第100話 魔石食いと秘密の広場
「なあにょんきちー、ここって洞窟のどの辺なんだ?」
「にょーん」
「うーん、全然わかんないや」
俺が後を付いて行っても、にょんきちは意外にも逃げ出したりはしない。魔石を食べて余裕が出来たのだろうか。
「あ、小っちゃいけど魔石がある! よいしょっと……取れたー」
「にょっ」
ぱくっ
「あーっ!!」
「バリボリ……ごくんっ」
「あーあ、また食べちゃったよ」
こいつ、俺のことをエサ取ってくれる便利なやつくらいにしか考えてなさそうだな。
「にょんっ」
「ん、どうしたにょんきち? って、ここは……」
しばらく細い通路を進んでいたら、いきなり視界が開けて広い広場に出た。広い広場ってなんだ。大広場?
「あっ魔石がある! しかもけっこう大きいぞ」
広場の壁には色とりどりの魔石が発光キノコの光を反射してキラキラと輝いている。これは結構高ランクの魔石なんじゃないか?
「さっそく魔石採掘だ!」
「にょっ!」
「……」
「……にょ?」
「俺が持って帰る分も残してくれよ」
「にょん」
__ __
カン、カン……ボロッ
「取れたー!!」
「にょっ」
ぱくっ、バリ、ゴリ……
「……」
カン、カン……ボロッ
「おっこれはデカいな!」
「にょぎっ」
ばくっ、ガリ、ゴリ……
「……」
こんな感じでしばらくにょんきちのごはんを取るだけの作業を繰り返していたら、満腹になったのか甲羅に頭を引っ込めて動かなくなった。
「い、今なら倒せるんじゃないかこいつ……」
「にょー……すぴー……」
「……」
まあ、いっか。
……。
…………。
「ふぃ~、なんだかんだで結構採れたぞ」
しばらく魔石の採掘を続けて、それなりに良さそうなものも手に入れることができた。
とはいえ、いつもならたくさん物が入れられる次元収納カバンも洞窟内ではただの普通のカバンなので、取りすぎても持って帰れないんだよね。
「1個がめちゃくちゃ大きい魔石とかなら逆に担いで持って帰れるんだけど……あーでも通路のとこでつっかえちゃって無理か」
ぐー……
「はあ、お腹すいたなあ……」
干し肉1枚じゃあおやつ代わりにもならないや。今日はある程度進んだら引き返すつもりだったんだけど。ザジク先輩にお弁当でも作ってもらえばよかったな。
「……ん、もう夜か」
光陰の魔石で時間を確認すると、ちょうど白い魔石から黒い魔石に光る部分が移動しているところだった。これは、17時とか18時くらいなのかな?
「てか、これがにょんきちに食べられてたら危なかったな……」
カバンの中に入れていた魔石は全て食い尽くされてしまったからな。ポケット入れといてよかった。
「あれ、なんだかどっと疲れが……」
タフタさんに魔力を抜かれたときみたいな感じだ。体内の魔力が洞窟に吸収されているのだろうか。
今はキャンディの魔力回復アメも無いしなあ。こんなことならファミリアゲイトで来てもらったときに、いくつか作って貰っておけばよかった。
「はあ、食料になりそうな魔物も見当たらないし、にょんきち……は、まあいいや」
なんかもう魔石をエサにして育ててるペットみたいな感じになっちゃってるな。そう、魔石をエサに……
「……魔石ってうまいのかな」
てか食えるのかな……いや普通は食えないんだけどさ、味覚補整スキルを発動させればいける気がする。
「これは食べ物……これは食べ物……」
俺は試しに、小さくて食べやすそうな赤い魔石を取って口に運ぶ。
「ガリッ、バキッ、かったいなこれ…………ん! ちょっと甘い?」
どうやら魔法と違ってスキルは発動できるようだ。スキルを切ったら一瞬で味の無い石ころに変わったので慌ててスキルを発動させる。
「ガリッ、ボリ……かたいけど、なんとかいける」
チュッパチャップスくらいの硬さかな? 昔は木の実の殻を割るのが精いっぱいだったんだけど、パワーがSランクまで上がった結果、石を噛み砕けるくらいにはなったらしい。あごパワー。
「バリ、バリ……ごくんっ。うん! めっちゃ美味し……くはないけど、食べられるぞ」
身体の方もなんだか軽くなってきたような気がする。これでどうやら魔力切れも防げそうだ。
こうして俺は魔石を食べて飢えをしのぎ、洞窟内で試験1日目の夜を明かすのであった。
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