第93話 面接
入学試験1日目の後半戦、ついに俺の面接の順番がやってきた。
「はい、えーと、受験番号232番のシュータさんですね。よろしくお願いします」
「よろしくおねがいします!」
面接官は2人、なんだか真面目そうな眼鏡の女性と……白髪のおじいちゃん。ちょっと前世で仲良くしてた河川敷のおっちゃんに似てる。
「まあ面接といっても、実技試験の参考にするためのものなので。そんなに固くならないで気楽に答えてください」
「実技試験の参考……ですか」
「はい。今年から実技試験を2種類用意しまして。1つは討伐、戦闘系。もう一つは採取系ですね」
実技試験の内容は毎年ランダムに選ばれ、学園出身の先輩冒険者との摸擬戦、ダンジョンでの魔物討伐、採取など。
このあたりから1つ実施されるため、その年の受験生の得意不得意によって合格が運任せみたいになってしまうことがあるそうだ。
「……冒険者というのはのう、討伐が得意だったり、採取が得意だったり、失せ物探しが得意だったり、己の道を探して活路を見出していくのが大切だからのう。今回の面接で、そなたの長所を見つけ出すため」
「はい、説明が長いんでカットしますね」
「えっ? でもなんか良い事言ってた気が……」
「それでは面接を始めますね」
「は、はい……」
おじいちゃんが話してたのを強制終了させて面接をすすめる女性面接官。
「最近のあなたの状態についてうかがいます。最も当てはまる番号を答えてください」
「あ、はい。番号?」
「活気がわいてくる ①:ほとんどなかった ②:ときどきあった ③:しばしばあった ④いつもあった」
「えっと……④、です」
「ひどく疲れた ①:ほとんどなかった ②:ときどきあった ③:しばしばあった ④いつもあった」
「この間熱が出たから……③、かな」
「よく眠れない ①:ほとんどなかった ②:ときどきあった ③:しばしばあった ④いつもあった」
「①、ですね……」
って、なんだこのアンケートみたいな質問。もっとこう、入学したい理由とか、得意なこととか聞くんじゃないんかい。
「続いて、こちらの魔道具でシュータさんの簡単な魔力測定と適性魔法を調べますね」
そんな感じで謎の質問にしばらく答えた後、女性が後ろに置いてある、占いの水晶玉みたいなものの前へ俺を案内した。
「ちなみに現在、すでに使える魔法があったりはしますか? まあ基本的には入学してから学ぶことなので、最初から使えるのは魔法研究を生業にしている貴族のご子息くらいなんですけどね。稀に一般の方でもいらっしゃるので」
「あ、サンダーボールとサンダースラッグが使えます。あと……いや、その二つだけだ……です」
ファミリアゲイトは覚えてるけど使ったことは無いからどうなるか分からないし、言うのはやめておこう。
「いや、それは……驚きましたね。実際に見ていないので真偽は不明ですが……」
実際に合格して、入学前の段階で、正式に鑑定魔道具を使って色々調べるらしい。もし年齢を偽ってたらそこでバレて入学取り消し、というわけだ。なんでそれ、試験前にやらないんだろう。
「……その年で雷魔法とは、なかなかに珍しい」
「今見せても良いけど、部屋が吹っ飛んじゃうかも……です」
「ま、まあそれは大丈夫です。とりあえず、この魔道具に手を当ててもらえますかね? そこで諸々判断できますので」
「あ、はい」
俺は水晶に手を乗せて、そこに魔力を集中させるようなイメージをする。
「ん……なんか熱くなってきた」
もともとは透明だった水晶が、どんどん光を帯びていき、水晶の内側には、なんだか電気のようなものが発生している。なんだろう……プラズマ?
「こ、これは……!」
「うむ、間違いないのう、雷と……光? これは彼の力に加えてなにか外部の……」
「って、な、なんかめちゃくちゃ熱いんだけど!?」
バリンッ!!!!
「……あ」
「え?」
水晶玉が急に割れてしまった。え、これ、俺のせい? 試験落ちた?
「だ、大丈夫ですかシュータさん!? 怪我は!?」
「あ、俺は大丈夫……です。手も切ったりしてないです」
「よ、良かった……あ、魔道具が壊れたのは気にしないでください。修復魔法で直せますので。この人が」
「……任せときんしゃい。って、軽く言うとるけど一応S級魔法なんじゃがな」
どうやら魔道具を壊したことはお咎めなしみたいだ。弁償とかになったらどうしようかと思った。
「危険な目に合わせてしまい申し訳なかったのう。今の測定で試験は終わりじゃ。実技試験の連絡は後日、文を届けるでの」
「あの、でも俺、家がなくて……」
「大丈夫じゃ、どこにいても届くようになっておるでの。実技試験まで、ゆっくり休んで体調を整えておきなさい」
「はい、ありがとうございました! 失礼します」
……。
…………。
「ま、まさか測定魔道具が吸収限界で破裂するなんて……あの子、ものすごい魔力量ですね……学園長」
「ふぉっふぉっふぉ。さて、彼の実技はどちらにしようかの」
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