第110話 結果発表
「試験結果をお伝えするので、王立学園までお越しください……?」
王立学園の入学試験が終わり、しばらく経ったある日のこと。死霊の館でリアル肝試しを楽しんでいたところ、またもや折り鶴のようなものが1枚、パタパタと俺の元へ飛んできた。
「なんじゃ、結果なんぞこの文に書いておけば良かろうに」
「うーん、なにか本人に直接話さなきゃいけないことがあるのかな」
受験とか初めて受けたから、どういう感じなのか分かんないんだよな。高校や大学受験が大変そうだっていうのはニュースでよくやってた。
電車とかが遅れて試験時間に間に合わないと警察が白バイで会場まで送ってくれるらしい。
「シュータ、学校行くのか?」
「受かったらね」
「いいなー、俺たちも学校行ってみたいぜェ」
死霊の館にいるキャンディの眷属のヴァンパイア達は、元は俺と同じ王都の孤児だったから、学校に通ったりした経験もないのだろう。
「ここでキャンディから色々教わってるんでしょ? それも学校みたいなものだよ」
「ふーん。でも先生って大人がやるんだろ? キャンディ様は子供だしな~いでっ」
「拙者は立派な大人じゃ。そこらの教師よりもよっぽど知識を持っとるわい」
ゴン! とゲンコツをくらった男の子が頭を押さえて悶絶する。
「せ、先生が暴力は良くないと思うな……ご時世的に」
「教育的指導じゃ、教育的指導。愛じゃよ」
「そんな愛ならわたしはいらない。それよりシュータの血が欲しい」
「この子はいつも俺の血を狙ってくるね」
「拙者の教育の賜物じゃ」
廃校にした方が良いかもしれない。
__ __
「やあ、よく来たのうシュータくん」
「あ、どうもお久しぶりです……」
死霊の館へ行った翌日、試験結果を教えてもらう為に学園へやってきた俺は、以前、面接を行なった部屋に通され、そこには面接の時の試験官の先生二人が待っていた。
「シュータさん、それでは早速ですが、試験結果をお伝えします。シュータさんの今回の合否判定ですが……保留です」
「は、はい……えっ? 保留?」
合格でも不合格でもなくて、保留?
「そ、それってどういうことですか?」
「はい、まず先に実技試験の結果についてですが、こちら……合格ライン、それもA判定です」
「A判定! やったあ!」
やっぱあの巨大ダンゴムシの魔石が良かったのかな? それとも……
「続いて筆記試験ですが……こちらD判定、不合格ラインです」
「え……」
あ、あれ……? 正直筆記試験はかなり自信あったんだけど……
「そのですね、普通に点数が足りないだけなら不合格の通知を出して、今年は諦めてもらうだけなのですが、シュータさんの場合、正解が分かっているのにあえてひねった解答を書いているように見受けられまして」
「ひねった解答……一応参考書とかも読んで勉強して、それと同じ問題が結構出たから、かなり正解してるかなーって思ってたんですけど……」
「ちなみに、その参考書とは?」
「ファットモンキーでも分かる! 王立学園入試問題集! です」
俺はカバンの中から参考書を取り出して女の人に渡す。
「あー……」
「これ、まだ残っとったんじゃのう」
「え、あの……?」
「その参考書はですね、内容がでたらめで全く参考にならないと一時期問題になりまして、発禁処分によって現存品は全て回収、焼却されていることになっています」
「よく手に入ったのう。どこで見つけたんじゃ?」
「いやっその、スラムで買っ……拾って……」
いっけね。闇市で買ったとか言ったらさすがにダメかな。
「なるほど、それでこの解答になったのですね。理解しました」
「はい……やっぱ、不合格、ですよね」
ちゃんとしたお店で参考書を探さなかった俺のミスだもんな。再試験なんかできないだろうし……はあ、また来年がんばるかあ。
「しかし、シュータさんは確かに筆記の成績は合格基準に届いていませんでしたが、実技試験の結果は素晴らしいものでした。A判定と言いましたが、それ以上の判定ランクを設けていないだけで、実際はS判定といっても良いでしょう」
S判定……そんなによかったんだ。
「実際、あなたの実技試験の成績は、魔石洞窟で試験を受けた受験生の中でダントツ1位となっております」
「そ、そうだったんですか!」
「ですので学園側としましても、是非ともシュータさんに入学してもらいたい、という気持ちがあります」
こ、これは希望が見えてきたぞ! A級特待生は無理だけど、学園に合格できるかも! あ、でも特待生狙いで来年受け直すのも……なんちゃって。
「そこでひとつ、シュータさんに提案があります」
「はい! なんでしょう?」
「シュータさんが手に入れたという魔石化した魔物、あの子を私たちに売っていただけませんか?」
「……え?」
にょんきちを……売る?
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