第114話 茶々丸くんの漢飯



「みんな~! ごはんの時間なのだ~!」



 茶々丸くんが声をかけると、数人の男子生徒がぞろぞろと部屋から出て食堂に集まってくる。



「腹減ったあ~」



「さて、今日の料理は……おっ肉だ!」



「当たりだな」



「まあ肉しか出たことないけどな」



 学園自体は秋まで休みなので、寮から実家に帰省していて、まだ戻って来てない生徒なんかもいるらしい。



「ごはんの前に一人紹介するのだ。今日からクロガネ寮の仲間になったシュータくんなのだ」



「シュータです。よろしくお願いします!」



「おう、よろしく~」



「よろしくな!」



「……あれっ? もしかしてあのシュータ・ブラックボーンか?」



「俺のこと知ってる……んですか?」



「敬語なんか使わなくて良いぜ。ここの連中は学年も年もごっちゃだからな」



「お前も今日からクロガネファミリーの一員だからな。上下関係は無しだ」



「なんか海外のマフィアみたいだね」



 王立学園は3年制の育成学校で、12~14才の年に入学することができるため、下は12、上は16才と幅広い。

だから年とか上級生とか、そういうのはあまり気にしない感じになっているとのことだった。



「シュータっていえばあれか、去年のクレパン大食い大会で優勝したっていう……」



「しかも前代未聞の完食優勝だったんだぜ!」



「マジかよ! サインください」



「ええ……」



 どうやらクレイジーパンプキン大会のお陰で一部生徒から有名になっているらしい。あの大会、そんなに知名度あったんだ。



「秋になって寮のみんなが揃ったら歓迎パーティーをするのだ! ってかわっちも来たばっかりだからまだ全員と会ったことないのだ」



「じゃあ茶々丸くんも歓迎してもらわなきゃだね」



「とりあえず今日のところは普通のごはんなのだ」



 __ __



「それじゃあみんな、いただきまーす! なのだ!」



「「「いただきま~す!」」」



 というわけで、テーブルの上には茶々丸くんが作った料理が所狭しと並んでいるわけなんだけど……



「と、鳥の丸焼き!?」



 でっかい鳥の丸焼きがドンとテーブルの上を埋め尽くすように乗っている。所狭しっていうか、まさかの1品。



「漢の丸焼き料理なのだ!」



「まあいつものやつだな」



 いつものやつなんだ。まあなんというか、茶々丸くんらしいというか、ブラック・ラクーンの里の住民っぽい料理ではある。



「トロール・チキンっていう魔物の塩焼きなのだ。里の罠にかかってたのを持ってきたのだ」



「あ~、前に作ったあの罠か」



 熊じゃなくて鳥も引っかかるんだ。電線に止まるスズメみたいな感じ?



「もぐもぐ……うん、おいしい!」



「素材の味が生かされてるな」



「まあ大体いつも素材の味だけどな」



「前のおばちゃんの煮込み料理が懐かしいぜ」



「あ、そういえば俺、今日お弁当があるんだけど一緒に食べてもいい?」



「どうぞなのだ。もしかしてシルクちゃんの手作り弁当なのだ?」



「うん」



 カバンからシルクに貰った木箱を取り出す。中には美味しそうなサンドイッチがぎっしり詰まっていた。



「寮母ちゃん、シルクって誰だ?」



「もしかして新人君のコレか?」



「コレってなに?」



「シルクちゃんは下層区の教会にいるシスターで、わっちとシュータくんの友達なのだ」



 もぐもぐ……お、サンドイッチめっちゃ美味い。やっぱ野菜も入ってる方が良いな。

今度茶々丸くんに野菜料理も作ってもらおう。リクエストしないと一生肉料理だけになりそうだ。



「おいシュータ、それ俺にもひとつくれよ」



「いいよ。はい、あーん」



「あー……ってなんでだよ!」



「そういや寮母ちゃんって魔物なんだよな」



「もぐもぐ……そうなのだ」



 茶々丸くんが人に変化できる魔物だということはみんな知っているらしい。

意外とみんな普通に受け入れててびっくりだ。



「しかも男なんだよね」



「そうなのだ。わっちは男の中の漢なのだ」



「いやいやそれは嘘……え? マジで男なの?」



「そこんとこどうなんだシュータ」



「茶々丸くんはマジで魔物だし男だよ」



「証拠は?」



「一緒にお風呂入った」



「マジかよ。羨ましいなオイ」



「羨ましいってなんだよお前」



「もぐもぐ……なんの話してるのだ?」



「新しい寮母さんと仲良くしたいな~って話だ」



「茶々丸くん、お風呂は一人で入った方がいいよ」



「シュータくんと入るから大丈夫なのだ」



「おいシュータ」



「新人くんさあ」



「全然大丈夫じゃないよ。俺が」



 寮生活、楽しく(?)やっていけそうで良かった。

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