第62話 男友達……?



 スラムで見つけた謎の宿屋「樂狗亭」で1泊して、気持ちの良い朝を迎えたシュータ。

宿屋の主人、茶々丸くん(黒髪和服美少女。タヌキ。オス)と一緒に朝風呂を満喫するために大衆浴場「ほっとランドリィ」へやってきたが……?



「シュータ。その女、誰?」



「この人は茶々丸くんっていって、男だよ」



「そ、そうなのだ。わっちは男の中の男なのだ」



「なんでウソつくの」



「いや、ウソじゃないんだけど……」



 いやまあ、茶々丸くんのこの見た目だと説得力がちょっとね……

それにしても、なんだかいつも以上にシルクの圧がすごいな。



 ガララッ



「ふぃ~さっぱりした~ビール飲んじゃおっかな~って、あれ? シュータくんじゃ~ん」



「あ、リネンさん」



「おっはよ~シュータくん。ん、なに、どうしたの? ……修羅場?」



「ちがうわよ!」



「……お風呂入ってきていい?」



 __ __



「というわけで、友達の茶々丸くんです」



「茶々丸なのだ! よろしくなのだ!」



 宿屋の事は一応秘密にしておいて、茶々丸くんは俺がスラムで仲良くなった友達って感じで紹介する。



「人間の友達、初めてできたのだ……えへへ」



「ッ!!」



「ヒィッ……! シュ、シュータくん、なんかあの子怖いのだ……!」



「いつもはもっと優しいんだけどね……」



 シルクは何故か茶々丸くんをにらみつけている。もしかして魔物だってうっすら感づいてるのだろうか。



「茶々丸くん本当に男の子~? めっちゃ可愛いじゃない」



「あらあら。ほんとに可愛いわねえ。これじゃあシルクちゃんも妬いちゃうのも無理ないわ」



「妬いてない!」



 何故か洗濯場からラミーさんもやってきて、リネンさんと一緒にビールを飲んでいる。二人とも、朝からそれでいいのだろうか。



「分かったのだ、じゃあ証拠を見せるのだ!」



「ちょ、ちょっとそれは」



 さすがに止めた。本当に男だったらシルクたちがアレだし、もし女の子だったら俺が……多分シルクにボコボコにされるし。



「あ、そうだ! 茶々丸くんを鑑定すれば良いんだ!」



 俺はポケットからすーくんを取り出す。



「これは鑑定魔道具のすーくん! すーくんなら性別も調べられるよ!」



「あらシュータくん、随分便利な物持ってるのね」



「あ、それならシルクが」



「(シルクは鑑定できること隠してるでしょ……!)」



「(あ、そうだったわ……)」



「というわけでさっそく。すーくん。茶々丸くんの鑑定をお願い。」



 (……鑑定完了。茶々丸、15才・オス)



「あ、ほら! 男だって!」



 俺はすーくんの鑑定画面を見せる。



「男っていうか、オスって書いてあるけど」



「おんなじおんなじ! これで分かったでしょ? 茶々丸は」



 (種族:ブラック・ラk)



「あああああああ!! すーくんもういいよ!!」



「ブラック……なに?」



「ブ、ブラックボーン! ブラックボーン・シュータの友達って書いてあったんだよ!」



「そうだったかしら?」



 性別以外の所が表示されたので慌てて隠す。あ、あぶないあぶない……色々バレちゃうところだった。



「こ、これで茶々丸くんが男だってわかったでしょ? じゃあ俺たちお風呂入って来るから」



「いってらっしゃ~い」



「むむむ……」



「もう、シルクちゃんいつまで膨れてんのよ」



「そうよ。そもそもシュータくん、彼女とか彼氏とかそういうの興味無いと思うわよ」



「別に。シルクだって興味ないし……って、なんで彼氏も出てくるのよ」



「茶々丸くん、可愛かったわねえ」



「ッ!!」



「冗談よ冗談」



 ……。



 …………。



「お風呂気持ちいいのだ~」



「そうだねえ~」



「わっちの里にも温泉が湧いてるのだ」



「温泉いいね~! いつか連れてってもらおうかな」



「シュータくんなら大歓迎なのだ!」



「やった~! あ、お風呂あがったらバッファモーミルク飲もうよ!」



「バッファモーミルク? それは美味しいのだ?」



「お風呂上りに飲むと最高だよ!」



「楽しみなのだ!」



 入るまでにひと苦労あったけど、俺は茶々丸くんとゆっくり朝風呂を楽しんだ。

……それと、茶々丸くんはちゃんと男の子だった。

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