネ寮も男女共用の寮だったんだが、色々あってクロガネが男子寮、シロガネが女子寮ってことになっているらしい」
ザジク先輩はそう言うと、窓越しにシロガネ寮の大きな鳥居を見つめる。
でっかくてかっこいいな~。お参りとか行っちゃだめかな。
「たしかに、こっちの寮はわっち含めて男しかいないのだ」
「「「…………」」」
「ん? どうしたのだみんな?」
「いやなんでも」
「そうだよな、男しかいねえもんな」
まあでも、男女で分かれてるならトイレとかお風呂もわざわざ分けなくていいから生活するなら便利そうだな。
「ただその、シロガネ寮はなあ……」
「ああ、ちょっとな……」
「どうしたの? シロガネ寮になにかあるの?」
寮の先輩たちはみんな揃って微妙な表情を浮かべている。なにか問題があるのだろうか。
「クロガネとシロガネはなあ、あんまし寮生どうしの仲がよくねえんだ」
「良くないっていうか、俺たちが一方的に敵視されてるっていうか……」
「野蛮な男連中だと思われてんだよな」
「そうなんだ」
「中庭とかゴミ捨て場が共用エリアになってんだけどよ、鉢合わせるとゴミの出し方とかでめっちゃ文句言ってくるんだよな」
「魔物に荒らされるからゴミの上に魔物除けの布を被せとけーとか言われたよな」
「言われた言われた。魔物が来たら食材にできるからむしろラッキーなのにな」
うーん、多分シロガネ寮側の女の子たちの方が正しいこと言ってる気がするんだけど。でも魔物が食材にできるのは確かにラッキーだな。
「そういや向こうの寮母さんも新しい人に変わったらしいな」
「あーそんなこと聞いた気がするわ」
「あっそうだ! せっかくだしシュータと寮母ちゃん、これからシロガネ寮に挨拶でも行って来たらどうだ? 一応、お互いの寮に行くことは禁止されてないぜ」
「挨拶かあ」
たしかにスラムにいたときも、周りに暮らしてた人とよく話すようになってから困ったときに助けてくれたりしたっけ。
「これからお世話になるかもしれないのだ。ちょっと行ってくるのだ」
「そうだね。じゃあシロガネ寮にレッツゴー!」
というわけで、俺と茶々丸くんは隣の女子寮、シロガネ寮に潜入することになったのだ。いや潜入じゃなくて普通に挨拶にいくだけなんだけど。
…………。
「シュータは結構女子ウケ良さそうだし、大丈夫だよな」
「ああ、上級生に可愛がられるタイプではある」
「寮母ちゃんは……寮母ちゃんだしな」
「二人とも無事に帰って来れるといいんだが」
「いや焚きつけといて何言ってんだよ」
「だってよお、シロガネの女子だぜ? 俺たちが言えた事じゃねえが、基本脳筋だぞ」
「“ロクショウの魔女”のほうがまだマシだよな」
「シュータだってこの学園に受かったんだ。いざとなりゃあそれなりに戦えるだろ」
「……まあなんにせよ、これで少しは態度が丸くなってくれると良いんだが」
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