第32話 (意識が)ゼロの使い魔
黒保根修汰、11才。現在、死霊の館の地下室。
レア素材、ヴァンパイアの涙を手に入れた見返りに血を狙われています。
「くそぅ! さっきまでフレンドリーな感じだったのに!」
「わーっはっは! 拙者は魔物じゃぞ? 油断したなこわっぱ!」
「こわっぱってなに?」
「クソガキみたいな意味じゃ」
ジャリボーイってことね。ロケット団かコイツ。
「さあ拙者に血を飲ませるのじゃ……」
「ぐぬぬ……」
コップ1杯分くらいだったら死なないかなー……。
てか最初から俺の血が目的なら、部屋に入ったときに襲ってくればいいのに。いやよくはないけど。
「……んん?」
「なにを一人で唸っておる。はやく血を飲ませるのじゃ」
「ん~……そんなに飲みたい?」
「飲みたすぎて死にそうじゃ」
「死にそうなの?」
「こ、言葉の綾じゃ」
「じゃあ無理やり襲ってくればいいじゃん」
そう言って俺は魔撃ナックルを構える。
「う……」
死霊の館のヴァンパイアはめっちゃ強いって聞いてたから、実はキャンディに会ってからずっとビビってたんだけど、
意外と、なんかこう……
「キャンディって実はめっちゃ弱かったりする?」
「よ、よよよ弱ってないわ!」
弱ってんだ。
__ __
「だって……色々あって……ぐすっ」
「すぐ泣くじゃん」
ヴァンパイアの涙、3瓶分ほど貯まってしまった。これめっちゃレア素材なんじゃないの?
なんかもう全然ありがたみが感じられない。
「それで、色々あってしばらく血を飲んでないから弱っちゃったと」
「……うん」
キャンディによると、普段の食事に関しては人間と同じでも大丈夫だけど、
定期的に人間の生き血を飲まないとヴァンパイアとしての力が弱まり、普通の人間と変わらない状態になるという。
で、まさに今のキャンディがそんな状態だそうだ。
「お主のことはきゅーたろうから聞いていたでな。あの魔獣リフレックスを倒したと」
そんな奴には今の拙者では普通に戦ったら勝てないのじゃ……と言うと、キャンディは小さく項垂れた。
なんか、前世で母ちゃんの帰りをおなか空かせて待ってる俺みたいで可哀想になってきた。
ヴァンパイアの涙も貰いっぱなしってのも気分が良くない。
「じゃあ、ちょっとだけならいいよ」
「ぐす……へ?」
「俺の血、飲んでいいよ」
「ほ、本当か?」
「うん。あっ、血吸われたら俺もヴァンパイアになるとか無いよね?」
「それは大丈夫じゃ。そ、それじゃあほれ」
「ん、なに?」
「そこ座って、頭ちょっと傾けて」
「あ、うん」
なんかちょっと恥ずかしいんだけど……
「え、これもしかして首に牙とか刺す? めっちゃ痛いやつ?」
「大丈夫じゃ、動かさなければそんなに痛くない……と思うぞ」
絶対痛いやつじゃん。そういや夜間物理攻撃無効が……って今はまだ昼か……
「あのーやっぱやめ」
カプッ
「あいたっ」
チュウ……チュウ……
「う……いたくない……」
最初だけチクッとしたけど、その後は痛みはあまり感じない。なんかソワソワする感じ。
「ゴク。こ、これは……!」
チュウ……チュウ……
「も、もうそろそろいいんじゃない?」
チュウ……チュウ……
「あのー、キャンディさん……?」
チュウ……チュウ……
「う……なんか目が……」
目を開けてるのに、何故か視界が真っ白に……
……。
…………。
「……う」
「おー、やっと目を覚ましたか、シュータ」
「おはよう……?」
「すまんの。久々に人間の生き血を飲んだもんで夢中になってしまった」
血を吸われ過ぎたのか、どうやら貧血で失神してしまったらしい。
「キャンディ、見た目が……何も変わってないね」
今までのロリババアな見た目は血が不足して弱ってるからなのかと思ったけど、別に元気になっても変わらないらしい。
「シュータのお陰で元気100倍じゃ! それに、ふっふっふ……」
「な、なに? なんかあった?」
「まだ気づかぬか、シュータよ……拙者に血を吸われたお主はもう……」
ま、まさか……
「やっぱり俺をヴァンパイアに!?」
それとも血を吸われて眷属にされたとか……!?
「拙者と使い魔契約を結ばせたのじゃ! シュータ、拙者は”お主の使い魔”になったのじゃ!」
……。
…………。
「……俺が使役されるほうじゃなくて?」
「使役するのじゃ! 拙者を! よろしく頼むぞシュータよ」
ピロン♪
(ライトニング・ヴァンパイア、キャンディト使イ魔契約ヲ締結シマシタ)
「すーくん?」
……どういうこと?
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