第30話 死霊の館



「これが、死霊の館……」



 全然たどり着けなかったのに、きゅーたろう達と出会ってから何故か一瞬で着いてしまった。

昔テレビで見た、ヨーロッパとかの貴族のお屋敷みたいだ。

建物に何かの植物のツルとかが絡んでたり、所々ヒビが入ってたりして、なんというか呪いの館って感じだけど。



 ギィ……



「うわっ! ビックリしたな~もう……」



 入り口の扉がでかすぎて、これ一人で開けられるかなーとか思ってたらいきなり扉が開いた。

やめてよ急に。普通に怖いんだけど。



「これがお化け屋敷ってやつか」



 遊園地なんて行ったことないけど、好きでこんなとこ行く人の気持ちが分からない……。

絶対ジェットコースターのほうが楽しいと思う。

まあ、ウジウジしててもしょうがないか。中に入ろう。



「お、おじゃましまーす……」



 館の中に入った所は、広いホール? みたいな場所だった。

貴族が舞踏会とかやってそうな感じ。



 ……で、そこに何故か剣を持ったガイコツや、宙に浮くロウソク、足の無いメイド服の人達がたくさんいた。



「ニンゲン……」



「コドモ……」



「あ、おじゃましましたー」



 バタン!



「……」



 ガチャガチャ。



「…………」



 引き返そうとしたら、入り口の扉が勝手に閉まった。しかもこっちから全然開けられない。



「終わった……」



 ヴァンパイアの涙を手に入れる前に俺が泣いちゃいそうだよ。



「キィ……」



 ……。



 …………。



「あれ?」



 この人たち(?)全然襲ってこない。それどころか、ホールの端の方に下がって、通路を開けてくれている。



「ど、どういうこと?」



「キュウ」



「きゅーたろう……奥に進めってこと?」



「キュッキュウ」



 出られないんじゃ仕方ない。良く分からないけどきゅーたろうの案内で、屋敷の奥へと向かった。



 __ __



 館の1階を、きゅーたろうの案内でしばらく進む。

すると、なにもない行き止まりに到着した。



「きゅーたろう、これ道合ってる?」



 そもそもどこに行こうとしてるのかもよく分からない。

正直怖すぎてヴァンパイアどころかホールの魔物1匹倒せそうにないんだけど。



「キィ……」



 ゴゴゴゴゴ……



 突き当りの壁が横にずれて、地下への階段が出てきた。



「マジか」



「キュウ」



「ここ? 降りろって?」



 い、行きたくねえー……



「キュ~ウ」



「わ、わかったよ」



 なんできゅーたろうの指示に従ってるんだろう。考えてもしょうがないか。

グルグルになってる階段を降りていく。



 コツ、コツ……



 しばらくすると階段が終わり、子供の身長くらいしかない、小さな扉の部屋に着いた。



「キィ……」



 ガチャッ



「ん、何の音?」



「キュウ」



「あっきゅーたろう」



 きゅーたろうが頭から降りて、扉の取っ手にぶら下がる。



 ギィ……



 ゆっくりと扉が開く。

さっきの、ここの鍵の開く音だったのか。え、誰も触ってないけど……



「キュキュ」



「中に入れって? ……よし」



 扉を押して中に入る。それにしても小さい扉だなあ。俺がもうちょっと成長したら、屈まないと入れないかも。



「おじゃましまーす……お?」



 入り口のわりには、部屋の中は天井が高くて結構広い。

部屋の中には、お姫様が使ってそうなソファやベッドがあって、なんかオシャレな感じだ。



「誰もいないね。いやまあ人がいても怖いけど」



 今の不思議な状況に、ダンジョンの中にいることが一瞬頭から抜けていた。



「キィ……」



 パタパタ……



「あ、コウモリくん」



 ずっと俺のカバンにぶら下がっていたコウモリが部屋の中にあった止まり木のような所に飛んでいく。



「ここもしかして君んち?」



 シュウウウ……



「うわっ!」



 いきなりコウモリが謎の煙に包まれた。



「ふう……やはり変化中は喋れないから不便じゃな」



「……えっ?」



 煙が消えると、そこには小さな女の子が立っていた。



「しっかし、お主意外とビビリじゃのう。よくそんなんでここに来ようと思ったのじゃ」



「えっ、あれっ?」



「キュウ」



「ん? どうした同胞よ。小僧に自己紹介しろ? うむ、よかろう」



 コウモリが女の子になった? コウモリくんじゃなくてコウモリちゃんだった?

ど、どうしよう。今めっちゃ動揺してる。



 そんな俺を眺めながら、女の子が1歩こちらへ近づいてくる。



「拙者の名前はキャンディ。ヴァンパイアじゃ。ようこそ拙者の部屋へ!」



「あ、俺はシュータ。よろしく……」



 ……。



 …………。



「えっ!? ヴァンパイア!?」



「反応遅いの」



「キュウ」



 ど、どういうこと?

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