第63話 スラム街で朝食を



「お風呂に入ってぽっかぽかなのだ! バッファモーミルクも最高だったのだ!」



「それは良かった」



「また来たいのだ!」



 ほっとランドリィでお風呂に入ってゆっくりした俺と茶々丸くんは、朝ごはんを食べる為に下層区の屋台通りをブラついていた。



「そういえばあのシルクって子は、シュータくんの友達なのだ?」



「うん。シルクは教会でシスターをやってるんだ」



「ちょっと怖かったけど、シュータくんの友達なら多分良い人なのだ。あと、なんだか強そうなオーラが出ていたのだ」



「強そうなオーラ?」



「一瞬、ヴァンパイアが人間族に化けてるのかと思ったのだ……」



 もしかして、シルクが付けてる日除けの香水の影響だろうか。



「おーいシュータ! なんだオマエ、朝っぱらから見せつけやがってよお」



「おっちゃん!」



「串焼き屋さんなのだ!」



「あれ、茶々丸くんこの店知ってるの?」



「ここの串焼きは絶品なのだ!」



「おっ誰かと思ったら着物の嬢ちゃんか。絶品なんて言われちゃあ照れるじゃねえか。それにしてもシュータ、おまえにはシルクちゃんがいるだろうに。別の女の子とデートなんかしやがって」



「デートじゃないし女の子でもないよ」



「そんな腕組んでくっ付きながら歩いて、デートじゃないってか?」



 そういえば、ほっとランドリィを出てから茶々丸くんが「湯冷めしちゃうのだ~」とか言ってくっ付いてきたんだった。すーくんによると、ブラック・ラクーンの習性らしい。



「スラムの子供の防寒対策だよ」



「なのだ」



「それを言われちゃあ茶化せねえな。なにか食ってくか? サービスするぜ」



「トンホーンの串焼き!」



「わっちもなのだ!」



「はいよ! まいどあり!」



 ……。



 …………。



 あれから屋台を巡り、いくつか料理を買って二人で俺の家……というかアジトにやってきた。



「ねこのすけ~ごはん食べる~?」



「にゃあ」



「この子がシュータくんのペットなのだ?」



「まあペットっていうか、ねこのすけの住処に一緒に住んでるというか」



 ねこのすけが茶々丸くんの周りをぐるぐるしながら匂いを嗅いでいる。



「フンフン……にゃ?」



「な、なんなのだ? わっちから変な匂いでもするのだ?」



「魔物だってバレたんじゃない?」



「だ、大丈夫なのだ。お風呂入りたてだから獣臭くないのだ」



 しばらく茶々丸くんの匂いを嗅いでいたねこのすけは、何かに納得したのか、茶々丸くんから離れてごはんを食べ始めた。



「まあ、仲良くしてやってよ。あっそうだ、ねこのすけも俺と一緒に茶々丸くんがやってる宿屋に泊まらない?」



「はぐはぐ……にゃ? にゃ~……にゃい」



 ねこのすけはぷいっと顔を背けて食事に戻った。どうやら興味ないらしい。



「まあ、俺が来る前もずっとここで暮らしてるんだろうし、寒さには強いのかな」



 猫っぽいけど魔物だし。ペットの猫たちよりも逞しく生きていそうだ。



「じゃあ俺たちも食べよっか」



「いただきますなのだ!」



 トンホーンの串焼き、なんだか久しぶりに食べる気がする。



「うん、美味しい! やっぱりこの味だ」



 なんというか、もう故郷の味って感じだ。おっちゃんの串焼きでここまで大きくなりました。



「美味しいのだ! わっちはこの串焼きが大好きなのだ」



「茶々丸くん、こっちの蒸し野菜と一緒に食べるともっと美味しいよ」



「……野菜はその、大丈夫なのだ」



「え~? 美味しいのに」



「はいシュータくん。あ~んなのだ」



「嫌いだからって俺に食べさせないでよ」



「わっちは肉食の魔物なのだ。ねこのすけと一緒なのだ」



「にゃ?」



「そうなんだ」



 (ブラック・ラクーンは雑食性です)



「……」



「や、野菜さんが可哀想なので食べないようにしてるのだ」



 逆ヴィーガンじゃん。

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