第23話 貴族ボーイ VS スラムのガキ



 前回までのあらすじ。



 森でリフレックスを討伐したときについでに助けた貴族の子供、

デミグラ君から勝負を挑まれた。



 俺がリフレックスを横取りしたということらしい。なんだかなー。



「おい庶民、決闘だ! はやく剣を抜け!」



「俺剣なんて持ってないよ。腕相撲にしない?」



「良いわけあるか!」



 力比べはダメらしい。



「貴族のお坊っちゃん様よお、このリフレックスには下顎の打撃痕以外には傷が見当たらないぜ」



 打撃の痕は俺のナックルによるものだ。魔法剣で付いた傷跡はどこにもないから、

リフレックスを倒したのはデミグラ君じゃないだろ? とギルドのおっちゃんが説得する。



「うるさい! 庶民の言うことが信じられるか! 僕と勝負しろー!」



「ダメだ、話が通じねえなこりゃ」



「あのーすいません、お手数おかけしますが、坊ちゃんと勝負お願いできませんか?」



 お付きの人からコソッと耳打ちされる。



「……勝っちゃったら俺、あの子のお父さんとかに殺されない?」



「いえ、ご当主様も分かっていると思いますので……」



 あ、そういう感じなんだ。



「おい、なにコソコソやってるんだ!」



「なんでもないよー。勝負だけどさ、俺の武器これなんだけど良い?」



 魔撃ナックルを付けた手をデミグラ君に見せる。



「なんだって良いさ! 僕の魔法剣でぶっ倒してやる!」



 __ __



 ギルドの近くにある広場へ移動して、デミグラ君と戦うことになった。



「なんか不良マンガのバトルシーンみたい」



 夜だからか、無駄に明かりでライトアップされてるし。

更にどこで聞きつけたのか、決闘を見に来た街の人たちが辺りを囲んでいる。



「貴族様の勝利に1万エル!」



「俺はシュータに3万エル賭けるぜ!」



「あ、オヤジ! 串焼き1本と火酒!」



「まいど!」



 なんか酒とか食い物とか売り歩いてる人もいるし……。



「って、串焼き屋のおっちゃんかよ!」



「おうシュータ! 応援してるぜ~!」



 商魂たくましいなおっちゃん。



「えーそれでは、決闘を始めます」



 審判はデミグラ君のお付きの人がやってくれる。



「武器の破壊、相手の降参、失神によって決着とします」



 せっかくリッツさんに開発してもらったナックルを壊されるのは嫌だなあ。素手でやろっかな。



「それでは選手の入場で~す! 赤コ~ナ~! 漆黒の悪食! シュータ・ブラックボーン!!」



「ええ……」



 漆黒の悪食ってなんだよ。

何故かシスターのお姉さんこと、リネンさんが実況アナウンスをやり出した。何やってんだ聖職者。



「うおおおおお!」



「魔物喰らいのブラックボーンだ!!」



「激辛毒キノコを常食しているっていう、あの漆黒の悪食!?」



 ……俺そんな風に思われてたんだ。ってか魔物は討伐して売ってるだけで、

そんな倒したそばからむさぼり食うみたいなことしてないよ。



「続いて青コ~ナ~! 王国軍直属、魔物討伐隊隊長! ……の息子! デミグラ・ハンバーギ!!」



「ふん、なにが漆黒の悪食だ。僕が討伐してくれる!」



「よっ貴族様!」



「税金減らしてくれー!」



「南の街道に出たドラゴンの討伐まだっすか!」



 めっちゃ国への不満みたいなヤジ飛ばされてる。



「お二人とも、構えてください」



 審判が二人を確認し、1歩後ろへ下がる。



「さあ、正々堂々勝負だ! 庶民!」



「えーと、対戦よろしくお願いします」



 ……。



 …………。



「始めっ!!」



「うおおおおお!!」



 デミグラ君が魔法剣とやらを振りかぶって突っ込んでくる。

正直トンホーンよりも全然遅い。



「くらえっ!!」



「おっと」



 上段から振り下ろされた剣撃をナックルでガードする。



 ガキンッ!



「あ」



 デミグラ君の剣がナックルに当たる直前、何かにはじかれるような感じでどっかに飛んでった。



「……え?」



「あ、えーと、俺のターン! ナックルぱーんち!」



 ボゴォッ!!



「ヴェァ……ッ!?」



 さすがにアッパーカットは危険かなーと思って、軽くお腹を殴ったらデミグラ君が吹っ飛んでいってしまった。



「ォ……」



 ドサッ



 ……。



 …………。



「……え? あっ、デ、デミグラ様、戦闘不能。勝者、シュータ・ブラックボーン!」



「あ、俺の勝ち? やったぜ~」



「うおおおおお!!」



「すげえええええ!!」



「い、今何やったんだ?」



「僕の1万エルがあああああ!!」



「俺の勝ちだああああシュータよくやったぜえええ!!」



 観客の盛り上がりがすごい。てか最後のギャンブル勝ったやつ、ちょっと分け前くれないかな。



「シュータ・ブラックボーンさん、勝利したお気持ちは?」



「え? いや、あのー、それより救急車とか呼んだ方が……」



 デミグラ君が倒れたままピクリともしない。



「ああ、あれは私たちが何とかしますので大丈夫です。ご迷惑おかけしました」



 そう言うとお付きの2人はデミグラ君を担いでこっそりと去っていった。



「いやーシュータ、おめえ随分強くなったなあ!」



「スラム街の希望の星だぜ!」



 嫌な星だなあ……。



 結局、俺の勝利に賭けて儲かったやつがみんなに酒を奢り出して、広場は夜通し宴会場になりました。



 めでたしめでたし(?)

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