第83話 ブラック・ラクーンの里を守れ!
里が襲われている、と慌てた様子の茶々丸くんと一緒に樂狗亭の外へ出ると、そこにはまるでドラゴンのような巨大なクマがいた。
「アイツなのだ! 里の食糧庫が襲われてるのだ!」
クマは貯蔵庫らしき建物の屋根に頭から突っ込み、中に保存してあった食料を貪り食っている。
「べあべあべあべあ~!! モグモグモグ」
「うわっ鳴き声のクセがすごい!!」
ちなみにクマは鳴き声が「クマックマッ」って聞こえるからクマって名前になったらしい。90へぇ。
「あれは……トロール・ベアじゃな」
「ト、トロール?」
(トロール・ベア。山奥の洞窟などに生息。草食性で比較的温厚な性格だが、冬眠から目覚めてしばらくは空腹を満たすため周りが見えなくなる。フルーツが好き)
「でっかいプーさんじゃん」
いやまあ、絶賛めちゃめちゃ里の食べ物荒らされてるんだけどさ。なんか顔とかもそんなに怖い感じじゃなくてつぶらな瞳なんだよね。ただめちゃくちゃデカいけど。
「アイツは別に攻撃とかはしてこないんじゃがな、腹が減ってると周りを気にせずひたすら食い続ける。耐久力が異常に高くて、攻撃されても気にせず食い続けるのじゃ」
「いつも里を襲いに来るヤツよりデカいのだ! このままじゃ里の大切な食料が食べつくされてしまうのだ~!」
トロール・ベアの足元からブラック・ラクーンたちが石を投げたりしてどうにか止めようとしているが、まったく効いていないようだ。
てか毎年の恒例なの可哀想すぎる。
「シュータくん、助けてほしいのだ~!」
涙目の茶々丸くんを慰めつつ、俺はトロール・ベアをどうにかするために気合いを入れる。
「よ~し! 俺に任せとけ! ……というわけでキャンディさん、グール・ヴァンパイアの時にやった、あのライトニングなんちゃらを一発アイツに……」
「あ、拙者は無理じゃ」
「なんで!?」
「シュータの魔素熱暴走を抑えるのに力を使いすぎての……今はちょっと魔力が足りんのじゃ」
いやそれはもうしょうがないやつじゃん。俺の為にありがとう。
「シュータくん……?」
「だ、大丈夫だ茶々丸くん! お、俺に任せとけ!!」
「シュータくん……!」
茶々丸くんの里は俺が守る! 病み上がりだけど!
「おいクマ野郎! これ以上里の食べ物を奪い続けるならこの俺がゆるさないぞ!」
「べあ? ……もぐもぐもぐ」
「だめだあ全然聞いてない」
とりあえず説得は無理……と。まあ分かってたけど。
「うーん、じゃあ魔法でも撃ってみるか……サンダーボール!」
ビリビリビリ……ッと、巨大な雷の塊が形成されていく。あの巨大なトルネード・チキンを1発で倒した極みサンダーボールだ。これをくらったらさすがに……
「あっやばい、デカくなりすぎちゃった。山火事になっちゃうな……圧縮圧縮、電気を圧縮……よし、発射!!」
「べあ?」
バァン!!!!
「やったのだ!?」
「よし、勝ったのじゃ。風呂でも行ってこようかの」
「ちょっと、負けフラグ立てるのやめてよ!」
あーほらもう、煙の向こうに巨体の影が……絶対生きてるやつじゃん。
「べ、べあ……べあべあべあ~!!」
俺のサンダーボールをくらったトロール・ベアは、若干ダメージを引きずりつつもまだまだ元気だった。それどころか……
「あれ!? なんかデカくなってない!?」
さっきより更に巨大になっている。な、なんだ? 一瞬で成長したのか?
「シュータ、それなんじゃがな、おそらく」
「くっそ~!! こうなったら……くらえ! サンダースラッグ!!」
相変わらず食べるのをやめないトロール・ベアに向かって巨大な雷パンチをお見舞いする。こっちのほうが威力高いだろうし、これなら……
「べあ? もぐもぐもぐ」
「あ、あれ~?」
なんかあんまし効いてないな。しかもまた大きくなってる気がする……
「こやつ、ただのトロール・ベアじゃなくて……トロール・ベアキングじゃの」
「トロール・ベアキング?」
(トロール・ベアキング。トロール・ベアの最上位種。攻撃を受けるたび、一時的に耐久力を上げる)
「つまり、一撃で倒さんとどんどん強くなるっちゅうことじゃの。下手をするとドラゴンより厄介じゃぞ」
「もう下手打っちゃったよ! ヤバいじゃん!」
無駄に強くさせちゃったよ! 俺の攻撃もう効かないんじゃないかこれ。
「いやー、確かに普通のトロール・ベアよりちと大きい気がしてたんじゃが、まさか上位種だとは気付かなんだ」
「も、もうダメなのだあ……おしまいなのだあ……」
「べあべあべあべあ~! もぐもぐもぐ」
トロール・ベアキングは今やドラゴンよりデカいんじゃないか、と思うほどに巨大化している。お、俺の魔法のせいで更に強くしてしまった……どうしよう……
「はあ……しょうがない。こうなったらアレをやるしかないか」
「シュータくん?」
「シュータ、おぬしまさか」
「……魔人化、しちゃおっかな~」
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