第47話 迷子のドラゴン(小)
俺の名前はシュータ・ブラックボーン。
新鮮な魚をゲットするため、ザルティス湖っていう漁場に行く予定だったんだけど、
近道しようとして森で迷ってたら、ちっさいドラゴンに出くわしてしまった。あらすじおわり。
「お、俺のサンダーボールが食われちまった……」
「ぎゃお!」
「な、なんだお前、やるのか?」
「ぎゃん……」
こてっ。
「ぐー……Zzz」
「えっ……なに、寝たの?」
いきなり現れた子供のドラゴンは、俺が撃った雷魔法、サンダーボールを文字通り食らい、いきなり寝落ちした。いき〇りステーキじゃん。
「この子が南の街道に現れるっていうドラゴンなのか……?」
それにしてはなんというか、強くはなさそうっていうか、むしろゆるキャラって感じだけど。
(サンダー・ドラゴン。主な生息地は「雷鳴渓谷」です)
「雷鳴渓谷……どこだろ? この辺じゃないよな」
今日行く予定だったザルティス湖の周りには山も谷も無かったはずだ。
「ん……お前、しっぽ怪我してるのか」
とりあえず布でも巻いとくか。
バチッ!
「うわっ! 静電気すごいな」
さすがサンダー・ドラゴン。冬のドアノブじゃん。
「なんだか俺も眠くなってきちゃったな」
ここまで瞬足ダッシュで来たから疲れが溜まってるのかもしれない。
(魔物が接近したらアラームでお知らせします)
「すーくんそんな機能あったんだ」
それじゃあ、安心して寝れる……かな……。
……。
…………。
「すや……すや……Zzz」
「ぎゃお」
バリバリバリ!
「うわっなに!? 敵襲!?」
「ぎゃん」
「なんだおまえか……」
ドラゴンに手を噛まれて目が覚めた。
「すーくんアラーム鳴らないじゃん」
(敵意がありませんでした)
めっちゃ噛まれてるけど……
「ぎゃお」
「なんだお前。なんで手噛むんだ」
(サンダー・ドラゴンは雷、および電気を帯びた食物を主食としています)
マジかよ。やっぱ俺の出したサンダーボール食ってたのか。
「ぎゃい!」
「わかったわかったって! はい、サンダーボール」
「ぎゃ! ばくばく!」
本当に食べてる。サンダーボールって食べられるんだ。
「ぎゃっふ」
お腹いっぱいになったらしい。充電完了って感じかな。
「君ってもしかして、街道に出るっていうドラゴン?」
「ぎゃ?」
うん、多分違うな。
とりあえず、早いとこ森から抜け出したい。もうお弁当も無くなっちゃったし。
「じゃあ、お前も元気でな」
「ぎゃお」
テクテクテク……
ペタペタペタ……
「…………」
「ぎゃお」
めっちゃ付いてくるじゃん。野良ネコにエサあげちゃった気分だ。
「……一緒に行く?」
「ぎゃお!」
というわけで、子ドラゴンと一緒に森を探索することになった。
「お前って呼ぶのもなんかアレだから、そうだなあ……サンダー……さん……さっちゃんでいいか」
「ぎゃ?」
メスかどうか知らんけど。
「じゃあこれからよろしくな、さっちゃん!」
「ぎゃお!」
サンダー・ドラゴン(小)が仲間になった!
__ __
しばらく二人というか、1人と1匹で森を進む。
「魔獣の森」と比べると、全然広そうじゃないんだけど、周りの木が高くて先があんまり把握できない。
「さっちゃん、そこ邪魔なんだけど」
「ぎゃい」
さっちゃんは肩車みたいな感じで俺の肩に乗っている。しっぽをちょっと怪我してるくらいなら全然自分で動けると思うんだけど……あと若干電気が流れてくる。
ピップエレ〇バンってこんな感じなのかな。違うか。
「てか、さっちゃんて飛べるの?」
「ぎゃ!」
バサッと翼を広げて、俺の肩から飛び立つさっちゃん!
パタパタ……
「いやおっそ。ひっく」
俺の歩くスピードより遅かった。しかもめっちゃ低空飛行。
「ぎゃ……」
すぐに疲れて俺の肩に戻ってくる。
「しょうがないなー。怪我が治るまでだからね」
「ぎゃふ」
ガサガサ……
「……ん?」
ガサッ!
「ムヒィ!」
「うわっなんだ!?」
前の茂みからブタとサルを足したような魔物が現れた。
(鑑定完了。ファットモンキー。雑食性でなんでも食べる。太りすぎて木に登れなくなった。)
「ファットモンキーか。俺もなんでも食べるぜ」
「ムッヒィ!」
「ムハー!」
「鳴き声キモッ! って、もう1匹いたのか!」
どうやら2匹がかりで俺たちを餌食にするつもりらしい
「よーし、2匹まとめてかかってこい!」
「ムヒィー!」
1匹が正面から突っ込んでくる。
「えーとえーと、スーパーウルトラハイパーミラクルシュータパンチ!」
ボゴォ! ビリビリ!
「ヴァヒッ」
「よっしゃ!」
突っ込んできたファットモンキーは、俺の右ストレートによって、来た道を吹き飛びながら引き返して奥の木に埋まった。
なんか普通のパンチでも若干電気を発するようになってる気がするぞ。
「ぎゃん!」
「ん? うわっ!」
「ムハー!」
いつの間にかもう1匹が後ろから襲いかかってきていた。
「ぎゃおー!!」
ビリビリビリ!
「ムババババ!」
後ろからきたファットモンキーは、さっちゃんが口から放った電撃でしびれて動けなくなった。
「すげえ! さっちゃん口からビーム撃てるの!?」
「ぎゃふん!」
なんだか得意げにしてるけど、ぎゃふんはやられたほうが言うやつじゃん。
「まあいいや。さっちゃんもなかなかやるじゃん!」
「ぎゃ!」
森で迷子の1人と1匹、最強の電撃コンビが爆誕した瞬間だった。
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