第28話 廃墓地と肝試しキッズ
「ここが死霊の館かあ」
「キュウ」
……「死霊の館」。高ランクの魔物、ヴァンパイアが住んでいるという、アンデッド族が徘徊するダンジョンである。
で、俺が今いるのは、正確には死霊の館が建っている廃墓地の入り口。
「思ったより遠かった……」
街から歩いて3時間くらいかな? 来るだけでクタクタだ。
「バスとかあればいいのに」
ここは街の元共同墓地で、今はもう使われていない。そのため乗り合いの馬車なんかも出ていなかった。
「せめて自転車でもあればなあ」
「キュウキュ」
「それで、きゅーたろうはどうして付いてきたの?」
ここへ向かう途中、魔獣の森の前を通ったときにきゅーたろうが飛んできたので、
死霊の館に行くことを伝えたら何故か一緒に付いてきた。
「キューキュキュ」
ヒュンッ
「うーむ、わからん……あっきゅーたろう!」
きゅーたろうはなんか言いながらどっかへ飛んで行った。
「謎だ……まあいっか」
とりあえず墓地の奥にある、死霊の館を目指そう。
__ __
「さ、さすがにちょっと怖いかも……」
館に続く墓地は、日が出ている時間帯であれば魔物は出現しないそうだ。
館の中に入らなければ比較的安全なため、たまに肝試しに来る子供もいるらしい。
ただ、肝試しになるくらいなのでめちゃくちゃ雰囲気がある。
崩れ落ちた墓石や、幽霊がいそうな大きな枯れ木。
あとちょいちょい何かの骨が地面からこんにちわしてるんだよね……何の骨だろうね。
「きゅーたろー、戻ってこーい……」
心細くてモモンガに助けを求めてしまった。
遊園地のお化け屋敷とかこんな感じなんだろうか。遊園地行ったことないから分かんないや。
「おい! そこのガキ!」
「うわっ! ……な、なんだ人間か」
振り向くと、少し離れた所に数人の子供たちがいた。
年は俺よりちょっと上……前に決闘(?)したデミグラ君くらい。
「お前、下層区のヤツだな! 庶民だな!」
「そうだけど」
なんか偉そうなのきたな。上層区……貴族の子なのかな。
服装はゴテゴテしてなくてデミグラ君よりセンス良い感じだけど。
「俺たちはこれからここで肝試しをやるんだ! 庶民は帰りな!」
「服がボロボロすぎてゾンビかと思ったぜ!」
「魔物と間違われて倒されたくなかったら帰りな!」
「ええ……」
め、めんどくさ……。デミグラ君といい、上層区の人ってみんなこんな感じなのか?
「俺、これから死霊の館に行くんでこの墓地には用は無いよ」
「館に入るのか!? お前みたいな庶民のガキが!?」
「オイオイ、死ぬぜお前!」
「そんなことしたらママに怒られちゃうだろ!」
「もしかしてヴァンパイアのイケニエってやつじゃねえか?」
肝試し貴族キッズたちがガヤガヤしだしたので無視して館のほうへ歩き出す。
でもなんか怖さとかは吹っ飛んだかも。ありがとう肝試し貴族キッズたち。
「……ん?」
ヴァンパイアのイケニエ……生贄?
「生贄ってどういうこと?」
「オイオイ! 知らないで来てたのかよ! これはケッサクだぜェ! さっさと帰ったほうがいいんじゃねえかァ!?」
「お前はヴァンパイアに食われるんだよ!」
いやまあ俺は勝手に来たから生贄じゃないんだけど。
「ヴァンパイアに生贄するとなにか良いことがあるの?」
「庶民はなんにも知らねえんだな」
「しょうがねえから食われる前に教えてやるぜ!」
「ヴァンパイアに生贄すると、代わりに”涙”をくれるんだよ」
「涙……ヴァンパイアの?」
「そうだぜ。まあソイツを使ってどうするかは庶民には関係ねえがな!」
「食われたくなかったら尻尾巻いて国に帰るんだなァ!」
そう言うと世紀末キッズたちは肝試しに戻っていった。
「生贄……ヴァンパイアの……涙……」
……代わりにトマトジュースとか渡したら貰えないかな?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます