第107話 試験官の実力
「総長! やはりあの馬車、魔石洞窟帰りみたいっすよ!」
「当たりですね! 何故か護衛も出してこないみたいですし、今がチャンスです! さっそくツッコミましょう!」
「よおしアンタら、狙うは魔石と食料の荷馬車だ! アタシに付いてきな!」
「ウチら‡第801烏合戦闘飛行団・腐衛弐苦巣‡の恐ろしさ、見せてやりますぜ!」
スタ、スタ……
「ん? 総長、男が単騎で出てきましたぜ」
「あ、ちょっとイケメンっすね……」
「ぎゃはは! お前あんな優男がタイプかよお!」
「アンタらちょっと静かにしな! あの男……どこかで見たことが……」
「ファミリアゲイト」
パアアアアア……
「あっアイツ、使い魔を召還するつもりですぜ!」
「魔物一匹出したところでウチらの敵じゃないっすよ!」
「総長、このままツッコミましょう!」
「っ!! いや待て! 思い出したぞ、アイツは……!!」
ギイィ……バサッバサッ……!!
「クエックェ~!」
「伝説の暴空団、吐流寝ヱ怒の初代リーダーだ!!」
__ __
「うわっなんだあのトルネードチキン!?」
先生がファミリアゲイトを唱えると、俺が大魔樹の森で会ったヤツよりもひと回りもふた回りも大きいトルネードチキンが召還された。
トルネードチキンは元々人間でも丸呑みできてしまうくらい、かなり大型の魔物だ。
先生の使い魔は、それこそザルティス湖のヌシと戦えるサイズの巨大トルネードチキンだった。
「ピヨちゃん、よろしくね」
「クエッ」
「ピヨちゃんて」
全然ピヨちゃんってサイズじゃないけどな。
「……あ、空賊の人が逃げてく」
馬車の周囲を飛び回っていた空賊の女の人たちは、召還されたピヨちゃんを見るなり慌てて山の方に逃げていく。
「ピヨちゃん、捕まえてきて」
「クエ~」
ピヨちゃんが翼を羽ばたかせると、轟音と共に馬車の周りに竜巻が発生し、空賊たちは巻き込まれて空に舞い上がっていった。
こ、これは確かに、他の人たちが使い魔を召還してたら逆に巻き込まれて危ないかも……。
「クエッ! スウウウウウウ!!」
「うわ~!!」
「た、助けてくれ~!」
ピヨちゃんが大きく息を吸うと、竜巻がピヨちゃんの口に吸い込まれるように進路を変え、空賊たちを引き寄せ始める。
「スウウウウ……バクッ」
「うわっ食べちゃった!」
そのままバクバクと空賊たちを吸い込み、馬車の周りにはピヨちゃんと先生以外、誰もいなくなってしまった。
「ピヨちゃん、ご苦労様」
「クエッ」
「でも空賊は捕まえるから、全員出してね」
「クエ……」
もごもご……ぺいっ。
「ゲホッゴホッ!」
「し、死ぬかと思ったっす……」
吐き出され、満身創痍な様子の空賊たちに先生が近づいていく。
「腐衛弐苦巣のみなさん、こんにちは」
「ヒ、ヒィッ、と、吐流寝ヱ怒……っ!」
「おやおや、随分と懐かしい名前を……今はただの学園教師ですよ」
「コ、コイツが教師とか、今の王立学園はどうなってんだ……!!」
「さて、それでは皆さん、このまま私たちに拘束されるか、それとももう一度ピヨちゃんのお腹に戻るか、どっちがいいですか?」
…………。
「ま、魔物のエサは勘弁して下さい……」
どうやら空賊の人たちはおとなしく捕まったみたいだ。よかったよかった。
「それにしても、先生の使い魔すごいなあ」
あんなに巨大なトルネードチキンを使役できるなんて、先生は一体何者なんだろう。
「……トングリフ、出てこない」
「えっ? あー……」
トルネードチキンは大きな翼で満足そうにお腹をさすり、ファミリアゲイトで帰っていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます