第72話 魔力枯渇で限界突破
「抽出完了っと。はい、シュータくんお疲れ様~」
「はい……」
大魔樹の庭へ来て数日が経った。
俺はタフタさんから薬草採取の知識や簡単な薬の作り方を教わりつつ、定期的にタフタさんの秘薬づくり、というか魔力抽出に協力していた。
「なんだか初日より抽出時間が長くなってる気がするんだけど……」
「シュータくんから抽出される魔力の限界に達すると完了するように設定してるんだけど、段々抽出量が多くなっているのよねぇ」
なんでそんなギリギリ設定なんだよ。半分くらいにしてよ。
「それって、俺の魔力が増えてるってこと?」
「魔力が枯渇しないように、身体が対応してきているのかもしれないわねぇ。お陰で良質な魔力がたくさん手に入って嬉しいわ」
俺は全然嬉しくないんだけど。
「キャンディから貰った飴が無かったら大変だったよ」
一粒食べるだけで魔力が一気に回復できる。ありがとうキャンディ。俺もベネディクトのヴァンパイア教に入ろうかな。
「このまま毎日限界まで抽出すれば、シュータくんの魔力量もどんどんアップして良いんじゃないかしら?」
「えー……」
「魔法の使える回数も上がるし、威力も強化されるわよ」
「うーん、そう考えると良い修行ともいえる……かも?」
俺もいつか、キャンディがグール・ヴァンパイアとの戦いで使ったような強大な魔法が使えるんだろうか。
「シュータくんからの魔力抽出量が増えれば、わたしの分だけじゃなくて知り合いの魔女に売って……」
「ちょっと、俺の魔力で稼ごうとしないでよ。そんなことしたら……」
「さ、さすがに冗談よお」
「キャンディに殺されるよ」
「それはそうねぇ」
もう俺だけの魔力じゃないんだよね。
__ __
「それですーくん、実際に俺の魔力量って上がってるのかな?」
(魔力量の測定機能は搭載されておりません)
「すーくんも分からないかー」
やっぱ限界まで魔法を撃ちまくって、回数が増えていくか調べていくしかないのかな。
「そういや威力も上がってるんだっけ。ちょっと試してみるか……サンダーボール!!」
バァン! バリバリバリ!!
「これをすぐに飛ばさないで、大きくして……」
バリ……バリバリ……!!
「あ、やばい、めっちゃデカくなるじゃん」
とりあえず真上に放とう。
「えいっ」
バアアアアアアン!!
「グェッ!?」
「ん?」
「…………」
「気のせいか。それにしても……」
放った魔法の衝撃? で、真上の雲の一部が吹き飛んで晴れ空が広がった。
「これ本当にサンダーボール?」
(サンダーボール・極になりました。威力が大幅に上がっています)
サンダーボールを極めたってこと……?
「こんなんやってたら山火事になっちゃいそうだ」
ここで魔法撃つのはやめとこうかな。まあそのうち気が向いたら確かめてみよう。
ひゅ~……ドゴォッ!!!!
「うわっびっくりした!」
どうやら近くになにか落下してきたみたいだ。
「な、なんだ? 隕石とか?」
ちょっと見に行ってみよう。
……。
…………。
落下地点に向かうと、そこにはめちゃくちゃデカいニワトリが横たわっていた。いや、頭はペリカンっぽいな。
「な、なんだコイツ~!?」
思わずジョ〇マンになってしまった。なななな生肉~。鶏肉。
(トルネードチキン。非常に大型な魔物。飛行中に羽ばたきで竜巻を発生させ、巻き上がった動物を捕食する)
「めっちゃ迷惑じゃん」
目の前に倒れているトルネードチキンは、羽が所々焦げてボロボロだ。
もしかしてさっきのサンダーボールに当たって落ちてきたのかな。
「すーくん、コイツって食えるの?」
(どちらかというと人間側が捕食される側になります)
「…………」
怖すぎる。まあこのデカいくちばしなら人なんて丸呑みか……
「よーし、じゃあ今回はこっちが捕食してやるぜ!」
トルネードチキンを担いで帰ったら、タフタさんにめちゃくちゃビックリされた。
香草焼きにして食べたらけっこう美味しかったので、もしまた見かけたら倒して持って帰ろう。
「こんなに美味しいなら市場に売ってても良い気がするけどなあ」
「そう考えて逆に食べられちゃった人は結構いるかもしれないわねぇ」
「それはまあ、そうかあ」
竜巻起こすんだもんな。災害じゃん。
「でも俺の雷魔法なら相性が良いからな」
将来はトルネードチキンハンターになろうかな?
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