第27話 ヴァンパイアの涙を手に入れろ!
教会の引きこもりシスター、シルクがお金を貯めてどうしても欲しい高級魔道具、「日除けの香水」。
この香水を付けると、一定時間日光から身を守ることが出来るらしい。
影暮らしという、日光が肌にとって有毒になるシルクが自由に外出するためには、なんとしても手に入れて欲しいアイテムだ。
そこで俺は、香水が高価になっている理由の1つである、原料のレア素材を探して採ってこようと思ったのだが……。
なんと、日除けの香水に必要な主成分は「ヴァンパイアの涙」らしい。
「それって、そういう名前がついてるだけのどっかの湧き水とかじゃなくて?」
「名前の通り、ヴァンパイアの涙そのものだよ~」
しくしくと、リネンさんが泣きまねをする。そういうのはいいかな……。
「ヴァンパイアの涙って……シルクが泣けば」
「だからシルクはヴァンパイアじゃないってば! 本物のヴァンパイア! 吸血鬼!」
「吸血鬼! 本物の!」
すごい! 異世界ファンタジーっぽい!
「ヴァンパイアね~めっちゃ強いらしいよ~」
「血を吸われた人間はヴァンパイアの奴隷になっちゃうのよ! だからシュータ、ヴァンパイア狩りなんて無茶なことはやめなさい」
__ __
「って感じで、ヴァンパイア狩りにいくのはめっちゃ反対された」
「相変わらずシュータはとんでもないのと戦いたがるな」
教会での話を、秘密の部分とかを隠しつつ串焼き屋のおっちゃんに話した。
「もぐもぐ……リフレックスの串焼き、まあまあ美味しいね」
「まあお前さんが自分で獲ってきたやつだしな」
俺が倒したリフレックスは、すーくんに使った眼球以外はすべて商業ギルドで買い取られ、
部位ごとに解体されて競売にかけられた。
ほとんど手に入らない魔物なので、おっちゃんはリフレックスの肉を試しに少し仕入れ、串焼きにしてみたらしい。
「シュータが食えるなら、残りも全部やるよ」
「やったー! でもいいの? せっかくのリフレックスの肉なのに」
「実を言うとな、それクソ不味くて売りもんにならねえんだわ」
「……そう、かな?」
もぐもぐ。うーん、普通に美味しい気がするけど……。
「ちょっとだけ、野生の匂いがするかな? いつものトンホーンとか、バックスロックの方が美味しいかも」
見た目でいうと、トンホーンが豚、バックスロックが鹿、そしてリフレックスはオオカミ。
オオカミって大きい犬みたいなもんだし、そう考えるとまあ、あんまし美味しくないのも納得かも。
まあ俺は不味い食い物には味覚補整が発動するから、なんでもそれなりに美味しいんだけど。
「シュータはなんでも美味いっていうからな。初めて会ったときにくれてやったトンホーンの骨も食ったんだろ?」
「ダシが染みてて美味しかったよ」
「さすが悪食のブラックボーンだぜ」
デミグラ君と決闘したときから悪食のブラックボーンとかいうクソださ通り名が定着してしまった。悲しい。
「で、森の魔獣を倒したと思ったら、次は”死霊の館”の吸血鬼ってわけか。さすがに吸血鬼の肉はなあ」
「さすがに食べないよ!……って、死霊の館?」
「ヴァンパイアが住んでるって噂のダンジョンだぜ。なんだ知らなかったのか?」
知らなかった。死霊の館か……なんかお化け屋敷みたい。
「それってどこにあるの?」
「魔獣の森の入り口から、西に向かってしばらく歩くと、今は使われてない共同墓地がある。その奥にある屋敷が……って」
「なるほどなるほど」
「シュータ、お前まさか、本当にヴァンパイアを倒しに行くわけじゃねえだろうな……?」
「あっはっは! まっさか~!」
「そうだよな! ハッハッハ!」
「ちょっと様子見てくるだけだよ」
「って行くんかい!」
だって本物のヴァンパイア見てみたいし。
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