第33話 契約の理由



「というわけで、拙者は今からシュータの使い魔じゃ!」



「な、なんでそんなことに?」



「シュータの血が美味すぎたせいじゃ」



「俺のせいなの!?」



 キャンディに血を吸わせてあげたら、何故か俺の使い魔になっしまった。



「シュータの血は明らかに他のやつと違うのじゃ。味も美味じゃが、なにより身体に力がみなぎるのじゃ」



 そんなエナドリみたいな感じなんだ俺の血。えっちょっと怖いんだけど。死なない? 俺。



「すーくん、俺の血って美味いの?」



 ダメもとで鑑定魔道具のすーくんに聞いてみる。



 (魔素吸収スキルノ効果デス)



「魔素吸収?」



 そういやそんなスキル持ってたわ。なんだっけ、食べ物の魔素? を吸収してステータスが上がりやすくなるんだっけ。



「なに! お主、魔素吸収が使えるのか!」



「え? うんまあ。それがどうかした?」



「拙者も使えるんじゃ! お揃いじゃの~」



「あ、うん……」



 なんかめっちゃ嬉しそう。同じメモ帳使ってる~みたいな反応するじゃん。

クラスにいたわこういう女子。



「つまりシュータの血は、拙者にとっては栄養たっぷりで美味しくて、吸収効率もバツグンってことじゃ」



「そうなんだ」



 全然うれしくないけど……。



「それで、なんでキャンディが俺の使い魔になってんの?」



「それはじゃな、その……」



「うん」



「倒したいやつがおるんじゃ。そのためにお主の使い魔となり、力を増強させてもらった」



 倒したい奴ってのは置いといて……



「使い魔になったほうが強くなるの?」



「そうじゃ。なんだお主知らんかったのか」



「知らんかった」



 キャンディによると、人間が魔物を使役する契約方法として、「従魔契約」と「使い魔契約」があるという。



 従魔契約は、モンスターテイム等のスキルで魔物をテイムして戦わせる方法で、

テイムしたい魔物を倒すか、魔物より自分の方が強いと認識させる必要がある。

この場合、魔物の能力等に変化はない。



 使い魔契約は、魔物が契約対象の人間に対して好意的になり、契約しても良いと思わないとできないらしい。

使い魔となった魔物は、契約主に危害を加えることが出来ない代わりに、大幅に能力が上がる。



 さすが200才超えのヴァンパイア。魔物なのに色々詳しすぎる。



「今の拙者は、シュータの血で回復して力を取り戻したうえに、使い魔契約で以前よりも強くなったのじゃ」



「それにしても、いつの間に契約なんかしたのさ。」



 俺そんなのやった記憶ないんだけど。



「使い魔契約のやり方は種族によって変わってくるんじゃが、拙者たちの場合は、”お互いに血を飲ませ合う”じゃな」



「なんかやくざドラマみたいだね。兄弟の盃~ってやつ。あれ? でも俺キャンディの血なんて飲んで……」



「シュータが貧血で気を失ってるときにな、拙者の血をチョロッとな」



「ええ……」



 めっちゃ一方的だった。なんかそう言われると口の中が鉄っぽい味がするようなしないような。



「悪かったと思っとるんじゃけど~どうしても強くなりたかったんじゃ~」



「まあ、俺には害がなさそうだし別に良いけど。それで、強くなって倒したいやつがいるんだっけ?」



「そうじゃ」



 元々強いキャンディが、俺の使い魔になって自分を強化しないと倒せないほど強いやつか。



「拙者が倒さなければいけないのは、”グール・ヴァンパイア”という魔物を従えている魔物使い。そしてそいつを雇っている商人じゃ」



 そう言ったキャンディの瞳は、静かに怒りの炎を灯していた……

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