第22話 魔獣の買取と横暴貴族ボーイ
「おっちゃんこんばんわ~! リフレックスの解体と買い取りおねがいします!」
「おうシュータ! こんな夜遅くに子供が……って、なに!? リフレックス!?」
討伐したリフレックスと愉快な仲間たちを背負ってなんとか街へ帰還。
そのまま商業ギルドの買取りカウンターにやってきた。
「な、なんだこの魔物!?」
「コイツ、森の魔獣じゃねえか? 初めて見たぜえ!」
リフレックスが珍しいのか、周りにいた人たちが遠巻きに見物している。
「マジで倒したんか! やるじゃねえかシュータ!」
「えっへへ~」
おっちゃんにガシガシと頭を撫でられる。
「リフレックスの眼球以外は買取りでお願い。眼球は解体したら俺にちょーだい」
「おう、任せな! ……それはそうと、一緒に乗っかってる奴らはなんだ?」
おっちゃんはリフレックスの上に乗せてきた3人組を指さす。
「リフレックスに襲われて倒れてたから連れてきた」
「人助けもしたのか。さすがブラックボーン家の子供だ」
「やめてよそれ。俺しかいないじゃん」
まあ前世の黒保根家も母ちゃん以外知らないけど。
俺にじいちゃんとかばあちゃんっていたのかな。
__ __
倒れていた3人を街の医者に引き渡し、俺はリフレックスの買取りを待った。
「シュータ、査定が終わったぞ」
「なんか時間かかったね」
「リフレックスなんて滅多に持ち込まれないからな、大変だったぜ」
「おつかれ」
正直、俺はリフレックスの眼球、「魔界の鏡」が手に入ればあとは何でもいい。
「それで買取り価格なんだが、解体費用を引いて、諸々で80万エルでどうだ?」
「そんな貰えんの!? やったー! それでいいよ!」
「軽いなおい。ちなみに魔界の鏡も売ってくれれば、200万エルになるぜ」
「あーそれは無理」
魔界の鏡だけで120万。他の部位全部合わせた価格よりも高いのはさすがレア素材。
「他の部位も結構高く売れるんだね」
「リフレックスの毛皮は物理ダメージを軽減するからな。装備服の素材として人気があるんだ」
「そうなんだ」
売らないで服にすれば良かったかも。まあいっか。
「それじゃ、その査定額で買い取りお願いしまー」
バァン!
「ちょっと待てい!」
「す?」
扉を乱暴に開けた音の方へ顔を向けると、商業ギルドの入り口に俺が助けた3人組が立っていた。
「あ、目覚めたんだ」
「その節はどうも……」
「君が助けてくれたんだってね。本当にありがとう」
両サイドの付き人っぽい人がお礼を言ってくれる。で、真ん中で仁王立ちしてる少年は……
「魔獣は僕が倒したんだぞ!」
……。
…………。
「え? なんて?」
「だから! 僕が倒したんだ!」
いかんいかん、なんかラブコメ漫画の主人公みたいになっちゃった。
「でも君、リフレックスに剣を弾き飛ばされて気絶してたじゃん」
「あ、相打ちだっ! 相打ちで倒したところを、お前が倒したことにして街まで運んできたんだ!」
「ええ……」
そんな無茶苦茶な。
「坊っちゃん、さすがにそれは……」
「そうです。あまりに荒唐無稽です」
お付きの人もたしなめてるじゃん。
「おいおい少年、シュータはお前さんを助けて街まで背負ってきたんだぜ。感謝こそすれ、その言い分は通らねえだろ」
「うるさい! 庶民風情が! 僕はハンバーギ家の人間だぞ!」
「ハンバーグ?」
たしかにちょっとビッグ〇ーイのマスコットに似てるかも。
「ハンバーグじゃない! ハンバーギだ!」
「はあ。……みなさん、この方はデミグラ・ハンバーギ。王国の魔物討伐部隊を束ねる名家、ハンバーギ家のご子息です」
「めっちゃハンバーグじゃん!」
「グじゃないギだ! なんだハンバーグって!」
この世界にはハンバーグがないらしい。残念。
「僕はパパに貰ったこの魔法剣で魔獣を倒したんだ!」
「いやそれ効いてなかったと思うけど」
攻撃はじかれてたし。装備に必要なマジックパワー足りてないんじゃないかな?
「あっそうだ、おっちゃん、リフレックスってまだ解体してないよね?」
「ん? ああ、まだシュータが持ってきたままの状態で保管してるぜ」
「えーと、デミグラス君」
「デミグラだ! あと様を付けろ庶民!」
貴族めんどくさいなもう。
「デミグラ様、リフレックスには物理攻撃と魔法が効かないって知ってる?」
「当たり前だ、だからこの魔法剣で倒したんだ!」
「じゃあそれ、もう一回見せてください」
「……え?」
「倒したリフレックスを連れてくるから、攻撃してみてください」
リフレックスは解体するのにも通常の武器では刃が通らないから、解体用の魔法剣で行うらしい。
「お、おいシュータ、せっかくきれいな皮のリフレックスなのに傷がついたら……」
「そしたら買取り価格下げてもらっていいよ」
「シュータがそう言うなら良いけどよ……」
リフレックスを乗せた台車がやってくる。運ぶのに4人がかりだ。やっぱ重いよねソイツ……。
「さあデミグラ様、攻撃がちゃんと通るところを見せてください」
「ぐ、ぐぬぬ……」
ハンバーグボーイがうなだれている。自分でも攻撃が通らないことが分かっているんだろう。
「坊っちゃん、諦めましょう」
「助けてもらった少年にお礼言って、帰りますよ」
「ぐぬぬ~!!」
シャキンッと、デミグラ君はおもむろに魔法剣を構えた。俺の方へ向けて。
「この詐欺庶民め! ゆるさないぞ! 僕と勝負しろ!」
……。
…………。
「ええ……」
なんでだよ。
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