第77話 修行お疲れ様パーティー



「それじゃあ、かんぱーい!」



「シュータくん、お疲れ様~!」



「カ~!」



「乾杯なんだナ」



 明日、修行を終えて大魔樹の庭から王都に帰ることにした俺の為に、タフタさんがお別れパーティーを開いてくれた。

参加者は、俺、魔女のタフタさん、タフタさんの使い魔でシャドー・クロウのネルちゃん、喋るとんがり帽子のオーガンジー。

ずっとここで生活してたから気にならなくなってたけど、中々に不思議なメンツである。



「は~い、今日はウサビーム・パイソンが獲れたから、シソーバーのはさみ焼きと、ローストビームにしてみたわ」



「シソーバーのはさみ焼き! って、えっなに? ローストビーム?」



 そんなローストビーフみたいな料理……いやローストしたウサビーム・パイソンか。まんまだった。



「弱火でじっくりコトコト……してる時間は無かったから、魔法でじっくり焼いたことにしたわ」



「じっくり焼いたことに!?」



「3倍速よ」



 そんな圧力鍋みたいな技が? うーん、魔法って奥が深い。



「葉野菜と一緒にパンに挟んで食べると美味しいわよ」



「いただきまーす。……ん! めちゃうま! このお肉にかかってるやつもタフタさんが作ったの?」



「昔、グランデ様に作り方を教えてもらったの。大魔樹直伝のソースねぇ」



 さすがグランデ様、なんでも知ってるな。



「カツ、カツ……」



「ネルちゃんはなに食べてるの?」



「カー」



「ネルが食ってるのはホットバードのヒナだナ。ネルの好物なんだナ」



「…………」



 まあ、カラスってそうか。ヒヨコとか食べるもんね。



「オーちゃんは……なにそれ。青汁?」



 オーガンジーはグラスに入った緑色の液体を、草で出来たストローのようなものでチューチュー飲んでいる。

帽子がストロー使って飲み物飲んでるの初めて見た。



「これは薬草魔酒だナ」



「薬草のお酒?」




「魔素抜きしてない薬草を色々混ぜて、火酒に漬け込んで作るんだナ」



「へー。なんかまずそう……」



「うふふ、シュータ君にはまだ早いわねぇ」



 この国でも、お酒を飲むには年齢制限がある。ただ、前世と違うことといえば、この国では15才で成人扱いなので、お酒を飲んでいいのも15才から。

ただ、15才~20才の間は、飲めるお酒の種類が限られていたり、年齢によって飲んでいいお酒の量も決まっていて、20才になったらなんでも自由に好きなだけ、という感じだ。

お酒を使う魔法なんかもあるらしいから、そういうのは最低でも15才にならないと出来ない。



「まあ、俺はお酒はべつにいいかなー。そんなに美味そうじゃないし」



 ……実は前世で、母ちゃんが買って冷蔵庫に入れてたビールを間違って飲んでしまったことがある。なんかコーラの缶に似てた気がする。あのビールは確か、バド……バドミントンだっけ?

ひとくち飲んで、「あっこれはヤバイ、腐ってる」って思って水でめっちゃ口をゆすいだ。母ちゃんはなんであんなの美味そうに飲んでたんだろう。



「うっふふ~それでぇ~シュータくんは王都に彼女とかいるのかしらぁ~?」



「えっ? そんなのいないけど……って酒くさ! タフタさんいつの間に……」



 気づいたらタフタさんがべろんべろんに酔っていた。魔女もお酒には勝てないみたいだ。



「あ~、それともキャンディちゃんのことが好きとかぁ~? あの子には気を付けなさいよ~若いのは見た目だ~けよぉ」



「あ、あんましそういう事言わない方がいいよ」



「キャンディちゃんが良いならわたしだってぇ……あ、そうだわ~シュータくん今日は一緒にお風呂入りましょうかぁ」



「えっ!? 入らないよ!?」



 や、やばい。酔っていつも以上にめんどくさくなってる。



「え~いいじゃない! 一緒に入れば直接魔力を抽出できるかも~というわけで、はい服脱いで~」



「い、いやだー! 誰か助けて―!」



 ピシャーン!! バリバリバリ!!!!



「あっ」



「あら~? また近くに落雷~?」



 こ、このパターンは……



「くぉら~!! なにやっとんじゃこのクソババア~!!」



「キャンディ!」



「あら~キャンディちゃんいらっしゃ~い」



 ヒーローみたいなタイミングでヴァンパイア来ちゃった。



「キャンディちゃんも薬草魔酒飲むわよねぇ?」



「飲むかボケェ! って、酒くさいのう!」



「キャ、キャンディ助けて! 酔っぱらったタフタさんが一緒にお風呂に入ろうとしてくる!」



「あら~じゃあキャンディちゃんと3人で入りましょうか~」



「む、拙者がシュータと……?」



「キャンディ?」



「はっ! いやなんでもないぞ。こやつは昔から酒癖が悪くてのう……ってこら! 拙者の服を脱がそうとするでない!」



「お酒はほどほどに~なんだナ」



「カー」



 その後はキャンディも交えてパーティーを楽しみましたとさ。めでたしめでたし。

あ、お風呂は普通に一人で入った。キャンディは何故かちょっと残念そうにしていた。

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