第103話 魔石洞窟脱出作戦



「にょんきちー、朝だぞー起きろー」



「…………」



「腹減ってるだろ、魔石あるぞ」



「…………」



「おーいにょんきちーって重っ!!」



 えっなんでこの大きさでこんな重いんだ!? 昨日倒した巨大ダンゴムシより重いぞ!



「な、なんか初めて会ったときよりでっかくなってる気もするし……」



「…………」



 にょんきち、一体どうしちゃったんだろう。

だいぶ魔石を食い逃げされたけど、ダンゴムシの時は一緒に(?)戦ってくれたし、ちょっと心配だ。



「甲羅がかなり頑丈だから、他の魔物に襲われたりはしないと思うんだけど……」



 なんていう魔物なのかも気になるし、ちょっとダンジョンの外まで一緒に連れてって、すーくんに鑑定してもらおうかな?



「よいしょっ……とお!」



 肩に魔石を入れたカバンをかけて、にょんきちを背中に背負う。



「よーし、魔石洞窟脱出作戦、スタート!」



 __ __



「ふう、ふう……お、重い……」



 せっかく採った魔石をこれ以上減らしたくないので、朝ごはんは食べていない。そのせいか足に力が入らない。



「やっぱ朝ごはんは、しっかり食べた方がいいな……しょっと!」



 定期的ににょんきちを背負い直して洞窟を進んでいく。なんかツルツルしてて持ちにくいんだよなこいつ。



「おーいにょんきちー、起きたらちゃんと起きたって言ってくれよー。タヌキ寝入りはよくないぞー」



「…………」



 そういえばブラック・ラクーンってタヌキ寝入りするのかな。今度茶々丸くんに聞いてみよっと。



「うーん、出口こっちで合ってんのかなー」



 地底湖のあった場所から移動し、巨大ダンゴムシと戦った広場を抜けて、初日ににょんきちを追いかけてたであろう場所からアクリたちが残った広場の方へ向かって歩いている……つもりなんだけど。



「試験官の先生も監視の使い魔も見当たらないなあ」



 自力で脱出できるのかも見てるのかもしれない。アクリはこういう可能性も考えて入り口付近で採掘することを選んだのだろうか。



「ふう、ふう……ん、なんだかこの辺見覚えあるかも」



 初日に通った広場だ。あの時は何人か採掘してる受験生がいたんだけど、今は誰も見当たらない。



「まあでも、こっちの方に進んでいけば……ん? なんか……背中があったかいぞ」



 まるでにょんきちがホッカイロになったみたいだ。



「あれ、なんだかどんどん熱くなって……ってあっつ!!」



 ゴン!!



「あ、ごめんにょんきち」



 背中があまりに熱かったので、思わずにょんきちを落としてしまった。



「……あれ? にょんきちなんか光ってない?」



 パアアアアア……



「あれ!? にょんきちめっちゃ光ってるじゃん!!」



 なんかにょんきちがいきなり熱と光を放ち始めた。えっこれ、どうなってんの?



 パアアアアア……!!



「うわああああにょんきちいいいい!!」



 …………ゴトッ。



「……にょんきち?」



 …………。



「これって……」



 眩い光を放っていたにょんきちが元に戻ると、そこには甲羅ではなく、巨大ダンゴムシの体内から取り出した魔石のような、巨大な結晶が1つ鎮座していた。



「にょんきち……石になっちゃった」



 にょんきち(石)は、不思議な色をしていた。

洞窟に生えている発光キノコにかざすと、黄色いような、赤いような、青いような……様々な色に見えて、真っ白にも真っ黒にも見える。



「これって、魔石、なのかな……」



 でも魔物に出来る魔石って、今まで見つけたやつは身体の一部だったり、体内にあったりしたんだよな。こんな、魔物1匹が丸々魔石に変わる事なんてあるのだろうか。



「おーい、にょんきち……? 生きてるか……?」



「…………」



「本当に、魔石になっちゃったのかな……」



 あ、そうだ、もし魔石ならかなり珍しいんじゃないか。これを先生に見せたら高評価が貰えるかも。はやく洞窟から脱出しなきゃ。



「……あ、いた。シュータ」



「あれっ? アクリ?」



「……なかなか帰ってこないから探しに来た」



「そっか。探しに来てくれてありがとう」



「……シュータ」



「ん、なに? アクリ」



「……なんか、落ち込んでる?」

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