第80話 なんだか熱っぽい



「あれ……朝……?」



 なんだか身体が重い。頭がボーっとして息苦しい。



「さ、寒い……いや暑い……?」



「シュータくん大丈夫なのだ? しっかりするのだ!」



「にゃー」



「茶々丸くんと、ねこのすけ……? おはよう……」



 昨日はたしか……王都に帰ってきて、シルクと会って……少し寒気があって、リネンさんにシソーバー渡して……なんだか身体もだるかったので、旅の疲れが出たのかな、と思って早めに寝て……



「あれ、なんだかボーっとする……」



「シュータくん、顔が真っ赤なのだ!」



 茶々丸くんの顔がすごく近くにある。ん、おでこに何か当たって……



「すごい熱があるのだ! お肉が焼けそうなのだ」



「そんなに熱くは……ないでしょ……」



「と、とにかく、いったんわっちの宿に運ぶのだ!」



「樂狗亭……久しぶりだ……えへへ」



 ……。



 …………。



「う……あれ、ここは……?」



「シュ、シュータくん! 大変なのだ、熱がどんどん上がってるのだ……!」



「熱……のど、かわいたかも……」



「水なのだ! ゆっくり飲むのだ」



 ん……冷たくて美味しい。



「様子はどうですじゃ」



「長老なのだ!」



 ちょーろー……?



「茶々丸が世話になっとりますじゃ。それにしても、この病は……」



「長老! シュータくんは大丈夫なのだ!? 病治るのだ!?」



「良く分からんですじゃ。ワシ人間族じゃないし」



「役立たずなのだ!」



「……ラクーン鍋でも食わせれば元気になるかもしれんですじゃ。のう茶々丸?」



「すいませんでしたのだ」



 なべ……食べたいなあ……



「ちゃんこ鍋で……めざせ横綱……」



「なんか良く分からないこと言ってるのだ。長老~! どうしたらいいのだ!?」



「人間族の病を治す養生所は……教会じゃったか。茶々丸、教会にシュータ殿と仲の良い知り合いはおらんけ?」



「教会……シスターなのだ? それならリネンさんと、シルクがいるのだ」



 シルク……ハンカチ喜んでくれたかな……



「そのお二人は信頼のおける人間ですじゃ?」



「大丈夫なのだ! 樂狗亭のことも、里の事も秘密にしてくれると思うのだ! 多分!」



「シルクの……ブラッドスープたべたい……」



「呼んでくるのだ!」



 ……。



 …………。



「……タ! シュータッ!」



「ん、シルクの声がする……おはよ」



「おはようじゃないわよ! すごい熱じゃない!」



 おでこに何か布のような物を乗せられる。



「冷たくてきもちいい……」



「昨日シュータがくれたハンカチよ」



「シルクちゃん、シュータくんの病気は治るのだ?」



「とりあえず、調べてみるけど……てか茶々丸、ここって」



「わっちの宿屋なのだ。事情は後で話すのだ」



「……はあ、わかったわよ。それじゃあちょっと診察? するから、シュータと二人にしてくれるかしら」



「わかったのだ! ……変なことしちゃダメなのだ」



「やらないわよ!」



 バン!!



「それじゃあシュータ、ちょっと鑑定するわよ」



「ん……お医者さんごっこ……?」



「違うわよ! もう勝手に調べるからね! ……鑑定!」



 シルクに鑑定してもらうのも……久しぶり……



「って、シュータものすごくステータスが上がってるじゃない! 魔法もこんなに……使い魔まで……ヴァンパイア!? って、それは今はどうでもいいわ。状態異常……“魔素熱暴走”? 魔素中毒とは違うのかしら……」



「シルク、おなかすいた……」



「よくこんな状態で食欲あるわね……わかったわ。なにか消化の良いものを作ってくる。ちょっと待ってて」



 ピシャーン!! バリバリバリ!!!!



「きゃっ! な、なに!?」



「うわ~! 落雷なのだ!」



「天変地異ですじゃ……!」



「ん……雷……」



 この感じ、最近どっかで……



「まったく、無駄に高度な結界を張りおって……シュータ! シュータはどこじゃ!」



「雷から人間が出てきたですじゃ!」



「誰なのだ!?」



「だ、誰か来た……シュータを狙って……? どうしよう……」



「あ、多分……大丈夫……」



 ドガッ!!



「シュータ! 大丈夫か! 魔力の流れが……ってなんじゃお主!」



「えっ!? あ、あんたこそ誰よ!」



「拙者はシュータの使い魔のキャンディ様じゃ!」



「この女の子が使い魔!? ちょっとシュータ! どういうことよ!」



「あれ……キャンディ……なんでいるの……?」



「お主の魔力の流れが異常だったんでな、またあのクソ魔女が何かしたのかと思うたのじゃが……今度は違う魔女じゃったか」



「シルクは魔女じゃないわよ! それにシュータの病がなんなのか鑑定してたの!」



「ほーん、お主能力鑑定が使えるんじゃな。それで? シュータはどうなっとるのじゃ?」



「なんか、魔素熱暴走っていう状態で……こんな症状初めてみたわ」



「魔素熱暴走? もしやそれは……まあ良い、拙者に任せるのじゃ」



 ん……なんかキャンディの顔が近いな……



「ちょ、ちょっと! シュータに何やろうとしてんのよ!」



「なにって、使い魔である拙者の魔力を直接流し込んでシュータの魔力回路をじゃな」



「そ、それってキスするってこと!? そんなのダメよ!!」



「緊急を要するんじゃから良いじゃろそれくらい……ははーん、なんじゃお主、シュータのこと」



「わーっ!! なにもないわよ!! とにかくダメッ!!」



「じゃあ男同士なら大丈夫なのだ! わっちがシュータくんに魔力を流して治療を」



「それもダメッ!!」



 ……はあ、おなかすいたなあ。

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