第35話 新たな力



「というわけで、あと半日後には決戦なのじゃ! 作戦会議をするのじゃ!」



「キュウ!」



「おー……」



 なにが「というわけ」なんじゃい。



 「日除けの香水」を狙う悪徳商人たちと戦うため、俺の使い魔になったキャンディ。

そんでその商人たち、エッグ・ベネディクトと愉快な仲間たちがこれから攻め込んで来るらしい。

俺もさっき聞いたんだけどね。さすがに急すぎる。



「きゅーたろう、おはよう」



「きゅーきゅ」



 気づいたらきゅーたろうが起きてきて頭に乗っている。

半日後には敵が攻めてくるということで、俺は街に帰らず、キャンディの部屋で仮眠した。

ダンジョンで寝るのって変な感じだ。あとキャンディのベッドで寝たのでちょっと緊張した。



「そういえばキャンディはどこできゅーたろうと仲良くなったの?」



「む? こやつとはな、コウモリに変化して出歩いてるときに出会っての」



 弱体化していたときは、そのままの姿で日光に当たることができなくて、コウモリに変化して墓地をうろついていたらしい。

そこで何故か、森から遊びに来たきゅーたろうと出会って意気投合したらしい。なにが投合したんだろう。



「まあいいや。それで、作戦ってなんか考えてるの?」



「もちろんじゃ! 敵が来たらこう、ビッとしてバーン! じゃ!」



「わかんないわかんない」



 小学1年生の昼休みみたいな動きだったぞ今の。



「そうじゃ! 使い魔になったことだし、アレができるかもしれんの……お主、手を出すんじゃ」



「ん? はい」



 ギュッ



「んん?」



 唐突にキャンディが手を握ってきた。えっなに? 手相?



「ちょっとだけ目を閉じておれ」



「はい……」



 な、なんだろう、何されるんだ俺。



「それじゃあいくぞ~。ちょっとチクッとするからの~」



「はーい……えっなに注射!? 嫌だ!」



 ビリリッ!



「あばばばば!」



 か、身体がしびれる……!



「はい、終わったのじゃ」



「な、なんだったんだ……」



「さっそく試してみるかの。シュータ、手のひらをこう前に向けるんじゃ」



「今度はなんだ……?」



 腕を前に出し、立ち入り禁止の看板みたいなポーズになる。



「そしたらこう唱えるんじゃ。”サンダーボール”」



「……サンダーボール」



 ブォン! ビリビリビリ!



「うわ!」



 俺の手から電気の塊みたいなのが発射された。

ぶつかった壁に雷が落ちたような衝撃があり、黒く焦げたような跡が付いている。



「な、なんじゃこりゃ!」



 ピロン♪



 (シュータハ魔法、サンダーボールヲ覚エマシタ)



「魔法!? 使えるようになったの!?」



「拙者の魔法を1つ使えるようにしたぞ。これが使い魔契約の力じゃ。すごいじゃろ~」



「すっげえ! サンダーボール!」



 バリバリバリ!



「おいこら拙者の部屋で連発するでない! 外でやってこい外で!」



 館をうろついてる魔物相手に魔法を練習して来い、とキャンディの部屋を追い出されたので、1階にいるアンデッドたちを相手に魔法を使う。



「サンダーボール! おお~すげえ1撃じゃん!」



 俺って物理タイプだから、魔法系は使えても威力が低いのかなって思ってたけど、これなら実戦で役立ちそうだ。



「マジックパワーとかEランクだったはずだし、それでこの威力なのか……」



 (シュータノマジックパワーハ、現在C+デス)



「C+? あれ、そんな高かったっけ?」



「ライトニング・ヴァンパイアノ血液ヲ摂取シ、ステータスガ大幅ニ上昇シマシタ」



「キャンディの血……」



 そういえば俺が貧血で倒れてたときに飲まされたんだっけ。

あれでめっちゃ上がったのか。



「よーし、もっと練習して上手に使えるようになろう!」



 それから俺は死霊の館を練り歩き、遭遇した魔物をナックル攻撃も交えながらサンダーボールで倒していった。



「ふう、結構倒したな……」



 気づいたら外は夕方になっていた。

館のエントランスには俺が倒した魔物の部品というか、残骸が散らばっている。骨とかロウソクとか。



 てかアンデッドの骨とか買い取ってくれるんかな。一応カバンに入れとくか。



 ピロン♪



 (シュータハ____ヲ覚エマシタ)



「この技は……」



「シュータ! 奴らがやってきたのじゃ!」



「!!」



 ……。



 …………。



 ズ……ズ……



「ヴゥ……」



「おらしっかり歩けアホグール」



「フッフッフ。キャンディさん、今度こそ香水を作ってもらいますよォ……」

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